バイデン氏「プーチン氏と話す用意」 侵攻終結探るなら~欧米は結束し続けられるか?~【日経新聞をより深く】
1.バイデン氏「プーチン氏と話す用意」 侵攻終結探るなら
この報道からは、バイデン大統領とマクロン大統領は同じ方向を見て、進んでいるように感じますが、違和感を感じます。
その理由はフィナンシャルタイムズには違う角度の報道があるからです。しかし、現在、フィナンシャルタイムズは日経新聞の子会社です。その為、日経新聞はフィナンシャルタイムズには書いてあるが、日経新聞は書かないことがあることを知っているはずです。
英語圏の人々は知っていることを、日本語圏の人間は知らない。これは世界を見るときに非常に不利になる気がします。英語の報道を翻訳してブログに上げているのは、私自身が知らないままに世界を見るのが嫌だし、その他の日本人にも知って欲しいという想いがあるからです。
以下は同じ出来事のフィナンシャルタイムズの報道です。
2.日経新聞には書かれていないフィナンシャルタイムズの報道
まず、日経新聞の報道から感じることは、バイデン大統領とマクロン大統領は同じ方向を見て、結束を深めたということを伝えたい報道と感じます。
ロシアは悪。プーチンが戦争を終わらせたいと希望するなら話に乗ってやってもいいぞ、とでも言いたげな内容です。しかし、当然、ロシア側が妥協しての終戦を求めとは思えません。そのため、実現しそうもない話を持ち出してポーズをとっているようです。
しかし、ここにもメッセージはあると思え、弱みを見せることはできないが、米国もEUも終戦を望んでいるという示唆ではないでしょうか。
日経新聞の報道では、バイデン大統領には終戦に向けた協議の用意はあるが、ロシアが望んでいないという印象です。
それに対してフィナンシャルタイムズの報道では、「no immediate plans(当面その計画はない)」など、バイデン大統領に終戦に向けての用意があるというよりは、ロシアから何も示唆が無いので、私にもその計画は無い、とむしろ終戦が実現する可能性は低いという印象です。
この点に違いを感じています。
また、バイデン大統領とマクロン大統領は共同していく話だけではなく、緊張の話もあります。
この法案を巡り、両首脳は対立しているのです。マクロン大統領はこの法案を「超攻撃的」なものだとしており、戦争の影響を逃れるために結束が必要ななのに、「西側が分断される危険性がある」と警告をしているのです。
それに対してバイデン大統領は記者会見で「米国で生産される電気自動車への補助金や、再生可能エネルギーやバッテリーなどの産業振興のための税額控除を含む、包括的なIRA(the Inflation Reduction Act/インフレ抑制法案)について謝罪はしない」と述べています。
バイデン大統領はまったく譲歩の姿勢を見せていないわけではありませんが、法律が成立しているため、できることには限界があります。
ここまで報道を見てみると、両首脳が同じ方向を見て結束を深めたような内容になっている日経新聞の報道には違和感を覚えざるを得ません。
3.それさえも茶番劇
しかし、バイデン大統領、マクロン大統領が、戦争の影響を避けるための対策について対立しているということさえも茶番劇に感じます。
お互いにロシアにその意図があるのであれば、終戦に向けた交渉の用意があると言ってはいますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。
RT(ロシアトゥデイ)の報道にロシアのラブロフ外務相の記者会見の様子があります。
ラブロフ氏は、「米国とNATOがこの戦争に参加していないとは言わせない。直接的に関与している」と、西側諸国はロシア人を殺すことだけを目的とした武器をキエフに供給しているだけでなく、イギリス、ドイツ、イタリアでウクライナ軍を積極的に訓練していることを指摘しています。
ロシア側の発表ですから、全てをそのまま受け止めていいのかは分かりません。しかし、戦争という状況を考えると、どちらの話も本当の話かは分かりません。一方的に、西側の報道だけを信じるのもおかしい。そう考えると平等にどちらの報道も見ておく必要があります。
私には、ロシア側はこの戦争に敗けるわけにはいかないところまで来ていますから、ラブロフ氏の発言が嘘とは思えません。また、ウクライナが武器だけを供与されてその使い方もままならない状態で、ここまでロシアと戦えるとも思いませんから、NATOが訓練しているというのが事実でしょう。
米国はここまでは戦争を長引かせたことにメリットがあったのではないでしょうか。EU諸国は米国主導のロシア制裁によって、エネルギー危機に陥っていますので、本音では戦争が長引くことを望んでいるとは思えません。ロシアはウクライナに虐げられた親ロシアの地域の人々を守ること、ウクライナのNATO加盟などの安全保障上容認できないこと、ここを妥協することはできません。
この考えのぶつかり合いは、簡単には解決できないように思えます。
しかし、このままだと本格的な冬に突入し、ロシアはウクライナ崩壊へ向けての軍事作戦を展開して、終戦へ導く方向へと向かっていくでしょう。ロシアとて、ウクライナを完全掌握することが可能かどうかはやってみなければ分からないでしょう。ただ、やらざるを得ないのが実情です。
終戦があるとすると、①ロシアがウクライナの制圧をした後、②ヨーロッパ各国がエネルギー危機、インフレ、景気後退に耐え切れず、ロシアと妥協するとき、③米国がネオコン主導の政権ではなくなったとき、この3つのどれかと考えます。
今のところ、一番シナリオとして考えられるのは、①と私は思いますが、その場合は、激しく戦闘が行われ、西側も対抗すれば、戦火がさらに大きくなるかもしれません。
ウクライナのNATO加盟は無く、ロシアが併合した地域は、住民が望むならロシアとして再出発を図るとなれば、終戦になるような気がするのは私だけでしょうか。
戦争が終わる。これを一番に願います。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】