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旧統一協会の票の大きさをどう見るか?

 今月8日に公開した「旧統一協会の組織票分布の推定」では、2度の参院選の比例代表で井上義行氏が獲得した票をもとに、旧統一協会の勢力分布の地図化を試みました。これは井上義行氏が2019年に落選した後、2022年に旧統一協会の支援をとりつけて選挙に臨んでいたため可能だったことで、旧統一協会が選挙のたびに同じ候補に票を乗せていたり、2016年の宮島喜文氏のように支援した候補が一度しか選挙に出ていなければわからなかったことでした。たまたま条件が整っていたため、選挙分析の側から旧統一協会の実態に一歩踏み込むことができたというのが実のところです。

 先の記事で公開した結果は、多くの方がGoogle Mapなどを用いて検証してくださいました。

 先日は朝日新聞も次のような記事を出しており、旧統一協会による組織的な支援を示唆する内容となっています。


 さて、今回は8万という数字の捉え方について少し補足します。先の記事で旧統一協会の票を市区町村ごとに推定し、全国で合計した結果はおよそ8万票でした。この数字は全国で各政党が得る票と比べて決して多いとはいえません。そのため、この程度の集票力では政界に影響を及ぼすことはなかったのではないかという議論が一部でされています。

 しかしながらこれに関しては注意が必要です。というのも、この8万の人たちは選挙の際に比例で一票を入れるだけでなく、おそらく選挙区でも熱量を持った運動員となっていることが考えられるからです。先に作成した地図はあくまで選挙データを用いたアプローチであるため票が出力されていますが、これは旧統一協会の票の推定であるだけでなく、それぞれの市区町村での運動員の数や活動量の反映であるという見方も一定程度は成立するはずです。

 もちろん実際は、8万人全員が普段から動けるわけではありません。一部が恒常的な運動員であったとして、少し規模感を想像してみましょう。もっとも8万人のうちのどの程度が運動員であるのかを制約することは容易ではありません。これが労働組合などであればどれほどの組合員数に応じて専従(もっぱら組合活動を行う者)をつくるかといったことはおおむねわかりますが、それがそのまま適用できるとも限りません。ひとまず今回は規模感をイメージするだけの目的なので、仮に10分の1と設定してみましょう。

 8万人の10分の1は8000人です。衆院選を想定してこれを289の小選挙区で割ると、1選挙区あたり30人弱です。これはどう考えるべき数字なのでしょうか。たとえば小選挙区で街宣をやるとしても、30人はいつでも揃えられるわけです。政治的なイベントをやるときも30人分の席は埋められます。もしイベントの日程が重なっていなければ、周辺の地域から10倍、20倍を集めてくることもできるでしょう。こういったものが、規模感のイメージです。

 こうしてみると、30人という数が政治家にとって十分に便利な存在であるように感じられるのではないでしょうか。安倍派を中心とした自民党の様々な政治家はこれを利用したわけです。

 ばらばらに選挙に行ってばらばらに票を入れる人たちと、一丸となって組織戦を戦う人たちはちがいます。ですからただ票数を数えるだけでその人たちが何を担うのかを見落としてしまうのなら、政界に与えている影響を過小評価することにつながってしまうでしょう。(そしてもちろん、秘書として内部に入り込むといったことも行われているわけです)

 ちなみに衆院選の野党の電話ボランティアなどは、行ってみたらほとんど自分しかいなかったというような話もあるほどです。そういったことを想像すると、動かせる人数として、やはりこれは大きいと感じられるのです。 

2022.08.20 三春充希