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Autodesk社のBIMクラウドプラットフォーム「Autodesk Construction Cloud(ACC)」。最先端を走るCDEの魅力とは

建設DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて官民一体で建設プロセスのデジタル化を進めるなか、BIM環境の中心的な役割を果たすのがCDE(共通データ環境)です。CDEは各社の建設プロセス全体を支えるプラットフォームになるため、最適なCDEサービスを選ばなければいけません。

CDEサービスはさまざまな製品が登場していますが、なかでも有力なのがAutodesk社の「Autodesk Construction Cloud(ACC)」です。CAD時代から信頼の厚いAutodesk社のサービスとあって、注目している方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、Autodesk Construction Cloud の概要について解説していきます。BIMの導入に向け、サービスの選定に悩んでいる方はぜひご覧になってみてください。


Autodesk Construction Cloud(ACC)とは


Autodesk Construction Cloudの操作画面
Autodesk Construction Cloudの操作画面
引用:Autodesk Inc.「Autodesk Construction Cloud Products

それではさっそくAutodesk Construction Cloud(以下、ACC)の概要について触れていきます。Autodesk社ならではの将来性についても着目してみましょう。

Autodesk社がサポートするBIMクラウドプラットフォーム

ACCは、Autodesk社がサポートするBIMクラウドプラットフォームです。RevitやNavisworks、BIM Collaborate、DocsといったさまざまなAutodesk社のサービスを司る中心的なサービスといえます。

ACCは「連携を通じて高品質な実現」というコンセプトを掲げています。設計・施工・維持管理の建設プロセスで一気通貫したモデルと情報の一元管理を実現し、プロジェクトに携わるあらゆるチームの連携を強化します。

ACCに含まれるソフトウェアはシームレスに連携することが可能です。これにより迅速なやり取りが実現するほか、ワークフローが明確になり、情報の伝達ミスによる手戻りやミスを防ぎます。

ACCを導入することで、品質と生産性の向上の両立を目指せるでしょう。

ACCを構成するソフトウェア

ACCは4つの基本サービスで構成されています。これらは、施工管理、積算、モデルビューワー、書類管理に特化したソフトウェアであり、シームレスに連携することで建設プロセスをトータルサポートします。

さらに、会社やプロジェクトのやり方にあわせて追加製品によるカスタマイズが可能です。クラウト上でモデリングの共同作業ができるようになるサービスもあり、プロジェクトによっては大きな効果を期待できます。

以下に4つの基本サービスと注目すべき追加製品を紹介するので、チェックしてみてください。

●Build(基本サービス)
Buildは施工・プロジェクト管理アプリです。工程や品質、安全、コスト、スケジュール、打ち合わせ議事録などを管理するツールが揃っています。これらの情報はクラウドでシームレスに共有されるため、スムーズな連携を実現します。

●BIM Collaborate(基本サービス)
BIM Collaborateは、設計のレビューと自動干渉チェックを実行できるビューワーソフトウェアです。干渉チェックで発見された課題を関係者に通知することができ、また、解決状況をわかりやすく管理できます。着工前の課題発見・解決をサポートし、やり直しによるコストや労力の無駄をなくします。

●Docs(基本サービス)
Docsは、書類管理ソフトウェアです。セキュリティとアクセス権限が整理されたフォルダでファイルを管理することで、適切なメンバーが適切な情報にアクセスできるようになります。また、他のソフトウェアと連携し、現場やモデルの指摘事項、書類の承認状況などを一元管理できるため、ワークフローが明確になります。

●BIM Collaborate Pro(追加製品)
BIM Collaborate Proは、BIM Collaborateの上位版です。BIM360の後継サービスに位置付けられており、クラウト上でRevitを使ったモデリングの共同作業ができるようになります。大規模プロジェクトのモデリングを分業したい場合や、大人数をかけて短期間でモデリングを完了させたい場合、リモートワークに対応したい場合などにおすすめです。

●Autodesk Construction Cloud Mobile(追加製品)
Autodesk Construction Cloud Mobileは、ACCのサービスをモバイルアプリで使用できるサービスです。事務所にいても現場にいてもシームレスに作業できるようになります。

ACCに蓄積したデータはAIで活用

ACCの各サービスで作成したデータは、ACCをプラットフォームとするCDEに蓄積されていきます。蓄積されたデータは、そのまま設計・施工に生かされるのはもちろんのこと、AIを活用した技術で有効に活用されます。

Autodesk社製のさまざまなサービスにAIが搭載されており、蓄積されたデータを分析・解析することで将来的なリスクの回避に役立つ情報を提供します。優秀なAIを育てるには、深層学習のもとになる良質なデータが必要です。アクセス権限や承認状況が一元管理されたCDE上の情報を学習データにすることで、誤った学習を防ぐことができます。

工程やコストをはじめとしたさまざまなリスクをAIが発見してくれるため、先を見越したマネージメントを実現できるでしょう。

Autodesk Construction Cloud(ACC)のメリット

前節ではACCの特徴を解説しました。ここでは、他のCDEサービスにはないACCならではのメリットを紹介します。

Autodesk社の良質なソフトウェアと互換性がよい

Autodesk社は、良質なサービスで2次元CAD時代から製造業を支えている会社です。CADソフトウェア「AutoCAD」、BIMソフトウェア「Revit」、BIMビューワーソフトウェア「Navisworks」「BIM Collaborate」などの主要サービスはさまざまな会社で使われています。

ACCは、これらのサービスとの互換性のよさが大きなメリットのひとつとして挙げられます。dwgやrvtなどのソフトウェア特有の拡張子を扱うことに長けているので、少ない手間でモデルのエクスポート・インポートが可能です。

また、Docsで管理しているモデルの指摘事項をRevitやNavisworksで確認することができます。設計者がモデリング作業で使っているソフトウェアで指摘事項を確認できるので、スピーディーな対応をしやすくなるでしょう。

AI強化などの更なるサービス向上を期待できる

前述のとおり、Autodesk社は製造・建設の現場を長く支えてきている会社なので、今後も安定したサービスを提供してくれる可能性が高いといえます。

「Autodesk University 2023(以下、AU)」では、「AIがビジネスを変える」というヴィジョンを強調しています。AUはAutodesk社が主催する最新技術が集うカンファレンスです。そこでは、Autodesk社がこれから実現する建設プロセスに役立つAIが紹介されています。

また、ACCの新機能についても発表されました。例としては、モバイル端末での使用感を強化したビューワーや、Buildにおけるスケジューリング機能の強化などが挙げられます。

このように、Autodesk社は将来に向けたヴィジョンを明確にしているので、今後も継続してサービスの向上を期待できます。

Autodesk Construction Cloud(ACC)の導入事例

最後に、ACCの導入事例を紹介します。

大和ハウス:未来の建設現場をデジタル化で実現

「D’s BIM ROOM」システム概要図
「D’s BIM ROOM」システム概要
引用:大和ハウス工業株式会社「「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」開発

大和ハウスは、建設図面をクラウドで一括管理・編集できる「PlanGrid」を国内ではじめて本格導入するなど、建設プロセスのデジタル化にいち早く取り組んでいる会社です。PlanGridを導入する取り組みでは、施工管理や検査のペーパーレス化を実現しています。

また、2022年にはBIMデータを中心に据えたデータドリブンの施工管理を目指していることを発表しています。そのときからBIMソフトウェア「Revit」やACCの前身サービスの一部である「BIM360」などのAutodeskのBIMサービスを使っています。

2023年には、設計BIMからメタバースを構築するシステム「D’s BIM ROOM」の開発を発表しました。そのときに、設計・施工・製造・維持管理などのBIM情報はACCをベースとしてCDEにまとめていることを述べています。

清水建設:ACCを中心にCDEを構築

Shimz One BIMのイメージ図
Shimz One BIMのイメージ
引用)清水建設株式会社「竣工BIMで新たなサービスを提供

清水建設は、2023年にAutodesk社とDXの加速を目的とした戦略的連携に関する覚書を締結しています。清水建設は、建設プロセスに関する中長期戦略「Shimzデジタルゼネコン」を掲げています。なかでも、設計BIMを施工・製作・運用にまで連携し、業務の効率化を図る取り組みが「Shimz One BIM」です。

これらの取り組みを実現するため、プラットフォームとして採用したのがACCです。覚書のなかでは、「施工図のワークフローをACC上で効率的に実現」することや、「デジタルコンストラクション実現に向けてACC上で施工管理、特にQCDの効率化を目指す」(引用:Autodesk社)ことが言及されています。

おわりに

ACCは、これからの建設DXを支える有力なCDEサービスです。開発元であるAutodesk社は、AIを積極的に取り入れるヴィジョンを公表しており、今後も更なるサービスの向上を期待できます。BIMの本格的な導入を検討するときはチェックしてみてください。

参考
・Autodesk Inc.「Autodesk Construction Cloud
・Autodesk Inc.「Autodesk Construction Cloud製品
・Design & Make with Autodesk「AU 2023: AIドリブンなクラウドプラットフォームが導くデザインと創造の未来
・Autodesk Inc.「Autodesk、複数の建設業向けソリューションの新機能および機能拡張を発表
・デジタルクロス「大和ハウス、BIMデータを核にしたデータドリブン経営へのシフトを急ぐ
・大和ハウス工業株式会社「「D’s BIM ROOM(ディーズビムルーム)」開発
・Autodesk Inc.「Autodeskと清水建設、戦略的連携に関する覚書を締結
・清水建設株式会社「竣工BIMで新たなサービスを提供


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