ロシア軍事支援阻止へ中国に圧力 米欧、経済で揺さぶり/中国とロシアの結びつき【日経新聞をより深く】
1.ロシア軍事支援阻止へ中国に圧力 米欧、経済で揺さぶり
中国のロシア支援欧米では警戒が高まっています。ドローンを100機売却したのではという報道も出ています。
軍事支援の警戒が高まる中、経済的には結びつきは既に深まっています。
2.ロシアと中国の経済的結びつき
ウォールストリートジャーナルは「中国からロシアへのマイクロチップの移動の仕組み」として、欧米が制裁をしたとしても、ロシアへは半導体が流入していることを報道しています。
また、中国から直接輸出されただけでなく、第三国経由で輸出されていることもわかっています。
RT(ロシアトゥデイ)によると、ロシアと中国の間の貿易は22年に急増し、2024年にモスクワと北京が設定した2000億ドルの取引目標は予想よりも早く達成される可能性があると、プーチン大統領の演説から報道しています。また、プーチン大統領は中国の外交トップの王毅氏とモスクワで会談し、その親密さも明らかになっています。
プーチン大統領はその演説で2022年の貿易の取引額は1850億ドルに達しており、2000億ドルの目標は24年も早くなり、相互貿易の拡大は両国にとって重要であると語っています。
中国関税当局のデータによると、中国は2022年に761億ドル相当の商品をロシアに輸出しています。これは前年比で12.8%増です。そして、ロシアから中国への出荷は43.4%増の1141億ドルにたっしています。
数字は2022年の中国の貿易相手国としての成長率においてロシアがトップであることを示しています。中国はロシア産石油の最大の買い手としてインドとトップを争っています。また、ロシアの農産物の輸入国として中国はEUを抜いてトップとなっています。
自動車分野でも中国の台頭が目立ちます。22年の新車販売台数が前年比58.8%減と大きく減少する逆風の中、中国メーカーは微増を達成しています。ロシアによる中国勢のシェアは20%に迫り、韓国メーカーを抜いて外資系トップとなっています。
また、ロシアの国産ブランドの復活にも中国が関与していることが報じられています。フランスの自動車メーカーであるルノーが放棄したモスクワ近郊の工場で20年間の中断を経て、ロシアの有名な自動車ブランド・モスクビッチを復活させました。
これは中国のJAC製のSehol X4 コンパクト クロスオーバーと同一のコピーのようです。
ただ、ロシアへの制裁に抵触する物品に関してはトルコや旧ソ連圏を経由した迂回輸出が行われているともいわれているため、単純に中国が大手を振って大々的にロシア支援に乗り出しているわけではないということも言えます。
3.ロシアと中国、ロシアと世界の関係
米国は、中国がロシアへのドローンの輸出や致死性の武器を送ることを警戒しています。
米国の下院外交委員会のトップ、マイケル・マッコール氏はABCニュースのインタビューで「中国はロシアに100機の無人偵察機を送ることを検討していると報告された情報がある」と述べ、さらに「ほかの致死性の武器」の供給を検討している、と述べています。
CIA長官のウィリアム・バーンズ氏はCBSニュースのインタビューで、米国は中国指導部が「殺傷兵器の提供」を検討していたことを「確信している」と述べています。しかし、彼は「殺傷能力のある機器が実際に出荷された」という証拠はなかったと付け加えています。
バイデン政権の国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンもインタビューで北京はロシアに武器を出荷していないと述べています。
これらを考えると、計画はあるものの米国が確たる証拠を持って、出荷したという事実をつかんでいるわけではなさそうです。
しかし、中国は米国および西側に配慮しながらも、ロシアとの結びつきは強化すると、私は個人的には考えています。
まず、米国や西側諸国のやり方に世界中が同調しているわけではなく、米国主導の世界秩序が保たれていくとは考えていないであろうことが挙げられます。
米国との貿易関係、EUとの貿易関係は断ちがたく、一定以上の貿易は保ちたい。しかし、世界は決して欧米の主張を支持しているわけではなく、中立的な立場をとるグローバルサウスと呼ばれる国々の支持を失うわけにもいきません。したがって、中国はどちらにもつかない立場をとり続けると思いますが、ロシアとの関係も密接にとっていくでしょう。
また、ロシアにとっても中国への原油や食料の輸出は貿易相手として大きな存在です。
そして、ウクライナ戦争後の世界での存在感も考えているでしょう。西側メディアの報道では、相変わらずプーチン批判、ウクライナ支援の強化によってウクライナの優位性を報道していますが、実際は、ウクライナは極めて厳しい状況に追い込まれていると思われます。
加えて、ロシアによるウクライナ侵攻といわれていますが、実際は2014年から続く、ウクライナ国内でのロシア系住民への攻撃が今の戦争の始まりであることも世界中に認識が広がってきました。また、米国の伝説のジャーナリスト、シーモア・ハッシュのノルドストリーム爆破事件の真犯人は米国・バイデン政権であるという報道も流れました。決して、米国やウクライナが正義ではないことが明らかになってきています。
このような中、ロシアとの結びつきを中国が強めることへの批判は、西側諸国からだけです。
西側の制裁に加わらない国々も多く、中国だけでなく、インドやトルコなどもロシアとの取引も関係も含めています。
おそらく、今後起きてくることはドル離れ。中国がロシアと結びつく最も大きなメリットは、ドルを離れ、ドル以外での経済圏の確立だと思われます。
世界を大きく変えるのは、このドル離れ、ドル以外の経済圏が大きくなることです。ここは、ロシアも中国も、そしてグローバルサウスも利害が一致しているところです。
さて、日本ですが、世界での存在感は薄いと言わざるを得ません。西側諸国の一員として、米国に追従するだけではなく、ロシアの隣国として、考えていかなければならないと思いますが、どうやらそのような雰囲気はありません。
中国が表立って、軍事的にロシアを支援することはないでしょう。逆に西側諸国は表立って軍事支援を行っています。日本もその一員です。中国とロシアが結びつきを深め、西側諸国がウクライナで敗北となると、最も厳しい立場に立たされるのは日本ではないでしょうか。
米国は遠い。
これからもロシアと中国は結びつきを深めるでしょう。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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