
子どもの肥満の治し方(4)
運動療法の工夫 ~無理なく続けられる運動のすすめ~
運動療法は、肥満解消において重要な役割を果たします。運動は単にエネルギー(カロリー)を消費するだけでなく、健康や心理面にもさまざまな良い効果をもたらします。ここでは、運動の具体的な効果や工夫についてご紹介します。
運動の効果
運動には、次のような効果があります:
交感神経の活性化
脂肪組織の中性脂肪が分解され、脂質代謝が改善します。心肺機能の改善
酸素消費が増えて日常生活での活動性が向上し、やせやすい体になります。筋肉の活性化
筋肉の収縮がインスリンの感受性を高め、血糖値が上がりにくくなります。また、筋肉量が増えることで基礎代謝が高まり、エネルギー消費が増加します。脂肪肝や血圧の改善
内臓脂肪を減らし、脂肪肝や血圧の改善が期待できます。心理面の安定
運動は気分をリフレッシュさせ、ストレス解消にも役立ちます。
おすすめの運動
さまざまな運動を取り入れることで、無理なく続けられる環境を作ることが大切です。
有酸素運動(ジョギング、サイクリングなど)
内臓脂肪を減少させ、心肺機能を高めます。筋力トレーニング(スクワット、腕立て伏せ)
筋量を増やし基礎代謝を高めるとともに、体脂肪率を低下させます。ウォーキングや自宅でできる簡単な運動
継続することで、肥満を改善させる事ができます。親子での運動(公園での遊びや家族でのスポーツ)
家族全員で運動を楽しむことで、習慣化を促します。
消費カロリーの目安
運動で80カロリー(kcal・食品交換表の1単位相当)を消費するには、図のような運動量が必要です(体重50kgの場合):

これらを参考に、生活に合った運動を選んでみてください。
注意点
運動療法を安全に取り入れるため、以下のポイントに気をつけましょう:
関節の負担に注意
肥満の子どもは膝や足首を痛めやすいため、無理のない運動を選ぶことが大切です。食事療法を先に始めて、ある程度減量することを勧める専門家も多いです。食事療法との併用を心がける
運動だけで体重を減らすのは、効率だけで見ると簡単ではありません(図参照)。食事療法や行動療法を組み合わせることで、効果が高まります。楽しむことを忘れない
無理に頑張る・頑張らせるのではなく、楽しく取り組むことで長続きします。
最後に
運動療法は、子どもの健康を支える重要な柱のひとつです。「無理なく、楽しく」を心がけながら、親子で取り組んでみてください。次回は、肥満解消を目指す上での、子ども特有の注意点について書き留めます。
著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。現在は、長崎県佐世保市にある、介護老人保健施設リハビリサポートひうみの医師として、また佐世保中央病院小児科の非常勤医師として勤務しています。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました