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第50回衆院選(2024年)の結果を反映したリアルタイム得票数推定の更新

 今回は世論調査に関する地味な話です。未来社会プロジェクトでは、世論の動向や各種SNSなどで、内閣支持率や政党支持率の平均、「リアルタイム得票数推定」などを公開してきました。

 このうち内閣支持率や政党支持率の平均は、「各社の世論調査でこういう数字が出たならば、機械的に平均を求めるとこうなる」ということを示すのにとどめており、その結果が現実にどれほど適合するのかは問題としていません。新内閣の発足や政党の結成・解散、世論調査の開始や停止などにはそのつど手動で対応をしますが、その他の計算は自動化されていて、安定したデータの提供のため、2017年に現行の手法を開発してからは変更を加えずに運用するようにしています。

 これに対してリアルタイム得票数推定は、衆院選や参院選の比例票を推定できるのかという観点から、世論調査が現実にどれほど適合するのかを問題にしています。それは最新の選挙によって検証し、より良い推定ができるように更新をする必要があります。

 そこで、年末年始の世論調査が行われない時期を利用して、第50回衆院選(2024年)の選挙結果を反映したリアルタイム得票数推定の更新をしました。それにより何がどの程度かわるのかということを明らかにしなければならないので、今回はその報告を行います。


第50回衆院選(2024年)の検証

 リアルタイム得票数推定は、各社世論調査の政党支持率をもとにして、「もしもいま選挙が行われたら各政党はどれほどの票を得る実力があるのか」を1日きざみで推定したものです。ここでいう票とは、衆院選や参院選の際に全国で得る比例代表の票をさしています。手法の概要は次のとおりです。

 まず推定の前の段階で次の計算を行っておきます。

(0) 政党支持率の平均を求める
 全国を対象とした各社の世論調査から、政党支持率の平均を求めます。ここでは各社に固有の偏りを検出し、それを打ち消す補正をかけた後、誤差を考慮したうえで、時間的な補間をすることによって1日きざみの計算を行います。

 ここからがリアルタイム得票数推定の計算です。

(1) 投票日当日の政党支持率を比例代表の絶対得票率に対応させる
 先の(0)より、衆院選と参院選の投票日当日にあたる政党支持率が得られます。他方で過去の衆院選と参院選の比例代表について、各政党が全国で得た票を調べ、絶対得票率の形で得ておきます。ここから両者の関係式を定めます。この関係式を用いて、(0)で得た1日きざみの政党支持率の平均を絶対得票率に換算します。……(A)

(2) 絶対得票率を得票数に対応させる
 日々の有権者数を推定します。衆院選や参院選の投票日当日は確定した値が得られるので、人口動態統計から時間的な補間をすることによって、日々の有権者数を推定します。……(B)

 最後に、(A)と(B)を掛け算することにより、比例代表の得票数を推定します。

 従来これは、2013年から2022年までに行われた衆院選と参院選をもとに計算していました。それによる第50回衆院選(2024年)の推定と結果の比較は次のとおりです。この表の単位は「万票」で、赤色が濃いものほど推定が大きく超過しています。

表1. 第50回衆院選(2024年)の推定(更新前)と選挙結果
単位は「万票」

 自民党と立憲民主党が特に外れていることがうかがえます。

 自民党について外れた主な原因は、2013年から2022年までの期間では、支持率が低い時のデータが欠けていたためです。2023年以降、自民党は物価高や裏金問題などで大幅に支持率を下げてきましたが、それがどこまで票に響くのかを見積もるデータが不足していました。更新前はかなり耐えると考えていましたが、ほぼ比例的に、ダイレクトに響いたというのが実際の結果でした。

 立憲民主党に関しては、逆に支持率が高い時のデータが不足していました。こちらは、支持率が高くても、票は比例的に伸びないという結果が得られました。

 他の政党についても過大評価が目立ちました(もっとも、みんなでつくる党に関しては、東京ブロックにしか擁立しなかったため、全国に対する東京の有権者数の比率からして問題はなさそうです。これは全国世論調査をもとにしているので全国の比例票の推定となっており、特定の地域にしか擁立しないという政党の事情は考慮できません。同じく比例の擁立を限定した日本保守党についても、本来なら推定が過大評価となるのがむしろ正しいといえます)。

 以上をふまえて第50回衆院選(2024年)のデータを組み込んで、2013年から2024年までの選挙をもとにして票を推定できるように更新をしました。

 更新後の計算式を用いて改めて第50回衆院選(2024年)の推定を行うと次のようになります。

表2. 第50回衆院選(2024年)の推定(更新後)と選挙結果
単位は「万票」


更新前と更新後の比較

 更新前と更新後の推定について、より長期的なグラフの変化を確認していきます。以下の図では点線が更新前、実線が更新後で、第50回衆院選(2024年)の選挙結果を白丸(〇)で示しました。2024年の末までの世論調査が反映されています。


自民党

図1. 自民党の推定の変化

 自民党は、更新前と比べて更新後では起伏が大きくなりました。これは、第50回衆院選(2024年)の結果から、新たに「支持率が落ちたときは、票もダイレクトに減る」というデータが一つ加わったためです。全体的に下方修正されていますが、低いところほど変化は大きくなっています。


立憲民主党

図2. 立憲民主党の推定の変化

 立憲民主党は起伏が小さくなりました。全体的に下方修正されており、低いところでは変化が小さく、高いところほど変化が大きくなっています。


国民民主党

図3. 国民民主党の推定の変化

 国民民主党は、低いところはほぼ変わらず、高いところが下方修正を受けます。


公明党

図4. 公明党の推定の変化

 公明党は全体的にやや下方修正を受けます。起伏はより大きくなりました。


日本維新の会

図5. 日本維新の会の推定の変化

 日本維新の会は、支持率が高いところは下方修正されますが、低いところはあまり変わりません。

 以下、れいわ新選組、日本共産党、参政党、日本保守党、社民党、みんなでつくる党は微小な変化にとどまります。


れいわ新選組

図6. れいわ新選組の推定の変化


日本共産党

図7. 日本共産党の推定の変化


参政党

図8. 参政党の推定の変化

 

日本保守党

図9. 日本保守党の推定の変化


社民党

図10. 社会民主党の推定の変化


みんなでつくる党

図11. みんなでつくる党の推定の変化


 以上をまとめると次のようになります。

全政党(更新前)

図12. 全政党(更新前)


全政党(更新後)

図13. 全政党(更新後)

 2025年1月からは更新後のグラフを公開していきます。夏の参院選に向けて安定した運用を心がけていきますので、よろしくお願いします。


 ここからは、リアルタイム得票数推定の考え方をより詳しく説明し、更新後の推定が過去の選挙とどのくらい合うのかを長期的なグラフで明らかにしていきます。地味な話が続くので、興味のある方に見ていただければといった感じです。

 みちしるべでは様々なデータの検討を通じて、今の社会はどのように見えるのか、何をすれば変わるのかといったことを模索していきます。今後も様々な成果をお見せできるように頑張っていくので、参加してもらえたらとてもうれしいです。


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