知っておきたい『二重価格表示のルール』#3
「過去の自己の販売価格以外」の価格ってなに?
『二重価格表示』の多くは、「過去の自己の販売価格」との比較によって、消費者に「ウチはイマ安い!」ということをアピールする方法で行われています。
しかし、『二重価格表示』には、他にも色々な価格と比較して「ウチはイマ安い」ということをアピールすることが多々があります。
代表的なものとして、
(1) 「希望小売価格」との比較
(2) 「将来の自己の販売価格」との比較
(3) 「ライバル店の販売価格」との比較
(4) その他との比較
がありますが、今回は(3)および(4)につき解説します。
「ライバル店の販売価格」との比較
「ライバル店の販売価格」との比較については、実際に
1. ライバル店の価格が正確である
2. 実際にライバル店よりも安価にて販売する
のであれば比較可能。
しかし、1.そもそもライバル店でないところと比較すること(=商圏が異なる店)は、そもそも比較対象として適切ではないため禁止となります。
(「 不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」12頁以下参照)
<ライバル店の価格が正確である>
事例:iPhone14ProMax(256GB)の販売価格を比較する場合
同じ商品でも商圏が違うだけで1万円変わっています
「現地販売価格と比較」というような表示については行わないようにして下さい
<実際にライバル店よりも安価にて販売する>
事例:家電量販店(ヤマダ電機とコジマ)の広告表示
家電量販店の(株)コジマが、
「当店は、ヤマダさんよりお安くします」等とチラシ等で広告していたことに対し、当該広告が不当表示にあたるとして同じく家電量販店のヤマダ電機がコジマに対して損害賠償を求めた裁判例があります。
(東京高判平成16年10月19日)
裁判所は、「ヤマダさんより安くする」という点について、
・特定の商品について記載しているものではなく、概括的商品に対して記載したものである
・全ての商品について安くする趣旨ではなく、企業努力をう旨を表明したに過ぎない
と判示し、景品表示法上の問題はないと判断しました。
しかし、特定商品についてもライバル店よりも安くする旨を表示していたら、上記裁判所の判断とは異なる結論となりそうです。
そのため、特定商品についてライバル店よりも安い旨(地域最安値)等を表示する場合には、実際にライバル店の価格調査を行い、ライバル店よりも安く販売しなければなりません!
その他価格との比較
■会員価格と非会員価格の比較
会員になることが容易(例:入会金無料、手続もチェックボックスを入れるだけ等)な場合で、
非会員価格で購入する人がほとんどいない場合に会員価格と非会員価格を比較することは、避けましょう。
→ 会員登録をしてもらった理由等を述べられるように、個人情報を伺ったり、会員価格の適用のためにレビューを記載してもらったり、会員価格として月会費を数百円もらうといった方法をとってください。
■需要のピーク時の販売価格との比較
旅行代金が、需要のピークとオフとの間で販売価格の差が著しい場合 (例:盆暮れの宿泊価格と平日の宿泊価格)に、 オフピーク時にピーク時の価格を比較対象価格とすることは避けましょう。
→特殊な価格と通常価格を比較してはいけないだけなので、上記の例でいうと、3連休の価格と通常の休日価格との比較程度であれば不当表示と判断されないのではないかと私見ですが考えます。
( 「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」14頁参照)
「ライバル価格」との比較や、「会員価格」との比較はよく目にします。
会員価格については、会員制度の設計が大事です。