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【日経新聞をより深く】NYダウ1201ドル高、インフレ鈍化期待 円一時140円台~インフレピークアウト後はどうなる~

1.NYダウ1201ドル高、インフレ鈍化期待 円一時140円台

10日の米株式市場で主要株価指数が軒並み急反発した。ダウ工業株30種平均は前日比1201ドル(3.7%)高と2020年4月以来約2年半ぶりの上げ幅を記録し、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数の上昇率は7.3%に達した。同日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率が事前予想を下回り、米利上げペースが鈍化するとの期待が急速な金利低下と株価の上昇につながった。円相場は一時1ドル=140円台まで円高が進んだ。

ダウ平均の終値は3万3715ドルと約3カ月ぶりの高値になった。アップルが約9%高、マイクロソフトが8%高と大型ハイテク株の上昇が目立った。アマゾン・ドット・コムは12%高と急騰した。クレジットカード大手のビザやアメリカン・エキスプレスも6%上げた。

米債券市場では長期金利の指標になる10年物国債利回りが急低下(価格は急上昇)し、一時3.8%台前半と1カ月ぶりの低水準になった。CPI公表前は4.1%近かった。米金利低下でドル売りも広がった。対ドルの円相場は10日午後に一時1ドル=140円台前半とCPI前より6円近く円高・ドル安が進んだ。

10月の米CPIは総合指数の前年同月比上昇率が7.7%と市場予想(8%程度)を下回り「ようやく良いニュースが出た」(バンク・オブ・アメリカ)との受け止めが広がった。これまでCPIは予想を上回って投資家の失望を誘うケースが多かっただけに、下振れ方向のサプライズに市場の反応が大きくなった面もある。

米連邦準備理事会(FRB)が12月13~14日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を過去4回の0.75%から0.5%に縮小するとの観測も広がっている。金利先物市場では0.5%の利上げ予想が9日の57%から80%超に高まった。次のFOMCの直前には11月分のCPI公表も控える。利上げペースや最終的な政策金利の到達点を巡る思惑で市場の変動が大きくなる展開は当面続きそうだ。

(出典:日経新聞2022年11月11日

インフレ率が市場予想よりも低かったため、米株式市場では軒並み急騰が見られています。米労働省が10日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.7%上昇しました。伸び率は市場予想の7.9%を下回りました。

伸びは6月の9.1%をピークに4カ月連続で鈍化しました。9月は8.2%でした。また、物価の「瞬間風速」を映す前月比の上昇率は6.3%で、約40年ぶりの高水準だった9月の6.6%から縮小しました。

2.各種指標

(出典:TRADING ECONOMICS/NYダウ
(出典:TRADING ECONOMICS/S&P500
(出典:TRADING ECONOMICS/ナスダック
(出典:TRADING ECONOMICS/米国インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/コアインフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/エネルギーインフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/米国食品インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/家賃インフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/サービスインフレ率
(出典:TRADING ECONOMICS/米国10年物国債金利
(出典:TRADING ECONOMICS/米国2年物国債金利
(出典:TRADING ECONOMICS/米国30年物国債金利

3.株価は上がり、金利が下がったが・・・

インフレ率、コアインフレ率ともに下落し、さらに市場予想も上回ったことで、株価は上がり、金利は下がりました。概ね、市場には好感されているように見えます。

ただ、おかしなことでもあるわけです。景気が減速してきているからこそ起きていることだからです。もちろん、景気の過熱によりインフレ率の上昇は困るわけですが、引き締め効果で、景気後退が大幅になるのも困るわけです。

そのため、市場が好感しているのは、これまでインフレ率が下がらなかったからであって、景気の悪化が決して好ましいわけではありません。

この先の金利のピークはどのあたりになるのか?金利上昇ペースは落ち着くのか?が今後の焦点になってきます。インフレ率発表前ではありますが、今回のインフレをインフレになる前から予測していた元米財務長官のサマーズ氏は「6%以上になっても驚かない」という発言をしています。FRBがインフレは一過性と言い続けていたころに、現在の状況を予測していたサマーズ氏の発言だけに気になるところです。

さて、インフレ率は下がってきましたが、反面、景気後退の懸念は高まるわけです。ハイテク企業で大規模なレイオフが起きています。

また、10月の米国の購買担当者景気指数(PMI)は総合が47.3と前月から2.2ポイント低下しています。好不況の節目である50を4カ月連続で下回っています。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国総合PMI

製造業の指数は49.9と前月比2.1ポイント低下しています。50を割り込むのは新型コロナウイルスの感染が拡大していた2020年6月以来となります。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国製造業PMI

サービス業の指数も46.6と、前月比2.7ポイント低下しています。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国サービス業PMI

米国内の物価高で顧客の需要が減退しているのに加え、海外からの注文も急速に鈍っています。ドル高が急速に進行したため、現地通貨に換算すると米国の財やサービスが割高になってしまい、価格競争力は落ちています。

製造業では受注残の減少に伴い、新規採用が鈍っています。自発的退職者の後任を採用しないなどの動きがみられるようです。サービス業では物価高による仕入れコスト増加に加えて、人件費や金利負担の増大も景況感の悪化につながっています。

インフレ率の上昇が止まってきたことは悪いことではない。しかし、その反面、景気減速は避けられない。

問題は、金利のピークがどこか?そして、高金利はどれだけ続くのか?その上で、景気はソフトランディングできるのか、それともハードランディングか?

米景気の後退がどこまでか?これは注視しておく必要がありそうです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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宮野宏樹(Hiroki Miyano)@View the world
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