【フリーテキスト】アマリリスとおはなやさん 序文
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「君の中にある感情に名前をつけよう。」
それは突然のことだった。
私の中でモヤモヤとした気持ちが溢れて、苦しさで息ができなくなりそうになったとき、目の前に一輪の花が差し出された。
声の主は優しげなおじいさん。
「これを手にすれば、君の中のモヤモヤは、きっと晴れる」
訳が分からなかった。
私の心の中が読まれてるらしいことも、花を手にすればモヤモヤが晴れることも、どれも意味がわからない。
「…今の君は混乱、だね。そのまま花を持っても意味がない。またモヤモヤしたときにうちの店に来るといい。」
そう言っておじいさんは私に一枚の紙を手渡し、立ち去った。
紙には、花に愛すると書いて「花愛堂」という文字と簡単な地図が書かれていた。
「…怪しすぎだし。」
私は紙切れを適当に折りたたんで鞄に押し込んだ。