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誕生日祝のために鶴橋へ。誰の？我が家に3月生まれはいないが、4年前から毎年、せっせと彼のためにケーキを焼く健気な長女だ。 彼とはBTSのメンバーのひとり、ユンギ a.k.a SUGA。ずっとずっと、彼女は彼のとりこなのだ。 ピンクに色付いた今年のケーキは、受験も終わり、時間ならたっぷりある長女がスポンジから焼いて作ったものだ。 仕事から帰ると、キッチンはきれいに片付いていて、甘い香りだけが残っていた。しかも、朝回しっぱなしだった洗濯機の中の洗濯物まで干してくれていた。 やは
部屋に帰ると、彼女が繭になっていた。玄関で「ただいま」と声をかけても返事がない。嫌な予感に胸騒ぎがする。扉をひらく。寝室の片隅に、白く美しい繭があった。日に照らされたそれの白い糸は、サラサラと輝いていた。ぼくの目から、涙がこぼれた。それが彼女が繭になってしまったからなのか、それとも、その繭があまりに美しかったからなのか、ぼくはいまだにどちらなのかわからずにいる。 実際のところ、ぼくにはある程度までの覚悟ができていた。その数日前、彼女自身の口から、こう言われていたからだ。
