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【谷川俊太郎さんの絵本】ともだち

今週、1年生の読み聞かせがあり、谷川俊太郎さんの絵本を読みたいなと思ったのですが、翻訳されたものを含めると沢山あり過ぎて悩ましい。
谷川さんが翻訳されたレオ=レオニさんの絵本と迷いましたが、それは『スイミー』を習う二年生でもいいかなと思い、和田誠さんが絵を描いた『ともだち』に決めました。

”ともだちって○○なひと。”
”ともだちなら○○しよう。”
”○○されたらどんなきもちかな。”
など、小学生が自分のともだちのことを頭に思いうかべながら、色々なことを考えさせてくれる内容になっています。わかりやすいことばと、和田誠さんのイラストがマッチしていて、ほのぼのした気持ちになります。
身近にいるともだちの気もちを考えるきっかけになる、1年生にぴったりの絵本、なのですが、
私がこの絵本が好きなのは、それだけで終わらないところなんです。

後半の10ページは和田さんのイラストがなくなり、突然、モノクロとセピア色の外国の子どもの写真に変わります。文のテイストはそれほど変わらず、全部ひらがなで書かれているのですが、身近にいるともだちだけではなく、世界にいる様々な境遇の子どもたち(ともだち)のことにも目を向けてみよう、というメッセージ性を感じます。

子ども向けの絵本だな、と思いながら読み進めていた高学年のお子さんや、大人も後半部で、ハッとさせられると思います。大人になるにつれて世界は広がっていくものの、目の前の生活に一生懸命になるあまり、視野が狭くなってしまうこともあります。
目の前の人たち(ともだち)の気持ちを想像することはもちろん大事ですが、
ときには視野を広げて、会ったことのない人々や自分と全く境遇の違う人々のことにも、思いを巡らせることも大事なこと。
低学年だけでなく6年生の読み聞かせにもおすすめの作品です。

≪前略≫
僕の場合は、小さいときから戦争が始まっていて、小学生から中学生にかけて東京が空襲されて焼け野原になったりしているのを目の当たりにしてきたんですよ。戦争のリアリティというのを割と小さい頃から知っていたんですね。だから、いま、ウクライナとロシアが戦争しているということも、当たり前のことのようにして見ちゃうんです。
≪後略≫

「生きてるってどういうこと? ことば:谷川俊太郎 絵:宮内ヨシオ」あとがきより

戦争を体験されている谷川さんの作品は、直接的に書かれていなくても、生きること死ぬこと、幸せと絶望、戦争や貧困に苦しむ世界の人のことなどをふと考えさせられます。平和な日常は当たり前のことではないんだよと絵本を通して教えて下さっているように思います。

これから谷川さんの新作が読めなくなってしまうのは淋しいことですが、図書館や書店では今、谷川俊太郎さんの特設コーナーができているので、詩集など絵本以外も含め、未読の作品も手にとってみようと思います。

以前、紹介した「いちねんせい」も谷川さん×和田さんの作品で、一年生におすすめです。↓





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