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農業ハウス内の湿度(しつど)管理 

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。今回はハウス栽培での湿度管理について述べたいと思います。
 
作物は光合成の材料であるCO2を吸収するために葉の気孔を開き同時に蒸散を行うことで気孔から水蒸気として水を放出しています。作物体内の水分保持するために気孔を閉じて蒸散が抑制されるとCO2の吸収量も低下します。結果として光合成も抑制されることとなります。

従って蒸散とCO2吸収を最適化する気孔の開度に着目した栽培管理が重要です。 気孔の開度は環境要因の変化に敏感に応答して調節されており、光・CO2濃度・水分状態が気孔の開度を制御します。最も重要な環境要因であるとされる水分状態は湿度の影響を受けるため、気孔の開度は湿度によって大きく変化します。そのため葉の気孔を閉じさせないようにするための湿度管理が作物の光合成促進の観点で注目されており、特に相対湿度による湿度管理ではなく温度と関連させた温湿度管理 いわゆる飽差管理が有効です。

相対湿度(%)は気温の空気が保持できる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量:g/㎥)に対する実際の水蒸気量(絶対湿度:g/㎥)の割合を示したものであり、一般に湿度といえば相対湿度をいいます。一方、飽差は飽和水蒸気量と絶対湿度の差を示し ある気温の空気にあとどれだけの水蒸気量を含む余地があるかを示す指標です。

植物の水分状態は相対湿度よりも飽差の影響を強く受け、作物の種類によって異なるが生育に最適な飽差は3~6とされていいます。 これは飽差は気温25℃では相対湿度が75~85%、気温30℃では相対湿度が85~90%の場合に相当し、このような条件下では気孔が適度に開いて光合成・蒸散がともに促進されます。飽差が必要以上に大きくなると蒸散量が多くなりすぎ、結果、植物が水分欠乏の危険を感知して気孔を閉じ、CO2の吸収が抑制されて光合成速度が低下してしまいます。一方、飽差が必要以上に小さくなると空気の湿りすぎにより気候は開いていても蒸散は怒らないことになります。

高湿度条件下で蒸散が停止することによる作物生産上の悪影響として、例えばトマトでは蒸散されるべき水分が果実内に流入してしまい劣化が多発することが知られています。また蒸散の停止により作物体内の養分吸収の流れが停止することで、養分欠乏が生じやすくなります。いちごでは昼間の湿度が極端に高いと 蒸散が抑制されるため株全体のカルシウム含有量が低くなり相対的に新葉などでカルシウム量が低下してチップバーンが発生するというケースもあります。
 
ハウス内の相対湿度は作物の蒸散・気温・日射・換気などの影響を受けて40~100%程度で変動し、他の環境要因よりも変動幅が大きいことが特徴です。葉の気孔を閉じさせない湿度管理の重要性が指摘される一方で、他の環境要因に影響することなく湿度のみを制御するのは極めて難しく、基本的には温度への影響も含めた温湿度管理が必要となります。日射が強い場合は季節を問わずハウス内の湿度は低下しやすく、加湿を行う必要があります。高温時の加湿は比較的容易であり細霧冷房を使用して冷房を行うと同時に空気中に 水蒸気を供給することが可能です。一方、高湿度の場合は除湿を行う必要があり夜間や冬季は換気量が低下し 低温により飽差が小さくなりやすいことから除湿の必要性が高くなります。

対策としては保温カーテンをわずかに開き高湿度で暖かい空気を上方に逃がし、必要に応じて天窓をわずかに開いてハウス外に水蒸気を放出する手法があります。また暖房により施設内の温度を高めて相対湿度を低下させるのも有効です。その他 前述のヒートポンプの除湿機能に着目してヒートポンプを除湿機として利用するケースもあります。

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