ミラログ

児童書商業出版一冊目の人。酒とミルクティーと各種甘味と各種活字を糧に仕事と育児に励み、子ども時代の気難しかった自分に宛てて児童小説を書いています。持続可能な社会を作る取り組みは現役社会人の義務。

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最近の記事

申し訳

そんなはずがないの みな心をいためている ただそう見えないだけ きっと わたしも 明日もいつも通りに家事をする 洗濯 掃除 家族のご飯を作って片付けて オンラインで生協の食材を注文 その他細々としたこと そういうの フルリモートワークの始業前と終業後 合間にもこっそり たぶんね ライスワークでは学習教材をつくっている 子どもの気持ちや行動を想像する ここはどんなふうに解こうとするか これ以外の考え方は答えはないか 解答を書くのはどの大きさの文字

    • 「人生初」はきっとまだまだある。

      突然ですが、あなたは生け簀(す)に落ちたことがありますか? わたしはあります。まあ、あるから訊いたのですけれど、あります。 昨年のことです。  大人だし、っていうか齢四十もとっくに過ぎて、一児の親でもあり、普段はそれなりに常識あるっぽく取り繕って生きていましたがそういう素行は何ら斟酌されることなく容赦なくどぼんと落ちました。4月の初めの晴れた日でした。人生初です。  千葉の海近くにある釣り堀でのことです。  釣り自体縁遠い人生を送ってきたので私はそれまで知らなかったの

      • これでも止まらないんだ、という驚き。今、書き残しておこう。

        その昔は、やはりわたしは少数派なのか……とイジケていた。 オリパラの話。 お祭りがあまり好きじゃないというひねくれた性格の上、 不妊治療 妊娠 出産 新生児のワンオペ育児 ↓ その間無収入だったことから夫婦間のパワーバランスが崩れてのモラハラ被害 からの、 あわや乳飲み子を抱えての離婚 と社会の弱者まっしぐらの道を突き進んでいた数年前のわたしには、 『被災地復興を後回しにしてまでやることなのか』 という疑問の声に共感しかなかったし、 『ボランティア

        • いつかのおよんじ

          「カーッ!! 餃子に紹興酒! 行きてぇナァ~!」   16時。オフィスの自席で、Y部長はしばしばそんな風にぶち上げる。 私は秘かに、部長を「よんじい」と名付けている。16時、つまり午後4時に雄叫びを上げるオジさん? おジイさん? そんなニュアンス。 雄叫びへの課内の反応は、日により人によりだ。 「いいッスね」「ビールならお供します」 「もしかしておごり?」 と合いの手が入ることも、みな自分のことに忙しくて目さえ上げない日も。 〈よんじい〉の本気度もやっぱり、日

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        • 童話/児童小説(たぶん)
          3本

        記事

          恐怖のカボチャ爆弾

          八月ですね。葉月。 なのに、このハロウィン感満載のタイトル。何故に?  ……いえ、理由は簡単。至極シンプル。 公園に行った家族1と家族2が持ち帰ってきたからですよ(キレ)。 丸ごと一個の南瓜を……! ***** 別にね、傍で聞いたら(読んだら)不思議はないでしょう。南瓜、夏野菜だし。爆弾って何だよ、大げさなって。 しかし背景はあるのです。それなりにきっちりと。 理由その1:そもそものオーダーは「ランチを買ってきて」だった。ランチを中食(って言葉とんと聞かなくな

          恐怖のカボチャ爆弾

          フレックス登校

           四時間目は、理科だ。 「起立(きりつ)」 「礼」  日直さんの号令に合わせて、みんなで背すじをのばし、しっかりとおじぎをする。  今日の日直は、いつもはりきり屋さんのみのりちゃん。 「リラックス!」  よく通る声で言って、みのりちゃんは、ゆかに腹ばいになった。  ぼくらも、それぞれリラックスできるしせいをとる。  美紅(みく)ちゃんは、ソファの上であぐら。  サッカー少年の冬弥(とうや)くんは、はしっこのイスにすわって、コロコロ、コロコロ、足でボールをこね

          フレックス登校

          潔癖症がスタンダードになった日。

          ・帰ったらまず手を洗うし服も全て着替える。外から持ち帰った物やバッグは所定のスペース以外には置かない。 ・つり革や手すりには極力つかまらない。もしつかまったら、手を拭くか洗うまでは自分の持ち物に触るのを控える。 ・どんなに重い荷物でも決して床に置かない。映画館でもバッグは必ず膝の上。  新型コロナ対策……ではないです。上記は、中学生からこちら数十年運用しているマイルール。  の一部。  勝ち誇っているのではないです。ただ、感慨深い……。  そもそも、私が「潔癖症」

          潔癖症がスタンダードになった日。

          摂食障害だった。

           普段、二十代前半の同僚と仕事をしている。 (今はお互い自宅でリモートワーク中)  仕事の上でも優秀で折り目正しく、安定していて、年上(私だ)の、時に(いつも?)くだらない世間話や蘊蓄にも、過ぎない相槌を打ち、自分からも適度に個性的で面白い話題をふることができる……  そんな素敵でソツのない優秀な(二度言った)彼女を見ていると、ふと自分が同年齢だったころのことを思い出してしまう。いや嘘だ。ふと、どころではない。  度々、いつも、しょっちゅう思い出しては、「あの子、あの

          摂食障害だった。

          児童小説(短編) おとなの味

           ぶあつい、重たいドアを、ユヅキはからだごと、ぶつかるみたいにしておし開けた。頭の上で、カラン、コロンと、そうぞうしい音が鳴った。  カウベルっていうのだ。  前に来た時、おじいちゃんから教わった。 「あのぅ。すみません……」  ユヅキはそう言ったきり、その場でもじもじとした。中に入ったはいいが、そこからどうしていいのかがわからない。 「あら。松本さんのところの」  よかった。カウンターの中にいたお店の人が、ユヅキに気づいてくれた。 「こんにちは。あの、うちのおじいちゃん来

          児童小説(短編) おとなの味

          童話 セイと森のごちそう

          1.夜のおでかけ   だいぶさむくなってきた、ある土よう日のことでした。  六さいの男の子、セイのパパとママは、その日、朝からそわそわしていました。  パパは、こうえんでたっぷりとあそんでくれました。いつもは、すぐに「もう帰ろうか」っていうのに。  ママの作ったお昼ごはんは、おいなりさんに、グラタン、トマトサラダでした。つまり、セイのすきなものばかり。  そしてまだお日さまがかくれないうち、いそいそと、でかけるしたくをはじめたのです。 「もうすぐ暗くなるのに、どこかに行

          童話 セイと森のごちそう

          ある、ミライ⑤

          5.チェリという子 向かいのビルに反射した夕日が、うすいカーテンごしに、部屋を染め上げている。  燃え出しそうでいて、それでいてとろりとしたオレンジ色――赤。  その水底に沈んだわたしは、溶けていきそうになる身体をどうにかなだめ、引き留めているところだ。  しなやかなうで。脚。表情豊かな指先。引きしまったおなか。おしり、太もも。すっとのびた背すじ、首。――伸ばして、折りたたんで、開げて。しぼって、反らして。  ていねいに、ひとつひとつを整えていく。  どこも、どれも、思いえが

          ある、ミライ⑤

          ある、ミライ④

          4.智恵理 13歳 成長したわたしは、秘密のしごとを持っていた。  やっているうち、ずいぶんと手馴れてきた。自分なりのルールもある。基本的に無言。何も考えない。機械になったつもりで、集中する。びっしりと彫りつけられたこのクニの文字――漢字、ひらがな、カタカナ。そこから、 さがす。  終わった後はいつも、声の出しかたを思い出すところから始めないといけなかった。  今日は、少しちがった。指で文字をたどりながら、自分が歌を口ずさんでいるのに気づいた。  音楽の時間に習ったばかりの

          ある、ミライ④

          ある、ミライ③

          3.智恵理 十二才 このくにの人たちは、ほんとうにサクラが好きだ。  その季節がすぎると、公園からは、とたんに人がいなくなる。  この場合の〈人〉というのは、おとなってこと。子どもにとって、公園は公園。遊ぶところ。サクラなんて関係ない。  ぎょうぎよく花だんにならぶ色とりどりの花たちも、リアル色鬼のときくらいしか目に入らない。  この公園で〈すごくむかし〉に、たくさんの人が死んだのだという。  それを知った時は、おどろいた。そんな場所を公園にするなんて、どうかしている。

          ある、ミライ③

          ある、ミライ②

          2.智恵理 十才 戸賀 智恵理っていいます。  とくいなことと、好きなことは、バレエです。クラシックじゃなくて、モダンバレエです。三才から習っています。  家族からはチェリってよばれているので、みなさんもそうよんでくれたらうれしいです。名前はチェリだけど、フルーツで一番好きなのは、サクランボじゃなくて、イチゴです。  学校に通うと決まったとき。どうせなら自己紹介はそんなふうに、かわいらしく、かつ親しみやすくしようって決めた。美鈴ちゃんと練習もした。 けれど、むだになった。あ

          ある、ミライ②

          ある、ミライ①           (小説) どこかにある(かもしれない)国で、ひとり生きる女の子のお話。

          1.智恵理 九才 同じ色をした髪。目。  目、目、め、め。  目。  ここにあるぜんぶの目が、わたしを見ている。  クラクラする。 「えっ? 何? もう一回言って?」  円くならんだイスの、わたしから見て、やや右よりの席。いかにもはしっこそうな男子がそう言って、わざとらしく、耳に手を当てるジェスチャをした。 「あのっ、戸賀、ち……」  ここは、九才の子だけのクラス。  わたしがいるのは、ドアに一番近い席。もっと言うと、先生のとなり。あせって大きな声を出そうとしたら、裏返った

          ある、ミライ①           (小説) どこかにある(かもしれない)国で、ひとり生きる女の子のお話。

          酒好きというキャラ立てで渡れた時代 ①

           当方、滅法酒好きなアラフォー女子です。  ワイン、ウィスキー、ラム――何でも飲みますが、基本、日本酒が好きです。好みの銘柄はあれど、大抵の日本酒はうまいと言って飲みます。要するにあれです、フィーリングと飲み方の問題だと思うのです。あ、でも参考までに今日現在ウチの冷蔵庫に滞在いただいている日本酒をご紹介してよいですか。「みむろ杉」(注1)の純米大吟醸と、「風の森」(注2)の……何だったろう。ラベルの色調は白と銀だったように思うのだけど? おや、偶然どちらも奈良の蔵元ですね。

          酒好きというキャラ立てで渡れた時代 ①