極彩色に消えてくれ(ふくだりょうこ)
【カテゴリ】小説
【文字数】約5800字
【あらすじ】
ひとはイーシュと呼ばれるもの、イッシャーと呼ばれるものに別れて生活をしていた。一生イーシュに出会うこともなくイッシャーもいる中、ミレは初めてイーシュに出会ったことを親友であるカノンに打ち明ける。そして、ミレがカノンに望んだこととは……。
【著者プロフィール】
ふくだりょうこ。大阪府出身。ミーハー。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。女性向けの恋愛ゲームシナリオほか、コラム、インタビュー、取材、ドラマレビューなど、エンタメ系を中心に活動中。夫とたれ耳のうさぎと暮らしている。
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「昨日、イーシュに会ったの」
学校の帰り道。
綺麗な眉をひそめて、ミレが不服そうに言った。
今日は教室でも考え込んでいる様子だったけど、それが理由だったのかと頷く。
「そう、イーシュに会ったの」
私が小さな声で繰り返すと、ミレは何度かコクコクと首を縦に動かした。
「珍しいね。どこで会ったの?」
「西地区の端まで買い物に行ったんだけど……駅のそばで会った」
「ああ、あそこは近くにズゴットの町があるからね。できるだけ行かないように、って言われているじゃない」
「そうだね……。行かなければよかった」
悩ましげなため息。思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「イーシュに会ってどうだった?」
「よく分からない」
「……嫌な感じ?」
「教科書で見るみたいに太っていなくて、髪も多くて、背も高かった。同い年ぐらいで」
「そりゃあいろんなイーシュがいるよ」
ミレはイーシュと出会ったのは初めてだっただろうか。今まで話題に出たことがなかったから分からない。私は何度か話したことがある。老いたイーシュに道を聞かれ目的地まで案内した。そのときは特に嫌な気分になりもしなかった。ああ、あれがイーシュと呼ばれるものか、と思っただけだった。
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