20180321タイトル

内閣支持率急落の情勢を「支持理由」から見る

日本テレビの世論調査をもとに、内閣の支持理由と不支持理由を検討してみます。理由については各社の世論調査で選択肢がかなり違うので、平均はうまくとれないんですね。なので偏りを念頭に置きつつ考えていくことにします。

日本テレビの世論調査を平均と比較してみましょう。(下のグラフ自体は過去の記事を参照してください)

上のグラフの赤線と青線は、それぞれ内閣支持率と不支持率について世論調査を平均したものです。

この平均の線について、下のグラフでは日本テレビの世論調査で発表された値(こちらは補正しないままのもの)と比較してしてみました。

内閣支持率について平均(赤)と比べると、日本テレビ(オレンジ)はやや低く出る傾向があることがわかります。また、不支持率の平均(青)と比べ、日テレ(水色)はやや高い傾向です。大きく平均と違っている箇所を①、②と書き込んで示しました。このくらい誤差でずれることはあるということですね。

グラフの下端を0%に変更したのは内閣支持層の全体をみたかったからです。つまり日テレの調査によるとこんなふうに内閣支持層がいるわけですよね。

この内閣支持層を支持理由別にわけて表示します。日テレの調査には支持理由の質問があるので、その割合を内閣支持率に掛けて積み上げれば下のグラフを作ることができます。

底の方から順に支持理由として「総理の人柄」「閣僚」「政策」「支持政党の内閣だから」「他に代わる人がいない」「理由なし」「そのほか」「わからない・答えない」と並べました。だいたい強固な理由から下に置いたつもりです。

いちばん下から「支持する政党の内閣だから」までを積み上げたのが特に積極的な支持層で、最新では13ポイントくらいになってますね。

これ、安保法の採決で支持率が最も下がったときには20ポイントあったんです。

つまり強固な支持層がかなり削れている。後はだいたい他に変わる人がいないから支持を選んでいる、ということがわかりますね(こういうとき、日本テレビの世論調査では内閣支持率が低く出ることに留意する必要はあります。誤差にも注意する必要がありますが、最新の日本テレビの内閣支持率は補正をかけると朝日新聞、毎日新聞と±1ポイント以内でよく整合します)。

不支持率でも同じように見ましょう。

こちらでも強固と思われる理由から順に積み上げてみました。下から「人柄」「閣僚」「政策」「支持政党の内閣でないから」「リーダーシップ」「特に理由なし」「その他」「わからない・答えない」。

不支持率は2017年の5月から8月にかけて森友問題、加計学園問題が燃え広がる中で上昇してきました。この不支持率の上昇を担ったのは主に「人柄」理由です。2017年7月ごろに「閣僚」理由が分厚くなってるのはおそらく稲田氏の自衛隊PKO日報問題によるものでしょうね。「閣僚」理由は2017年8月になると薄くなりましたが、「人柄」はその後も段差のように残りました。そして最新の調査で過去最高に跳ね上がっています。

2017年後半には北朝鮮問題の拡大や10月の衆院選がありました。先月は平昌オリンピックが報道を独占していました。そういったいろいろな要因によって支持率が変わってきたわけですが、

それは世論の関心が他に向いていただけで、安倍総理への不信感は昨年夏以降まったく解消されていない、ということが言えるのではないでしょうか。

今回、内閣支持率は昨年の最低水準近くまで急落したのにもそういったことが影響しているのかもしれず、これはいわば、支持率が最低水準に「戻った」んだと言ってもいいかもしれません。支持率が落ちた状態が特殊で、何事もなければ高い状態に戻るというのは、違うように思います。

最後に安倍政権下の全期間にわたるグラフを載せておきます。

2013年ごろは分厚かった「政策」理由が削れていることが鮮明です。2017年初頭にかけて「人柄」が高まっていますね。強固な支持層の部分として、「支持する政党の内閣だから」の上端の変化も見る価値があります。

不支持率の方は「人柄」要因の段差が鮮明です。

不支持率には安保法の採決が行われた2015年夏にも大きなピークがありますが、当時は「政策」理由が大きいのに対し、今は「人柄」理由が支配的になっています。

そして、不支持率の側にこの段差があるがゆえに内閣支持率が一定以上の高水準に戻ることはないのです。

※今回の話は、あくまで日本テレビの調査をもとにして考えてみたものです。平均が取れないときは設問や選択肢が違ってもなるべく複数の調査を見るべきなので、今後の検討が必要です。

★みらい選挙プロジェクトでは国政選挙の地域分析や毎週の世論調査の検討をやっています。ノートはまだ作って間もないアカウントなのでフォローしてもらえるとうれしいです*(๑˘ᴗ˘๑)*