円安と世界の連動
円安が止まりません。財務省、日銀は通貨防衛をするという明確な意思はない気がします。口先介入はしていますが。次の攻防戦は155円での介入があるか、無いか。
ただ、円が安くなる動きは止まっていない。そして、日本人の富はドルベースでみると減じていっています。
気になるのはローレンス・サマーズ氏の発言です。サマーズ氏は米国のインフレをいち早く警告しています。2021年はFRBは一貫してインフレは一過性であるという姿勢を崩しませんでした。その頃、サマーズ氏は「早く利上げをしないと大変なことになる」と、警告を発していました。
そして、実際に、インフレは一過性ではなく、粘着性があり、未だにインフレ懸念が続いています。そのサマーズ氏が、インフレ再燃を警告しています。
その中でスーパーコアインフレの上昇に言及しています。スーパーコアインフレとは、インフレ率からエネルギーや食品を除いたコアインフレからさらにシェルターや家賃などのコストも除いており、より一時的な要因を取り除いている指標です。
そのスーパーコアインフレ率が前月比は+0.65%と前回2月の+0.47%から上昇しました。前年同月比では4.8%上昇、3か月の年率換算では8%以上上昇しました。想定以上にコアインフレが根強いことを感じさせます。
こういったことから、パウエル議長は物価上昇率が2%に戻る確信を得るには「予想以上に時間がかかりそうだ」と発言しています。
米国の金利は簡単には下がりそうもありません。しかし、日銀が政策金利を変えるという事も今のところ兆しはありません。しかも、日本は貿易は赤字です。これも円安要因です。
中東では緊張感が続いています。イランがイスラエルに対して報復攻撃をしましたが、イスラエルもイランに対して、限定的な攻撃をすると米国側から報道されています。
そして、米国は「同盟・有志国が直ちに独自の制裁を講じると期待している」と声明で発表。イランへの制裁は、イランの態度を硬化させます。
それは、原油価格への影響も出てきます。ロシアはイランの行動に自制を促すと共に理解も示しています。イランもこれ以上の報復は考えていないうコメントも出しています。その為、先に仕掛けたきたイスラエルがさらなる報復や、イスラエル支持のためのイランへの制裁は、イランにとってもBRICS諸国にとっても、支持できない内容となります。
米国大統領選挙を控え、民主党政権はユダヤ票を失うわけにはいきません。イスラエル支持は外せません。
ただ、米国の同盟国やG7は米国の考え方を支持するでしょうが、BRICSの国、グローバルサウスの国々からすると、非常におかしなイスラエル支持となります。国際法違反での攻撃をしたイスラエルを支持するという事になります。それは、イランにとっても、ロシアにとっても、西側を批判する大きな要因です。
イランもロシアも、産油国です。そして、かつてと違うのは、米国抜きでも経済が回り始めているという事です。BRICS域内での貿易は増えています。現に制裁を受けているロシアの経済は好調です。それは、米国やEU、G7とのかかわりが無くても十分に貿易が成り立っているという事です。イランも現輸出先には中国やインドがあります。この関係を深めていくことで制裁を強化されたとしても、イランの経済も破壊的にはならないでしょう。
イランには奥の手があります。それは原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖です。実際に封鎖をしなくても、封鎖の可能性を示唆するだけで、原油価格は上がるでしょう。
原油価格が上がれば、米国のインフレへの影響があります。インフレ率が本格的に再上昇すれば、米国は金利を下げることができません。むしろ上げなければならなくなります。
米国の債務は34.6兆ドルに達しています。そして、利払い費は1兆ドルを突破しています。1ドル150円と計算すると、債務は5,190兆円、利払い費は150兆円です。利払い費だけで日本の国家予算を超えています。米国の国家予算は7兆2,660億ドルです。歳出に占める利払い費の割合は13.8%です。今後、高金利で発行する国債が増えていき、いずれ国債の金利は5%に近づいていきます。仮に5%の利払いとなれば、23.8%が利払い費となります。
これは、米国政府は払いきれないでしょう。その為、インフレを抑えるために高金利を維持すればするほど、政府の利払い費は上昇していき、最後は破綻することになります。
しかし、それは米国が単独でコントロールできる問題ではなく、原油価格が高いままに維持されれば、米国のインフレは収まることなく、金利は高いまま維持されます。そして、それはそのまま米国の債務危機に可能性を孕んでいます。
そして、中東の危機が米国の高金利の維持に繋がれば、日米の金利差は開いたままとなり、円安は続くという事になります。
年初は米国は今年3回の利下げをするという予測でした。その予測の元でも、150円前後の円安だった。それが、利下げをしないとなると、どこまでの円安になるか。
財務省、日銀の円高誘導への介入もあり得ることではありますが、それもなく放置すれば、160円、170円、いやそれ以上もあり得るかもしれません。また、2022年9月、10月に介入がありましたが、1年で元に戻る円安となりましたので、仮に介入があったとしても円安をとどめることができるかはわかりません。
ドル-円の為替相場と言えども、単に米国と日本の経済を眺めておけば予測できるわけではなく、世界はつながっており、特に現在は、中東でもウクライナでも戦争が継続されており、不確定要因が大きくなっています。
日本も世界の一員であり、世界は連動しています。私達が、米国の左寄りのメディアの発信が、世界の唯一の真実と見ていると、大きな間違いを犯してしまうと思います。
この時代、世界を幅広く見ておくことが、非常に重要であると感じます。