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ロシア軍事支援阻止へ中国に圧力 米欧、経済で揺さぶり/中国とロシアの結びつき【日経新聞をより深く】

1.ロシア軍事支援阻止へ中国に圧力 米欧、経済で揺さぶり

米国と欧州は中国が検討しているロシアへの軍事支援を断念するよう圧力を強めている。ウクライナ侵攻を続けるロシアが戦局で有利になりかねないと懸念するためだ。ブリンケン米国務長官は23日、武器供与に踏み切れば国際社会が中国から離反して経済に影響するおそれがあると揺さぶりをかけた。

ブリンケン氏は23日、米誌アトランティックのインタビューで「中国は新型コロナウイルス感染症から抜け出し、他国と再び関わりを持とうとしている」と指摘。多くの国は中国による武器供与に反対していると強調し「ロシアに殺傷力のある武器を支援して多くの国を遠ざけようとは考えないだろう」とクギを刺した。

ブリンケン氏の発言は中国が武器支援に踏み切れば米欧を中心とする国際社会が反発して経済・外交関係を再考し、新型コロナを封じ込める「ゼロコロナ」政策で景気が低迷した中国にさらなる打撃になると警告する狙いがあったとみられる。

米政府は中国がロシアに武器支援を検討していると分析する。ブリンケン氏は18日にドイツ南部ミュンヘンで会談した中国外交担当トップの王毅(ワン・イー)氏に支援を実行すれば「米中関係にとって深刻な問題になる」と伝えた。23日には中国の動向を「注視している。反応を見よう」と話した。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も23日、ロイター通信のインタビューで「中国が殺傷力のある武器支援を計画している兆候がある」と述べた。

中国は22年2月にロシアが侵攻を始めた直後にも軍事支援を探った。バイデン大統領が同年3月に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と電話協議し、経済制裁をちらつかせて実施しないよう迫った経緯がある。

中国はこれまでロシア産原油購入のほか、軍事と民生の両方に使える「デュアルユース」技術の製品などを提供してロシアを支えてきた。ブリンケン氏は「中国企業を名目に同国政府が承認した殺傷力のないデュアルユース型の支援はあった」と明言。一方、これまで殺傷力の高い武器供与や組織的な制裁逃れはなかったと明かした。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは22日、米当局者の話として中国がロシアへの武器支援を検討していると示す機密情報を公開する案が浮上していると報じた。中国側はロシアへの武器支援の可能性を否定しており、米国は具体的な証拠を提示して中国に反論するかどうか探っているとみられる。

王毅氏は22日、モスクワでプーチン大統領と会談した。プーチン氏は「ロシアへの訪問を待っている」と述べ、習氏の早期訪問に期待を示した。

24日で侵攻から1年になるロシアはウクライナ東部戦線で攻勢を強める。長期化する紛争の行方を左右しかねない中国をめぐる米欧とロシアの駆け引きが激しさを増している。

(出典:日経新聞2023年2月24日

中国のロシア支援欧米では警戒が高まっています。ドローンを100機売却したのではという報道も出ています。

軍事支援の警戒が高まる中、経済的には結びつきは既に深まっています。

2.ロシアと中国の経済的結びつき

ウォールストリートジャーナルは「中国からロシアへのマイクロチップの移動の仕組み」として、欧米が制裁をしたとしても、ロシアへは半導体が流入していることを報道しています。

また、中国から直接輸出されただけでなく、第三国経由で輸出されていることもわかっています。

公開されたデータでは、例えば半導体デバイスは一定数ロシアに流れ続けているが、誰が売ったのか、それが実際に制裁品なのかは分からない。そのため、中国からロシアへの半導体の流入を、直接、あるいは第三国経由で新品に「再梱包」して抑制することは、中国へのチップ輸出を完全にストップさせ、世界の電子産業を崩壊させない限り、極めて困難なのである。


(出典:ウォールストリートストリートジャーナル2023年2月25日

RT(ロシアトゥデイ)によると、ロシアと中国の間の貿易は22年に急増し、2024年にモスクワと北京が設定した2000億ドルの取引目標は予想よりも早く達成される可能性があると、プーチン大統領の演説から報道しています。また、プーチン大統領は中国の外交トップの王毅氏とモスクワで会談し、その親密さも明らかになっています。

プーチン大統領はその演説で2022年の貿易の取引額は1850億ドルに達しており、2000億ドルの目標は24年も早くなり、相互貿易の拡大は両国にとって重要であると語っています。

中国関税当局のデータによると、中国は2022年に761億ドル相当の商品をロシアに輸出しています。これは前年比で12.8%増です。そして、ロシアから中国への出荷は43.4%増の1141億ドルにたっしています。

数字は2022年の中国の貿易相手国としての成長率においてロシアがトップであることを示しています。中国はロシア産石油の最大の買い手としてインドとトップを争っています。また、ロシアの農産物の輸入国として中国はEUを抜いてトップとなっています。

自動車分野でも中国の台頭が目立ちます。22年の新車販売台数が前年比58.8%減と大きく減少する逆風の中、中国メーカーは微増を達成しています。ロシアによる中国勢のシェアは20%に迫り、韓国メーカーを抜いて外資系トップとなっています。

また、ロシアの国産ブランドの復活にも中国が関与していることが報じられています。フランスの自動車メーカーであるルノーが放棄したモスクワ近郊の工場で20年間の中断を経て、ロシアの有名な自動車ブランド・モスクビッチを復活させました。

これは中国のJAC製のSehol X4 コンパクト クロスオーバーと同一のコピーのようです。

ただ、ロシアへの制裁に抵触する物品に関してはトルコや旧ソ連圏を経由した迂回輸出が行われているともいわれているため、単純に中国が大手を振って大々的にロシア支援に乗り出しているわけではないということも言えます。

3.ロシアと中国、ロシアと世界の関係

米国は、中国がロシアへのドローンの輸出や致死性の武器を送ることを警戒しています。

米国の下院外交委員会のトップ、マイケル・マッコール氏はABCニュースのインタビューで「中国はロシアに100機の無人偵察機を送ることを検討していると報告された情報がある」と述べ、さらに「ほかの致死性の武器」の供給を検討している、と述べています。

CIA長官のウィリアム・バーンズ氏はCBSニュースのインタビューで、米国は中国指導部が「殺傷兵器の提供」を検討していたことを「確信している」と述べています。しかし、彼は「殺傷能力のある機器が実際に出荷された」という証拠はなかったと付け加えています。

バイデン政権の国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンもインタビューで北京はロシアに武器を出荷していないと述べています。

これらを考えると、計画はあるものの米国が確たる証拠を持って、出荷したという事実をつかんでいるわけではなさそうです。

しかし、中国は米国および西側に配慮しながらも、ロシアとの結びつきは強化すると、私は個人的には考えています。

まず、米国や西側諸国のやり方に世界中が同調しているわけではなく、米国主導の世界秩序が保たれていくとは考えていないであろうことが挙げられます。

米国との貿易関係、EUとの貿易関係は断ちがたく、一定以上の貿易は保ちたい。しかし、世界は決して欧米の主張を支持しているわけではなく、中立的な立場をとるグローバルサウスと呼ばれる国々の支持を失うわけにもいきません。したがって、中国はどちらにもつかない立場をとり続けると思いますが、ロシアとの関係も密接にとっていくでしょう。

また、ロシアにとっても中国への原油や食料の輸出は貿易相手として大きな存在です。

そして、ウクライナ戦争後の世界での存在感も考えているでしょう。西側メディアの報道では、相変わらずプーチン批判、ウクライナ支援の強化によってウクライナの優位性を報道していますが、実際は、ウクライナは極めて厳しい状況に追い込まれていると思われます。

加えて、ロシアによるウクライナ侵攻といわれていますが、実際は2014年から続く、ウクライナ国内でのロシア系住民への攻撃が今の戦争の始まりであることも世界中に認識が広がってきました。また、米国の伝説のジャーナリスト、シーモア・ハッシュのノルドストリーム爆破事件の真犯人は米国・バイデン政権であるという報道も流れました。決して、米国やウクライナが正義ではないことが明らかになってきています。

このような中、ロシアとの結びつきを中国が強めることへの批判は、西側諸国からだけです。

西側の制裁に加わらない国々も多く、中国だけでなく、インドやトルコなどもロシアとの取引も関係も含めています。

おそらく、今後起きてくることはドル離れ。中国がロシアと結びつく最も大きなメリットは、ドルを離れ、ドル以外での経済圏の確立だと思われます。

世界を大きく変えるのは、このドル離れ、ドル以外の経済圏が大きくなることです。ここは、ロシアも中国も、そしてグローバルサウスも利害が一致しているところです。

さて、日本ですが、世界での存在感は薄いと言わざるを得ません。西側諸国の一員として、米国に追従するだけではなく、ロシアの隣国として、考えていかなければならないと思いますが、どうやらそのような雰囲気はありません。

中国が表立って、軍事的にロシアを支援することはないでしょう。逆に西側諸国は表立って軍事支援を行っています。日本もその一員です。中国とロシアが結びつきを深め、西側諸国がウクライナで敗北となると、最も厳しい立場に立たされるのは日本ではないでしょうか。

米国は遠い。

これからもロシアと中国は結びつきを深めるでしょう。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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