見出し画像

第50回衆院選比例代表 全政党地域分析速報

 今回の衆院選の結果をうけて、すべての政党と政治団体の比例票の分布を地図上に描きました。前回からの増減もあわせて示しました。


簡単な見かた

 この記事に掲載した地図では、全国1892の市区町村を以下のように塗っています。

図1. 簡単な見かた

 投票率については、高いほど赤く、低いほど青くなるようにしています。

 得票率は、高い地域ほどその政党が強く、低い地域ほど弱いことを意味します。「絶対得票率」や「相対得票率」などの用語が出てきますが、「どこで強くてどこで弱いか」ということはほとんど違いません。多くの政党を同一の基準で表すため、塗り分けの階級を等間隔にしていないことに留意してください。

 増減は、増加したものを黄色から赤の配色で、減少したものを水色から青の配色で示しました。


投票率

 まず投票率を見てみましょう。図2に前回の第49回衆院選(2021年)のものを、図3に今回の第50回衆院選(2024年)のものを、図4にそれらの増減(今回から前回を引いた値)を示しました。以下、この記事の図は「前回の選挙、今回の選挙、増減」という並びになっています。

図2. 第49回衆院選(2021年)投票率
図3. 第50回衆院選(2024年)投票率
図4. 第49回衆院選(2021年)から第50回衆院選(2024年)までの投票率の増減

 第50回衆院選(2024年)の投票率は全国集計だと53.85%で、第49回衆院選(2021年)よりも2.08ポイント低くなりました。

 ここで図4の能登に注目すると、輪島市では11.94ポイント減、珠洲市では9.51ポイント減などと、下落はたいへん深刻な結果でした。

 沖縄の投票率も低調で、県全体で49.9%と、半分に満たない結果でした。

 投票率が上昇した秋田県南部では、小選挙区で村岡敏英氏と御法川信英氏の接戦が、山口県東部では岸信千世氏と平岡秀夫氏の接戦が展開されました。


相対得票率と絶対得票率

 ここから各政党を一つずつ見ていきますが、その前に得票率について説明を加えさせてください。すでにご存じの方や、とりあえず地図が見たいという方は飛ばしていただいて結構です。

 選挙の際にしばしば耳にする得票率ですが、実はこれには二種類があります。投じられた有効票のうち、特定の勢力が獲得した割合が「相対得票率」で、棄権者も含めた有権者全体のうち、特定の勢力が獲得した割合が「絶対得票率」です。特定の勢力とは、自民党や公明党などの各政党でもよいし、自民党と公明党の合計を与党とするように、何かのまとまりを考えても構いません。

 一般にマスコミなどで断りなく「得票率」というとき、それは例外なく相対得票率を指しています。しかし選挙の分析の際は絶対得票率も有効です。相対得票率と絶対得票率の違いを、有権者数が100万人の架空の選挙区を例にして図解してみました。

図5. 投票率・相対得票率・絶対得票率の計算例①

 ある回(仮に前回)の選挙で41万人が投票に行き、このうち40万人が有効票を投じたとしましょう。1万人は白紙投票などで無効でした。投票率の計算は無効票も含めて行いますが、相対得票率を計算する際に無効票は含めません。したがってこの選挙でA党が16万票を得たならば、A党の相対得票率は40%、絶対得票率は16%となるわけです。

 次に、別の回(仮に今回)では61万人が投票したとします。有効投票数は60万票で、A党は18万票を得ました。先ほどと同様に計算すると、A党の相対得票率は30%、絶対得票率は18%となります。

図6.投票率・相対得票率・絶対得票率の計算例②

 ここで前回と今回を比較してみましょう。するとA党の相対得票率は40%から30%に減っていますが、絶対得票率は16%から18%に増えていることが明らかになります。果たしてA党の力は伸びたと考えるべきでしょうか。減ったと考えるべきでしょうか。

 A党の得票数を見ると、これは16万票から18万票に伸びています。得票数を伸ばしたのにもかかわらず相対得票率が落ちたのは、有効投票数が増加したためです(無効票が十分に少ないのであれば、これは「投票率が上がったから」と言っても構いません)。つまり前回から今回の変化は「A党に投票した人が減った」のではなく、「A党も伸びたが、他の政党の方がより大きく伸ばした」のだととらえるのが適切です。

 このように有効投票数に大きな変化があると(≒投票率に大きな変化があると)、相対得票率の増減は誤解を招くことがありえます。相対得票率も絶対得票率も一回の選挙の形勢を知るのには有用ですが、複数回の増減を求めるときには絶対得票率のほうが票の増減を適切に反映することができます。

 そのためこの記事では、まず絶対得票率で描画したり差をとったりした地図から掲載しています。他方で、相対得票率でも見たい方にむけて、すべての図を相対得票率で作り直し、後半に掲載してあります。


絶対得票率表示

 まず、すべての地図を絶対得票率で示します。

自民党

図7. 第49回衆院選(2021年)自民党・絶対得票率
図8. 第50回衆院選(2024年)自民党・絶対得票率
図9. 第49回衆院選(2021年)から第50回衆院選(2024年)までの自民党の絶対得票率の増減

 自民党は今回、自滅的な大敗を喫しました。衆院選比例代表の得票数は過去最少となっています。

 図9からは、従来の自民党の堅牢な地盤でもほぼ一様な後退があったことがうかがえます。しかし全域で票が伸びた県が一つだけありました。新たに党の総裁になった石破氏の地元の鳥取です。

 今後は、自民の票の減少と投票率の下落に相関はあるか、自民の地盤で投票率が大きく落ちたといえるか、過去に自民党が弱っていた時と比べるとどうなのかといったことなどに検討を加えます。


 ここからは、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本維新の会、れいわ新選組、日本共産党、社会民主党、参政党、日本保守党などについて同様の地図を収録しています。ただし参政党と日本保守党ははじめて衆院選に臨んだ政党なので、前回や増減の図はありません。また、それぞれについて相対得票率で表示した地図も載せています。

 なお、収録した地図は今後の記事で一般公開することがありえます。

 みちしるべでは様々なデータの検討を通じて、今の社会はどのように見えるのか、何をすれば変わるのかといったことを模索していきます。特にこれからしばらくは衆院選の分析と、来年の参院選への備えに取り組みます。今後も様々な成果をお見せできるように頑張っていくので、参加してもらえたらとてもうれしいです。


ここから先は

4,195字 / 53画像

みちしるべ

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細