StreamBIMで働き方がどう変わる?一級建築士が実際に使ってみてわかった生産性向上・品質向上効果とは
竹中工務店も採用している「StreamBIM」が話題
今回紹介する「StreamBIM」は、共通データ環境(以下、CDE)に対応しているクラウドプラットフォームサービスです。大手ゼネコンのひとつ「竹中工務店」が新しい生産システムに取り入れたことで注目を集めました。
筆者は、構造設計者として竹中工務店に11年間勤務した経験があり、StreamBIMを積極的に活用している現場と仕事を行ったことがあります。その現場では、StreamBIMを活用し、生産性・品質向上に取り組んでいました。その効果もあり、大きな現場でありながらしっかりと作業員の休暇を確保していたことが印象に残っています。
この記事では、StreamBIMの特徴やメリットとあわせて、当時感じた使用感などをお伝えしたいと思います。 CDEを取り入れて生産性や品質を向上させたいと考えている方は、ぜひご覧になってみてください。
竹中工務店の新生産システムは、「竹中新生産システム」と呼ばれています。竹中新生産システムとは、BIMを活用したデジタルトランスフォーメーションを軸とした業務プロセス改革。建設現場の生産性・品質向上、さらには建設業の魅力向上のため、竹中工務店が積極的に展開している取り組みです。
竹中工務店は、将棋AIで有名な「HEROZ」と共同で構造設計AIシステムや空間制御システムを開発するなど、ベンチャー企業との協業が得意な会社といえます。その竹中工務店が、BIMによるデジタルトランスフォーメーションの核として選んだのが、Rendra社のStreamBIMなのです。
StreamBIMを中心とした共通データ環境の構築を目指す
竹中工務店は、StreamBIMを中心とした共通データ環境の開発に取り組んでいます。竹中工務店の施工管理者と設計者だけでなく、下請業者であるサブ・コントラクター(サブコン)や専門工事業者(協力会社)、さらには建築主や施設管理者を巻き込んだモデル利用を構想しているのが特徴です。
StreamBIMを一級建築士が実際に使ってみてわかったこと5選
BIMベースのクラウドプラットフォームだから「情報共有が簡単」
インターネットブラウザで操作できるから「手軽にモデルを確認できる」
モデル上で測定できるから「打ち合わせがスムーズ」
3Dモデルにコメントを残せるから「調整時の生産性が向上する」
最新図をわかりやすく管理できるから「品質が向上する」
BIMベースのクラウドプラットフォームだから「情報共有が簡単」
Rendra社は、公式HPにて、「StreamBIMは、AEC業界向けに開発されたBIMベースのデータ中心コラボレーション・プラットフォーム」と表現しています。BIMをベースにしたクラウドプラットフォームなので、設計・施工・維持管理に関する全ての情報をStreamBIMのモデルに集約することで、CDEとして機能させることも可能です。
StreamBIMを活用すると、データがひとつのモデルに集約されるので、モデル上で簡単に情報を共有できます。必然的に多くの関係者がモデルを参照するようになり、モデル上での議論が活発になるため、課題の早期発見・解決に繋がります。施工前に課題を解決できることが、手戻りやミスを減らして生産性・品質向上を実現するCDEのメリットです。
インターフェースは直感的にわかりやすくデザインされており、デジタルツールが苦手な専門工事業者でも手軽にモデルから情報を入手できます。
インターネットブラウザで操作できるから「手軽にモデルを確認できる」
StreamBIMは、名前にもあるとおり、「ストリーミング技術」が特徴です。これにより、高性能パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンなどでも大容量のモデルが快適に動作します。
ストリーミングの最大のメリットは、インターネットのブラウザでモデルを参照できることです。誰でも、いつでも、どこでも、手軽にモデルを確認できます。専門工事業者や設計者、建築主などとやり取りする場合は、モデルのURLを送る・開くだけでよいため、モデルを共有・確認する面倒くささから生まれる心理的なハードルが下がることもメリットといえるでしょう。また、モデルをダウンロードする必要がないので、モデルが更新されたときにもストレスフリーで最新の情報を入手できます。
もちろん、タブレットやスマートフォンでの操作に最適な専用アプリも提供されています。現場では、アプリを使いながら施工管理の記録やチャットによるコミュニケーションが可能です。
実設計者にとって他の設計業務中にモデルをダウンロードして確認するのは結構な負担なので、ブラウザで手軽にモデルを確認できるのはとても助かります。
モデル上で測定できるから「打ち合わせがスムーズ」
SteamBIMは、モデル上で部材の表面などをおさえて寸法を測定できます。2次元CADでは簡単に寸法を測定することができましたが、3次元BIMビューワーで手軽に知りたい寸法を測定できるツールを備えているものは多くありません。StreamBIMを見ながら打ち合わせを行っているときに、さっと寸法を測定できるので、打ち合わせのペースを乱すことなくスムーズに調整を進められます。
ただし、BIMにおける測定値の信頼性を高めるには、正確なモデリングが求められることには留意しておきましょう。測定値を使用する方は、モデルの精度を念頭に置きながら数値を扱う必要があります。場合によっては、どのような用途でBIMの測定値を使ってよいかを現場全体で目線合わせしておいた方がよいかもしれません。
BIMは非常に多くの建設情報を持っている分、モデリングには多くの労力が必要になります。すべてのモデルでミリ単位の精度を出すのは難しいため、BIMの測定値を過信するのは禁物です。
3Dモデルにコメントを残せるから「調整時の生産性が向上する」
StreamBIMでは、3次元モデル上にコメントを追加する機能があります。これにより、施工管理者もしくはモデラ―がモデル上で位置を示しながら課題を提示し、その課題に対して専門工事業者や設計者などの関係者が解決に向けて調整を行うことができます。
従来であれば、複数の図面に書き込みをして資料を用意し、メールで何度もやり取りをしなければいけませんでした。StreamBIMであれば、モデル上のやり取りだけで課題の共有、調整、解決まで行えます。
チャットベースでやり取りを行うので、誰でも大きな心理的ハードルを感じることなく発言できることもメリットです。特に、設計者・専門工事業者・モデラ―などが積極的に参加してくれれば、施工管理者が中継することなく調整が進むことも珍しくありません。必要最小限の手間で課題を施工前に解決できるので、大きな生産性向上を期待できるでしょう。
筆者としては、質疑書によるやり取りが減るので、設計者としても生産性向上を感じられました。モデラ―からの質疑は遠慮されがちですが、やり取りの手軽さからコミュニケーションのハードルが下がり、細かい納まりをモデラ―と直接調整する機会が多かった印象があります。
最新図をわかやすく管理できるから「品質が向上する」
StreamBIMの評価を調べてみた
StreamBIMを活用したノルウェー・オスロの空港プロジェクトのbuildingSMART表彰が報告されています。多くのIFCデータを扱えることがポイントのようですね。IFCの扱いやすさは、企業・部門を跨いだデータのやり取りをスムーズにします。
StrreamBIMによる調達の透明性の確保や納期遵守、予算管理などが評価されています。調達の透明性確保による品質向上、納期を手軽に管理できることによる生産性向上などが期待できそうですね。
モバイルアプリの使いやすさはStreamBIMのメリットのひとつ。直感的な操作感なので、デジタルツールに慣れていない専門工事業者の職人さんでも触れやすいでしょう。現場で3Dモデルと現物を見ながら職人さんと会話をできる環境では、建設的なコミュニケーションによる生産性向上を期待できます。
おわりに
StreamBIMは、生産性・品質向上を期待できるCDE対応プラットフォームです。StreamBIMを使えば、建設情報をモデルに集約し、CDE上で情報共有や課題解決に向けた調整を行えます。大量の紙やメールに頼った生産性の低い働き方から脱却し、最小限の手間で効率的な建設プロセスを実現できるでしょう。
StreamBIMは、使いやすいインターフェースで「コメント機能」や「図面管理機能」などを誰でも手軽に扱えます。これらの優れた機能により、生産性や品質を向上しながら、休暇を確保できる魅力的な建設現場を実現できるでしょう。
参考
・Rendra AS「StreamBIM」
・株式会社竹中工務店「Rendra社とBIMを活用したDXに向けた技術開発で連携」
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