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【EBPM実践チームD2PA×みらい創生課】データで見る、柳津町の観光の可能性<前編>

福島県柳津町は町民参加のまちづくりを目指し「ミライツナガル会議(以下、ミラツナ会議)」を開催しています。昨年度からミラツナ会議と共に、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)に重きを置く施策立案や検証に向けて、D2PAと協働をしています。今回は、D2PAのメンバーである渡邊慧さんと橋本怜弥さんからなされた「2023年度中間報告」の内容をお届けします。

D2PAメンバーから柳津町への中間報告

■柳津町の観光の実態

「D2PA」は、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)という考え方に基づいてデータの分析をし、地方自治体と有意義な取り組みにチャレンジする団体です。(https://sites.google.com/view/d2pa/home)

今回は主に「観光」の分野を切り口に分析を行いましたので、その内容をお伝えします。今年は実際に柳津町にお邪魔して、自分ごととして地域の分析を深化させることができました。そうしたプロセスを経て、分析結果から見えた視点を4点ご報告させていただきます。

【報告内容】
①道の駅におけるイベントの効果分析
道の駅エリアで実施しているイベントが、売り上げや来場者に与えて効果の検証
②道の駅エリアへの集客が周辺施設に与える影響の分析
道の駅エリアに投資し来場者を増やしていくことが、周囲の民間宿泊施設などにどのような影響を与えうるのか検証
③新たな観光戦略の提案
今後の観光戦略において、若年層やインバウンド客をターゲットに据えることの重要性を分析
④調査分析の進化・深化
本中間報告を踏まえて、KDDIロケーションアナライザーを使用し、より進化・深化したデータ活用につなげていく

■道の駅分析に至るまでの経緯

柳津町の中でも、特に道の駅エリアを対象にして、さまざまな分析をするに至った背景をお伝えします。初めてお話をさせていただいた際に、2つの問題意識を伺っていました。

1つ目が、コロナ禍以後、道の駅エリアの来場者数の低下や赤字経営が問題となっているということです。その課題意識のもと、道の駅エリアで実施してきたイベントにどういった効果があるのかを把握したいと考えました。

2つ目は、道の駅に併設される町民センターの改修を検討する中で、「周りの民間宿泊施設と宿泊客を奪い合うことになるのではないか」というご心配があることをお聞きしました。そこで、町民センターの改修が、具体的に、周囲の民間施設にどのような影響を与えうるのかを検証したいと考えました。

この2つの問題意識に基づく分析については、以前一度ご報告したことがありますので、簡潔に再度ご紹介だけさせていただきます。

■【分析ポイント1】道の駅エリアにおけるイベント実施の効果

やないづ町立斎藤清美術館での企画展や花火大会などのイベントを実施すると、売上や来場者数において正の効果が出ています。具体的には、1日あたり売上が26,000円程度上がり、来場者は80人程度増加することが見えています。データの関係でエリア内の売店(ほっとinやないづ)のみを対象に分析しましたので、実際の効果はより大きなものになっていると推測されます。

また、当然のことのように感じるかもしれませんが、道の駅の外で実施するイベントよりも、道の駅内で行うイベントの方が、売上や来場者に良い効果が出ていることもわかりました。

続いて、各イベントでどのぐらい効果が出ているかをお伝えします。青い棒グラフ部分が道の駅の内部で行っているイベントで、どう売上に効果があったかを把握できるよう整理しています。イベントを実施することで、売上や来場者へプラスの影響があることが見えやすいかと思います。

■【分析ポイント2】町民センター改修に際する周辺施設への影響

道の駅と周囲の民間宿泊施設の関係に関する分析をまとめます。「町民センターを改修したらどうなるか」は、あくまで「もしもの世界」の話なので直接的にその効果を確認することはできません。そこで問題意識を言い換えて、「道の駅のエリアの来場者増が、民間宿泊施設の宿泊客数シェアを押し下げる効果を持つか」について分析しました。

まず、道の駅エリアを訪れる宿泊旅行客が、町民センターと近隣の民間宿泊施設「宿A」を、それぞれどの程度利用しているのか、単純に可視化しました。下記の図の通り、道の駅を訪れる宿泊旅行客の18%程が町民センターに宿泊していることがわかっています。

一方で、「宿A」については4%程のシェアとなっているため、このデータだけを見ると、道の駅への集客は周辺の民間宿泊施設というよりは、エリア内の町民センターの宿泊客増につながっているように感じるかもしれません。こういった状況から、「道の駅エリアへの投資が民業圧迫につながってしまうのではないか」というご心配が生じているものと推察します。

しかし、季節性や柳津町全体に訪れている人の人数など多様な要素の効果をコントロールして分析を行うと、道の駅エリアの来場者数と「宿A」の宿泊客には、正の相関関係があることを見出すことができました。

さらに重要なこととして、道の駅エリアの来場者数は、町民センターの宿泊客数よりも、「宿A」の宿泊客数に強い相関関係があることがわかりました。厳密にいうと、道の駅エリアの来場者数と、「宿A」の宿泊客シェアに正の相関関係があったということです。

以上の分析をまとめると、「道の駅エリアへの集客が、民間宿泊施設の宿泊客を奪う」ことを示唆する状況は確認できませんでした。

分析に基づいた提案は【後編】をご覧ください。

※D2PAでは自治体様からの協働のご相談を随時受け付けています。下記メールアドレスまでご連絡ください。  
お問合せ:d2pajapan@gmail.com

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