【心がじんわり温まる絵本】Lifeライフ
とある町にある『ライフ』という名のお店を舞台にした物語です。
お店といっても、お金は必要ありません。『ライフ』を訪れたお客さんは、必要なものや気に入ったものがあれば持って帰り、かわりに自分が使わなくなったものや誰かに使ってもらいたいものをおいていくというシステムになっています。
最初に登場するのは、おじいさんを亡くしたおばあさんです。
おばあさんは花の種を置いていき、代わりに写真たてを見つけて持って帰りました。おじいさんの写真を飾るのでしょう。
その後も、様々なお客さんが『ライフ』を訪れ、使わなくなったものを棚に並べ、気に入ったものを持っていきます。おばあさんの花の種も多くの人が持って帰りました。
ただの物々交換といえば、それまでですが、このお店のシステムでいいなと思うのは、どの人たちも棚に並べる物に必ずメッセージカードを添えているところ。書かれているメッセージがとても素敵なんです。
絵本を置きに来たある男の子は『すごくたのしくて、おぼえちゃった。ぼくもたいせつによんだよ』というメッセージを添えました。多少、古くなったものでも、大切に思って使っていたことが分かると、次に使う人も大事に使いたくなりますよね。
『ライフ』では直接お客さんは顔を合わせることはないのですが、物を通して人から人に思いが伝わっていくのがわかり、とてもあたたかい気持ちになります。
私は物を捨てるのがとても苦手で、壊れて明らかに直せないもの、もう使えないものは全く未練なく捨てられますが、衣類やまだ使えるものはリメイクや他に使ってくれる人がいないかな…と考えて、捨てられません。(結局溜まる)
リサイクルショップに持っていたこともあるのですが、機械的に値がつけられる感じが苦手で、結局、衣類の場合は資源ごみの日に捨てたり、小さく切って拭き掃除に使ったり、ときどきメルカリで売ったりしています。
子ども服はお友だちのお子さんにあげたりもしていますが、本当は欲しくないのに無理してもらってくれているのかな、とかいうのも気になったりもします。気を遣う人だと、お返しに何かくれたりするので、逆に申し訳なく思ったりもして。『ライフ』のようなお店が近くにあればなぁ。
使われなくなったものが、今それを必要な人のところへ行く、ただそれだけなんですが、そういったことがうまく出来ていれば、ゴミも減るだろうし、環境負荷もかけずにすむのにな。
最初に登場したおばあさんは、季節が変わり春になっても、まだおじいさんを亡くした悲しみからは立ち直ってはいませんでした。でも、再び『ライフ』を訪れることで、心に変化が起きます。結末は、ぜひ読んでみてください。
ほっこりして、そしてちょっとエコについても考えさせれる絵本です。
松本春野さんの温かみのある絵も素敵です。