ドル円為替を考える~米国財政編~
円安が進行しているという話の際に、日本の実質実効為替レートは1970年代レベルであるという話が出ます。私も、これは大変な円安だと感じていました。
ただ、現在の金融事情を見る際に、どうも円は過小評価、ドルは過大評価されているのではないかという疑問があります。そこで、以下のように日米の実質実効為替レートを日米で比較してみました。
円とドルの実質実効為替レートが逆転して大きく離れていったのは、2021年からです。それまでは、円が高く、そして2016年~2020年まではほぼ同等で推移しています。この期間の実勢レートは以下の通りです。
この期間は実勢レートでは円高が続いています。そして、2021年に入ってから円安となっていきます。そして、実質実効為替レートでも急激な低下が起きています。
2016年から2020までは実質実効為替レートは円とドルで凡そ100:100です。ところが、その後、乖離していき、最新の数字では、円69.99:ドル109.80です。
ドルが強いという話は多くありますが、実質実効為替レートのドルを見ると、やはり上昇はしていま。しかし、とにかく円の実質実効為替レートの下落が激しいのが印象的です。
米国の2024年会計年度の財政赤字額は8,550億ドル(128兆2,500億円)、2023年度の経常収支は8,188億ドルの赤字(122兆8,200億ドル)です。この状況では本質的に通貨価値は弱いはずです。
経常収支の赤字は対外的なドルの支払い超過であり、財政赤字は国債の増発につながるからです。
一方、日本政府は財政収支の赤字は8兆8,163円ですが、経常収支は25兆円の黒字です(2023年)。25兆円分は日本企業に流入しています。
経常収支の黒字で本質的に強いはずの円は実質実効為替レートで2020年には100だったものが、2024年4月現在は69.9に下がり、経常収支が40年も赤字で、弱いはずのドルが上昇しています。なぜ、上昇しているのか。これはおかしいなと感じざるを得ません。
日本は2011年の東日本大震災の不況から、貿易収支の黒字はなくなりましたが、過去からの海外直接投資(307兆円:令和5年末)と買い増してきたドル証券、金融商品、外貨準備の1,180兆円からの投資収益があります。2023年の海外からの利子や配当の収入を示す第1次所得収支は34兆5,573億円の黒字です。
貿易収支と所得収支を足した経常収支は、年平均約20兆円の水準の黒字を続けています。これはほぼ毎年、日本資本の銀行を含む企業が海外生産の利益、ドル証券、ドル金融商品の配当と金利、ドル貸付金の金利として、20兆円分のドルを、米国から超過受取りしていることを示すのです。
逆に経常収支が8,188億ドル(122兆8,200億ドル)の赤字の米国は、約26兆ドルの累積対外負債(米国債、ドル債券、ドル借入金)で成り立っています。
負債としての海外マネーの流入(=ドル買い)に依存しているのが米国の財政です。米国経済は、米国以外からのドル買いの増加で成立しており、米国以外からの資金の流入で現在の株価が成立しています。海外通貨からのドル買いが増えれば、ドルレートは上がります。
各国通貨のレートは、外為市場(世界の銀行の店頭)での通貨の売買の結果です。株価が株式市場での売買の結果で決まるのと同じように、「売り」より多く「買い」が入る通貨(ここではドル)は上昇し、「買い」より多く「売り」が入る通貨(ここでは円)のレートは下がります。
ドルの実質実効為替レートが上昇気味なのは、日本を筆頭とする海外からのドル買いがドル売りを上回ったことの結果です。
ドルだけではなく、世界の通貨に対し、円の実効レートが大きく下がったことは、円売り・ドル買いが大きかったことを示します。
このドルへの資金の流入は世界経済の根本である米国の対外債務の巨額さを無視した行動のように感じます。そして、この円安は経常収支赤字、財政収支赤字の米国の財政を支えることになっていますが、問題をさらに大きくし、先延ばしをしていることになっていますから、いずれはドルをクラッシュさせる原因になると私は思います。
海外からのドル買いとドル債券買いの大きさは、そのまま米国の対外負債を一層大きくするからです。
米国の財政状況から見たときに、ドル高は極めて不自然と言わざるを得ません。
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