見出し画像

建設DXで需要のある人材とは。新たな職業も紹介

BIMをはじめとした新技術の導入などにより官民一体で推進されているのが建設DXです。建設DXでは、設計・生産のプロセスが変わり、それに合わせて従来とは異なる能力が求められています。

そこで、今回は建設DXで需要のある人材になるために必要な特徴や能力を解説します。また、今後高需要が期待できる職業や、建設DXで登場している新たな職業を紹介するので、建設業で更なる活躍をしたいという方はぜひご覧になってみてください。


建設DXで需要のある人材の特徴や能力

そもそも建設DXとは、BIMやAI、ICT、IoTなどのデジタル技術を建設業界に取り入れ、労働力不足や過度の時間外労働といった課題を解決する取り組みです。設計・生産プロセスの最適化や働き方改革などが含まれており、魅力ある建設業界を目指すために官民一体で建設DXが推進されています。

そこで考えなければいけないのが、仕事のプロセスや働き方が変わっていくなかで、どのような人材の需要が高まっていくかということです。

従来の建設業界では、深夜遅くまで働いて成果物を完成させる体力や忍耐力が欠かせない部分がありました。しかし、過度な時間外労働が社会全体で問題視され、ライフワークバランスの取れた生活の普及が急務とされているなか、これからは建設会社としてもこのような働き方を推奨することはないでしょう。

以上のような背景を念頭に置き、自分磨きを進めることが大切です。それでは、建設DXで需要のある人材の特徴や能力をみていきましょう。

学習能力が高い

第一に、「学習能力が高い」ことです。

世界的に有名なコンサルティング会社「McKinsey & Company」は、「Generative AI and the future of work in America」というレポートのなかで、生成AIと共存する未来で経営者が雇用すべき人材の特徴として、「学習能力が高い」ことを挙げています。

これは日本の建設DXにも当てはまることです。

学習能力が高い人材は今までも重宝されてきましたが、これからはより自発的に学べる人材が求められることでしょう。最新技術を学ぶには、開発者の講義やプロモーションに足を運んだり、知見者から直接話を聞いたりするのが近道です。

また、最新技術に敏感なコミュニティに身を置き、アンテナを張っておくことも重要です。教科書や技術書だけでなく、最新技術の発信地から学び、実務に取り入れていく姿勢が求められます。

応用力の高いスキルを持っている

「応用力の高いスキルを持っている」というのも、McKinsey & Companyが前述のレポートで挙げている能力です。

建設DXでは、設計・施工・維持管理の情報をBIMモデルに一元管理し、建築物のライフサイクル全体でのパフォーマンス向上が目指されています。そのため、設計・施工・維持管理の担当者の距離感が縮まってきています。自分の専門能力を他の分野に応用し、関係者の課題を手助けする能力が重要です。

建設は多くの関係者が携わるプロジェクトです。「応用力の高いスキルを持っている」人は、多くの関係者の課題を解決する能力を有していることになります。建設業において総合力の高い人材としてさまざまな方面から重宝されることでしょう。

コンピューター技術が高い

建設DXはデジタル技術による革新なので、コンピューター技術が高い人材が重宝されます。

また、新しいシステムやソフトウェアをゲーム感覚で触れられる前向きな姿勢が大切です。従来は有名企業が業界を代表するシステムを開発・運営しているのが一般的でしたが、近年はベンチャー企業が建設業のシステムやアプリを次々と開発しています。数あるソフトウェアから最適なツールを見つけるためには、どんどん新しいソフトウェアに触れていくことが重要だからです。

これからは、多くのシステムを不自由なく扱える高いコンピューター技術と、新しいシステムを柔軟に取り入れられる姿勢が求められるでしょう。

視野が広くバランス感覚が優れている

前述のとおり、建設DXでは設計・施工・維持管理の距離感が縮まり、お互いの協力関係がよりよい建物に繋がっていきます。そのため、自分の専門だけでなく関係者すべてに対してオープンな視野を持ち、プロジェクト全体にメリットをもたらすことができる人材が求められます。

プロジェクトを指揮する設計者、施工の中心として躍動する現場代理人(所長)、建築のプロとして建築主を補佐するプロジェクトマネージャーなど、どのポジションにおいても重宝される存在といえるでしょう。

視野が広く、バランス感覚が優れている人がそれぞれの先頭に立ち、プロジェクトを引っ張っていくことで、価値の高い建物を効率的につくれるようになります。

建設DXで高需要が期待できる従来の職業

建設DXで求められる人物像がみえてきたところで、今後の高需要が期待できる職業をみていきましょう。まずは、従来からある職業について触れていきます。

提案力の高い建築士

「提案力の高い建築士」というのは、今も昔も需要の高い存在です。建築物は工場製品とは異なり、一品ものの作品なので、その時代、その建物のニーズにあった提案をケースバイケースで行う必要があるからです。

建設DXでは、ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化などのコンピューター技術を使った新たなデザイン手法が登場しています。また、自由曲面を得意とする3Dプリンターを使った施工方法の登場などにより、今までは技術的・コスト的に難しかった建物を実現しやすくなっています。

このような建築技術の発展により、建築士はより高度な提案が求められることになるでしょう。環境保護やダイバーシティへの対応など、社会的な問題が複雑化していることなども優れた建築士の重要性が増す要因となっています。

最新技術に明るい施工管理者

建設DXは、設計・施工・維持管理の各段階をトータル的に扱う取り組みですが、なかでも労働力不足の解決や労働環境の改善が重視されているのが、施工段階の建設現場です。施工管理者は建設現場を司る存在であり、作業を効率化できる最新技術を積極的に取り入れる姿勢が求められます。

既に大手ゼネコンなどでは施工管理者にスマートフォンやタブレットが与えられ、共通データ環境を使った効率的な施工管理が実践されています。このような現場の所長は、大手ゼネコンのなかでも最新技術に明るい人であることが多く、会社の未来を背負っていく人材として重宝されているのが一般的です。

施工法だけでなく、施工管理の仕方や働き方も含めて新しいことを積極的に取り入れられる施工管理者は、建設DXにおいて活躍が期待できる人材であるといえるでしょう。

新たな取り組みに前向きな技術者や技能労働者

建設DXは、設計者や施工管理者だけでなく、技術者や技能労働者も一体となって取り組むことが大切です。

共通データ環境を構築したBIMモデルに下請業者である職人、サブコン、メーカーなどが積極的にアクセスし、それぞれの視点で課題を発見・解決していくことで、効率的な施工が可能になります。そのため、BIMなどの新たな取り組みに前向きな技術者や技能労働者は、建設現場において重宝されることになるでしょう。

BIMの難しい操作をできるようになる必要はなく、ゲーム感覚でモデルを開いて気になる部分を見る、問題を発見したら関係者に共有して早期解決に繋げる、というのが大切です。

総合力の高いプロジェクトマネージャー

高度な建築知識を有し、さまざまな関係者を尊重しながらプロジェクト全体をコントロールできる総合力の高いプロジェクトマネージャーは、ますます需要が高まるでしょう。これには、建設DXだけでなく、大手デベロッパーによる大規模プロジェクトの増加が関係しています。

「八重洲」の再開発などの大規模プロジェクトは、都市開発レベルの事業です。非常に多くのステークホルダーが存在し、それぞれの利害を整理しながらプロジェクトを進めるには、優れたプロジェクトマネージャーが欠かせません。

大手デベロッパーは優れたプロジェクトマネージャーを探しており、一緒に仕事をした大手ゼネコンの社員をヘッドハンティングするケースも見受けられます。それほど重要度が増している存在といえるでしょう。

建設DXで登場している新たな職業

次に紹介するのは、建設DXで新たに登場している職業です。今までとは違ったスキルを生かせる可能性があるので、ぜひ参考にしてみてください。

モデラ―

建設DXのプロジェクトで要となるのが、共通データ環境を構築したBIMです。BIMを作成する「モデラ―」は、建設DXで活躍する新たな職業といえるでしょう。

今まではCADが作図の主要ツールであり、「CADオペレーター」が活躍していました。BIMの登場により、CADオペレーターにBIMのモデリングを習得させる動きがあります。それでもモデラ―は不足しており、フィリピンやベトナムなどのモデリング事務所に外注しながらBIMに取り組んでいるのが実情です。

このような外注は作業の効率化のうえで今後も継続されていくと想定されますが、やはり大規模プロジェクトでは建設現場にモデラ―を配置したいのが実状です。

3Dモデルの扱いに長けたモデラ―は、建設業界において欠かせない存在になりつつあります。

建設ディレクター

建設ディレクターの立ち位置を表す図
新しい職域「建設ディレクター」
引用)一般社団法人建設ディレクター協会「建設ディレクターとは

時間外労働の上限規制や労働力不足を受け、「建設ディレクター」が新たな職域として注目を集めています。建設ディレクターは、入札から竣工までに至る工事書類データの管理や、ICTを使った測量などを主な業務とする職業です。

施工管理者は、昼間は現場対応に追われ、書類の処理で遅くまで残業するケースがよくあります。建設ディレクターはこの作業を補助し、それにより残業時間を月30~40時間削減したというケースも報告されています。

施工管理者のワークライフバランスを守る救世主ともいえるでしょう。建設ディレクターの約7割が女性というのも大きな特徴です。総務や経理から転職するケースも多く、さまざまな人が活躍できる職域といえます。

システムのインストラクター

BIMなどの新技術を扱えるシステムの増加を受け、それぞれのシステムのインストラクターが登場しています。例えば、言語生成AI「ChatGPT」を使って画像生成AIのプロンプトを作成する方法をレクチャーするインストラクターなどです。

前述のとおり、建設DXを受け、ベンチャー企業を含めた多くの企業が新たなシステムを開発しています。それぞれが特化した長所を持っており、設計者や施工管理者は多くのシステムに触れていくことになるでしょう。扱うシステムが増えるということは、インストラクターの題材が増えるということです。

専門に特化したシステムが次々と登場しているので、実務者目線でシステムの専門的な使い方をレクチャーできるインストラクターの需要が高まることでしょう。

おわりに

魅力ある建設業界を目指し、官民一体で進められている建設DX。設計・生産プロセスや働き方が変わり、建設業界で活躍できる人物像にも変化が現れることでしょう。素晴らしい建築物をつくれるように、時代に合った自分磨きを心掛けてみてください。

参考
・McKinsey & Company「Generative AI and the future of work in America
・アステリア株式会社「建設業界の2024年問題は「建設ディレクター」が救う!一般社団法人建設ディレクター協会理事長・新井恭子さんに訊く、建設現場のDX

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?