果たして「野党の支持率は伸びていない」のか?
内閣支持率や自民党の支持率が下落して、第二次安倍内閣の発足(自民党への政権交代が起きた2012年)以降でもとりわけ低い水準にあることが世論調査から明らかになっています。その一方で、「野党の支持率も伸びていない」という主張もしばしば耳にします。そうした主張は妥当なのでしょうか。3月14日までに発表された各社の世論調査をもとにして、与野党の平均の推移を描きました。
与野党の支持率
現在、与党を合計した支持率は28.1%、野党を合計した支持率は24.8%となっています。また、支持政党を持たない無党派層が43.4%を占めています。
与党の支持率は、第26回参院選(2022年)後に、旧統一協会との関係や、裏金問題の露見によって下落してきました。他方で野党の支持率はゆるやかに伸びてはいるものの、その大きさは与党の下げ幅と比べれば小さく、与党の支持をやめた人の多くは無党派層となったことがうかがえます。「野党の支持率も伸びていない」というのは、「与党の下げ幅と比べて」という意味ならば、おおむね正しいと言えるのです。
しかしながら、第二次安倍政権以降(2012年~)を大きくとらえたとき、与党の支持率の低下がただちに野党の支持率の上昇につながるというのがかなり無理のある発想だということも書き添えておかなければならないでしょう。与党の支持をやめた人たちはまず保留状態として無党派層となり、それが次の国政選挙の際に再び各政党に分化していくことを通じて、野党の支持も拡大するというのが原則であるからです。例えば図1からは、2022年の7月に無党派層の急減とあわせて野党の支持率の上昇が起きていることがうかがえますが、これは第26回参院選(2022年)の公示から投開票にともなう現象です。この原則が破れたことは、過去10年間でわずか数例にすぎません。
より具体的に言うならば、旧統一協会との関係は問題であるとか、裏金などの不正はまずいと感じて離れていった人たちの多くは、ただちに代わりとなる支持政党を探すのではなく、次の国政選挙で改めて自分の投票先を考える時まで様子を見守っているわけです。
与野党の得票数の推定
次に、支持率をもとに比例代表の得票数の推定を行った結果を示しました。この推定は、過去10年間に実施された国政選挙の比例代表で調整したものであることに留意してください。(したがって個々の選挙では少し外れてしまうことがあります)
現在は与党の合計が2112万票、野党の合計が2995万票と推定されます。
野党の票が与党を上回っていることに驚かれた方もいるかもしれません。けれどもこれは当然のことで、第二次安倍政権が発足(2012~)してから実施された全ての国政選挙の結果もそうなのです。支持率では与党の方が高いのに票では野党が多くなるのは、無党派層がより野党側に投票しがちであるからです。
野党の支持率を二分すると
さて、次に、野党の支持率を次のグループで分解してみましょう。一つ目は立憲民主党・日本共産党・社会民主党・れいわ新選組。もう一つは日本維新の会・国民民主党・教育無償化を実現する会(前原新党)です。
これは賛否のある分け方かもしれません。「うちをこことまとめないでほしい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。また地域的に様々な協力の枠組みが存在することも事実です。しかしこのように分けたとき、明らかな傾向が現れることを確認しておくのは有益です。
現在、立憲民主党・日本共産党・社会民主党・れいわ新選組を合計した支持率は15.7%、日本維新の会・国民民主党・教育無償化を実現する会を合計した支持率は8.4%となっています。また、グラフには表示していないものの、「みんなでつくる党」と参政党を合計した支持率が0.6%存在します。
立共社れのグループで見ると、その支持率は誤差範囲を超えて伸びています。こうした解像度を持ってとらえたとき、野党の内訳は明確に変化しており、「支持率は伸びていない」という主張は不適切となるというわけです。
野党の票を二分すると
次に得票数の推定において、野党の票を二分してみましょう。
与党の合計が2112万票なのに対し、立憲民主党・日本共産党・社会民主党・れいわ新選組の合計は1831万票と推定されます。また、日本維新の会・国民民主党・教育無償化を実現する会の合計が1045万票。グラフには表示していないものの、「みんなでつくる党」と参政党の合計が119万票です。
以上をまとめると、
●与党の支持率の低下に対して野党の支持率の上昇が小さいのは事実であるものの、野党が主に伸びるのは次期国政選挙のときと考えられる。
●しかし野党の内訳は変化しており、立共社れの4党は伸びている。その推定される票は与党に接近しつつある。
これが、果たして野党の支持率は伸びていないのかということに対する回答となるように思います。
P.S.
なお、この記事に掲載したグラフはこれで確定で、今後の世論調査を反映して更新する予定はありません(あんまり更新し続ける記事を増やすと疲れてしまうので……)。しかし、与野党で分けたグラフや、野党を二分したグラフは、今後も各種SNSにときどき投稿していくつもりです。
2024.03.15 三春充希