ドル基軸通貨体制が世界を支配する仕組み
日本はドル資産を買い続け、米国を支えてきました。米銀へのドル預金、ドル国債、ドル債券を対外資産として保有し、赤字のドル覇権を支えてきたのです。日本の対外資産は1,479兆円にも達しています。(日本銀行:資金循環表/2023年9月20日現在)
この対外資産はほぼ一貫して減ることなく、増え続けています。これは、日本から米国への強烈な忠誠心の現れを示していると言えるでしょう。
また、日本の対外資産が増え続けていることは、海外に出たドルを米銀に還流させなければならない米国の事情があるからです。その流れを考えてみます。
経常収支が黒字の日本、そして中国がドルを買うということは、ドルが基軸通貨の金融体制の中では、米国に資金を貸し付けることになります。
米国は赤字財政なので、貿易による輸入が多く、支払は当然ドルとなります。そのため、そのドルは日本、中国、産油国などが保有することになります。
そのドルはどうなるのか?
米銀又はFRBへの預金になっています。米銀に預金するということは、米銀にドルを貸すということです。この仕組みで米国の経常収支の赤字として海外に出たドルが経常収支の黒字国からUターンして、米国に還流しているのです。
経常収支の黒字国が受け取るドルは、国内の銀行ではなくFRBと米銀に預金されています。普通は国内ではドルを利用することはできず、米国でしか使えないからです。
ウクライナ戦争においてロシアが経済制裁としてドルでの外貨準備を凍結されましたが、なぜ他国のドル外貨準備を凍結できたかというと、FRBに預託されていたからです。米国はドルでの外貨預金の生殺与奪権を握っています。しかし、これが世界に敬遠され、脱ドル化の一因になってきています。
ドルの貸付は国内銀行も行いはしますが、それは一部でしかありません。国内の銀行にドルを置いてもドルの金利はつきません。海外に出たドルは、黒字国の対外資産(貸付金)=米国の対外負債(=借金)として米国に還流します。
ただし、米銀は海外からの預金(負債)を米国の金融資本として使います。
海外企業の株は、米銀が資金を出す投資会社であるファンドが買います。株を一定量以上買った会社に対しては、新自由主義が声高に言う株主ガバナンスを発揮して命令します。いわゆる「物言う株主」というヤツです。これが、米国の資本主義の仕組みです。
海外からの負債で逆に世界を支配していると言える仕組みです。米国ファンドは日本株の30.4%、時価総額で255兆円の株主です。
輸出企業が海外の輸入企業から受け取ったドルを外為部門で買う(=円と交換する)のは、国内の銀行ですが、ドルのまま国内での貸し付けや運用はできません。
すると、ドルを運用する米銀に預金するか、金利がつくドル国債と債券を買います。このドル買いが黒字国の自国通貨売りになって、米国の対外負債になります。
日本の国内では、ドルはそのままでは使えません。米国なら、銀行から企業や世帯への貸付金や、海外株の買いとして活用できます。こうした壮大な国際的な仕組みが米国の50年の構造的な赤字から海外に出ていったドルがウォール街へUターンする仕組みです。
米国の赤字で海外に出たドルは若干の時間をおいて、ほぼ100%が米銀に還流します。50年間も続くGDPの130%に達した経常収支の赤字(33兆ドル:4,950兆円)は米国は気にする必要がありません。米国の赤字の一部である世界の外貨準備(12兆ドル:1,680兆円)も米国FRBと米銀に預金されています。
過去40年の経常収支の累積赤字と等しい米国の対外負債は、33兆ドル(4,950兆円)と巨大になっており、今年も約1兆ドルが増えます。来年もおよそ1兆ドルは増えるでしょう。
米ドル還流の基軸通貨体制が続くと、米国の対外負債は毎年1兆ドル増えていきます。これは、経常収支の赤字を逆手にとって、米国が利用できる負債資本の増加になります。
これらのことは、これまで世界の人からも意識されてきませんでした。あまりにも、自然な流れになっていたからです。
しかし、ウクライナ戦争でのロシアへの外貨準備凍結の経済制裁をしたころから世界中は気がつき始めました。それが脱ドルの流れです。ロシアなどは「アングロサクソンの金融システムは詐欺的である」とまで言っています。
世界はこの壮大な米ドルの基軸通貨体制から世界を支配できてしまう仕組みからそろそろ抜け出した方が良さそうだと気づき始めています。特に搾取された方が力をつけ始めてきましたので、脱ドルの流れは加速し、ドルの力は弱まっていくでしょう。
残念ながら脱ドルが加速する中、日本はますますドル経済圏に取り込まれていくかもしれません。中国も米国債の保有を減らす中、日本は変らず世界一位の米国債の保有国であり続けます。
円でもなく、ドルでもなく、資産の一部はゴールドで持つ必要があるかもしれません。
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