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私、美猫ですけど。

  私は人が嫌いよ。だって飼い主のじいさんが死んだ時、家を追い出されたの。雨に濡れ風に打たれて、大榎になんとか逃げ込んだわ。

虫や蛇を食べてやっとのことで生きてきた。辛くなかったといえば嘘になるわ。そして、大榎を根城にして好き放題に生きてきたの。

人のよいばあさんにご飯をねだり、ファン(美猫なので多くの雄猫に言い寄られている)が虫や蛇など色々と持ってくるものを食べるの。寝たいときに寝てフリー、フリーだったの。

いつものように、散歩をして口笛ルンルン気分で、取り巻きを連れてご飯を食べに行った時だった。ばあさんの家は魚屋の前。炭火で鯖を焼いて、美味そうな匂いをさせている。その匂いを嗅ぎながらドライフードをガーッと貪るように食べるのよ。夢は一度でいいからあの美味そうな鯖を食べること、う〜食べてみたい。

その時視線を感じたの。誰か知らないおばさんが私を見てスマホをかざしてきた。まあ、写真だけなら許してあげる。そう思っていた。写真だけなら。

ある日、あの時のおばさんが大榎にやって来た。カゴを後ろ手に持っている。笑顔で「可愛いねこちゃん、おいで。」猫なで声でやってくる。
猫は私よ、お前は猫なで声などするな。でも、そのおばさん、いい匂いのものを私の前におく。これは夢にまで見たあの焼き鯖じゃないの。ああ、どうしよう、食べようか、どうしようか。いやいや、だめだめ、食べてはいけない。でも〜誘惑に負けて食べたとたん、首根っこを捕まれてカゴに押し込まれてしまった。ああ〜、やられた。

   それから一年がたった。今、私はそのおばさんの膝の上にいる。柔らかくて暖かくて、ついごろにゃんとしてしまう。喉までゴロゴロ鳴らしてね。

今は室内で、三食昼寝、午前と午後のおやつに夜食付き。

しかし、時々は、おばさんの顔を引掻いたり、噛んだりしてどちらが優位か、基本、人が嫌いなので解らせている。

にゃぁ〜〜ん!にゃぁ〜〜ん!     


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