ChatGPTで画像生成AIのプロンプトを作成する方法を紹介。簡単に複数の建築パースを生成可能
世間で注目を集めている生成AIは、建設DXでも活躍が期待されている技術です。ChatGPTを使って建築基準法に基づく法規チェックを行うことなどが試行されています。
ChatGPTなどの大規模言語モデルと同様に建設業界で注目を集めているのが、画像生成AIです。建築においては意匠や芸術の面も重要な要素であり、デザイン提案には多くの労力がかけれています。もちろんデザインは建築の醍醐味ではありますが、生産性向上を背景に手軽なデザイン手法が求められています。その中の注目技術のひとつが、画像生成AIというわけです。
この記事では、ChatGPTと画像生成AIを併用して複数の建築パースを簡単に生成する方法を紹介します。無料で体験する方法もあるので、ぜひ触れてみてください。
画像生成AIのプロンプトとは
まずは画像生成AIを使うときに必要な「プロンプト」について説明します。プロンプトと聞くと、プログラミングの難しいコマンドをイメージする方がいるかもしれませんが、画像生成AIのプロンプトに専門的な知識は不要です。気楽に読んでみてください。
プロンプトは画像生成AIに指示をする文章
画像生成AIにおいて、プロンプトとは、画像を生成させるための文章を指します。例えば猫の画像を生成したいときに、「猫の画像を作って」と入力するのであれば、この文章がプロンプトです。
プロンプトは完全な文章である必要はありません。「猫、トラ猫、かわいい、尻尾が長い」のような特徴を列記した文章もプロンプトとして有効に機能します。画像生成AIのシステムは、完全な文章より特徴を列記したプロンプトの方が理解しやすい傾向があるので、慣れないうちは思いついたキーワードを列記するとよいでしょう。
ポイントは、「重要な要素ほど前に置く」ことです。「猫、トラ猫、かわいい、尻尾が長い」というプロンプトでは「トラ猫」が強く反映されますが、「猫、かわいい、尻尾が長い、トラ猫」というプロンプトでは、「かわいい、しっぽが長い」が強調される傾向があります。画像生成AIのクセとして認識しておくと、細かい調整をしやすくなります。
プロンプトはChatGPTで生成可能
プロンプトは、画像生成AIで生成する画像のクオリティを決める重要な指示文章ですが、慣れないうちは優れたプロンプトを書くのが難しいかもしれません。そのようなときに便利なのが、ChatGPTなどの「大規模言語モデル」です。
大規模言語モデルに画像に重要な要素を抽出させ、そこからプロンプトを生成させることで、ユーザーがあまり多くのことを考えずともクオリティの高い画像を生成できるプロンプトを入手できます。
本来は人間が画像を特徴ごとに分類することで、クオリティの高い画像を構成するキーワードが浮かび上がってくるものです。しかし、多くの画像を集め、特徴を分析し、プロンプトにまとめるのには多くの時間と労力がかかるでしょう。大規模言語モデルのデータベースには、膨大な数の画像データが記憶されています。「AIにデータベースの画像データを分析させる」というのは今回紹介する手法の概念です。
ChatGPTで画像生成AIに入力する建築パースのプロンプトを作成する方法
それでは、ChatGPTで画像生成AIのプロンプトを作成する方法を紹介します。この方法は、Prompt Gaia「HOW TO USE CHATGPT TO CREATE IMAGES IN MIDJOURNEY」の記事を参考にしています。建築パースに限らずさまざまな画像生成に使える方法なので、ぜひ使ってみてください。
今回は、例として「シャンデリアが豪華なホテルのメインホール」のパースを作成していきます。実際には作成したいパースのイメージを代わりに入力しましょう。なお、筆者が今回使う環境は、「ChatGPT-4」と「DALL-E」(ともにOpenAI社)です。
ChatGPTで建築パースのテイストを決めるキーワードを抽出する
まずは、ChatGPTを使ってパースを構成するキーワードを抽出します。そのため、ChatGPTに下記のような入力を行います。
「(シャンデリアが豪華なホテルのメインホール)の建築パースを次の要素に分解し、それぞれの要素を列として表を作ってください。列は、エントランスのデザイン、スタイル、テクスチャー、照明、ムード、構図、カメラアングル、フォーカスポイント、ディテール、カラーパレットです。
表を5行10列で英語にして埋めてください。」
これにより得られるのが下記のような表です。
この表には、先ほど列として指定した10個の要素に応じてキーワードがまとめられています。エントランスのデザインには「大階段」「大きなガラスドア」「回転ドア」などが、スタイルとしては「バロック」「現代風」「アールデコ」などが挙げられています。
指定する要素は自由に決められます。数も変更可能です。今回指定した10個のうち、「エントランスのデザイン」以外の9個は汎用性の高い要素なのでぜひ使ってみてください。好きな建築家などを追加してみてもおもしろいかもしれません。
列を指定するときは、重視する要素を左側に指定してください。前述のとおり、画像生成AIは先にあるキーワードを強調した画像を生成するためです。
指定する要素の特定が難しい場合は、ChatGPTを使ってみましょう。例えば、「ホテルのエントランスのパースに重要な要素を教えてください」と入力すると、「入口のデザイン、背景と環境、植栽と自然要素」などの回答を返してくれます。
なお、英語にしているのは、画像生成AIが日本語より英語の理解の方が得意だからです。英語のキーワードに慣れておくと、画像生成AIを扱いやすくなります。
ChatGPTでキーワードの表をプロンプトに変換する
次に、ChatGPTでキーワードの表をプロンプトに変換します。先ほどの入力でキーワードの表が得られたら、続けて下記の入力を行います。
「それぞれの行をカンマで区切られた行にしてください。」
これにより、下記の5つのプロンプトが得られます。
Grand staircase, Baroque, Marble & velvet, Warm soft glow, Opulent, Balanced symmetrical, Eye level, Chandelier, Intricate moldings, Gold, cream, burgundy
Double-height glass doors, Modern, Polished stone, Bright natural, Welcoming, Open minimalistic, Wide angle, Entrance area, Minimalist art, Black, white, grey
Revolving door, Art Deco, Wood & brass, Ambient soft, Sophisticated, Layered detailed, Low angle, Art Deco elements, Geometric patterns, Teal, gold, black
Archway entry, Gothic, Stone & wrought iron, Dim dramatic, Mysterious, Vertical towering, High angle, Vaulted ceilings, Stained glass, Dark blue, silver, black
Open air pavilion, Tropical Modern, Wood & textiles, Bright warm, Relaxing, Fluid natural, Bird's eye view, Water features, Lush greenery, Green, blue, sand
行ごとにキーワードをカンマで繋いだだけなので、表を見ながら画像生成AIに手入力してもよいですが、作業を減らすためにChatGPTにやってもらいましょう。
これでプロンプトを生成する作業は終了です。
画像生成AIにプロンプトを入力する
最後に、画像生成AIに先ほどのプロンプトを入力します。このとき、「シャンデリアが豪華なホテルのメインホール」であることを画像生成AIにも伝えてあげましょう。先ほどの1つ目のプロンプトを例に挙げると、以下のような入力になります。
「次のプロンプトを参考にしながら(シャンデリアが豪華なホテルのメインホール)の建築パースを作ってください。
Grand staircase, Baroque, Marble & velvet, Warm soft glow, Opulent, Balanced symmetrical, Eye level, Chandelier, Intricate moldings, Gold, cream, burgundy」
これにより、下記の建築パースを生成できました。
今回の例であれば、5つのスタイルの建築パースを生成可能です。次章で各プロンプトによるパースを紹介するのでご覧になってみてください。
プロンプトを作成するときの行数の指定を増やせば、より多くのスタイルでパースを生成できます。設計の初期段階でアイディア出しをするときや、建築主とデザインの方向性を確認するときに、短時間で多くのイメージを生成することが可能です。
この方法で画像の細かい調整をするのは難しいですが、ブレインストーミングのような感覚で多くのイメージを得るのには便利ではないでしょうか。
ChatGPTと画像生成AIで建築パースを生成した例
ChatGPTと画像生成AIで建築パースを生成した例を紹介します。
シャンデリアが豪華なホテルのメインホール
以下は先ほどの例で生成したプロンプトによるパースです。全くテイストの異なるホテルが生成されました。
緑を取り入れたショッピングモール
次に、パースのイメージを「緑を取り入れたショッピングモール」にして画像を生成しました。要素の指定は、「エントランスのデザイン」を「広場」にした以外は、ホテルの例のままです。
ChatGPTとDALL-Eを無料で使用する方法
2024年3月現在、ChatGPTとDALL-Eは無料で使用することができます。
ChatGPTはOpenAI社のChatGPTのホームページにアクセスし、アカウント登録を行うことで使用できるようになります。最新バージョンであるGPT-4は有料ですが、GPT-3.5は無料サービスです。
ChatGPTと同じくOpenAI社のDALL-Eは、ChatGPTの有料版に登録すると使用できるサービスです。また、Microsoftが提供している「Image Creator from Designer」上であれば、無料アカウント登録をすることでDALL-Eを使えます。DALL-Eでの画像生成を気軽に試したい方は、Bing Image Creatorを使ってみてはいかがでしょうか。
おわりに
デザインというクリエイティブな作業は建築の最も楽しい要素のひとつです。しかし、時間外労働の上限規制などにより、好きなだけ時間をかけてデザインを楽しめる時代ではなくなってきています。
生成AIは作業時間を短縮する有効なツールですが、この記事で紹介したパースを見てわかるとおり、現状では実際に建設・使用できるデザインを完全にできるわけではないのが実情です。生成AIのアイディアをベースに、現実的でより優れた建築に昇華するような能力も今後は求められてくるかもしれません。
参考
・Prompt GAIA「HOW TO USE CHATGPT TO CREATE IMAGES IN MIDJOURNEY」
・OpenAI「ChatGPT」
・Microsoft「Image Creator from Designer」
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