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空いている席を見つけて、明確に言語化せよ! 【定例会:コルク佐渡島さん】(その1)

NPO未来ラボの定例会(2018年9月10日開催)では、コルクの佐渡島庸平さんを招いて行われました。なぜ今、コミュニティなのか?に始まり、NPOやインフルエンサーについてもお話を聞きました。

1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)『ドラゴン桜2』(三田紀房)等の編集に携わっている。従来の出版流通の形の先にあるインターネット時代のエンターテイメントのモデル構築を目指している。


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個人にもう1回力を与える、インターネット

今井:
今日は佐渡島さんに来ていただきました。皆さん拍手でお迎えください。(会場拍手) 佐渡島さん、最近は本を書かれて、コミュニティの話とかはだいぶ熟した…かもしれないですけど。前提情報を先に共有したほうがいいかなと思っていて、何でコミュニティを大切にしようと思ったか、というところから深掘りしていこうと思っています。

佐渡島:
なるほど。基本的にすべての人は、村とか町みたいなコミュニティに所属して生活をしていたよね。もともとは村とか町ごとにちょっとずつ文化圏が違って、その村だけで通用するキーワードや文化があったりして、小さいコミュニティがいっぱい存在して、それぞれできていた。

 産業革命が起きて、ある種“都市”みたいなものが出来だして、情報の伝達っていうのが、基本的にはマスコミを通じて行われるようになってきた。新聞とか、テレビとか、ラジオとかが文化を作る担い手になっていった。

 もともとの小さいコミュニティの時っていうのは、全員が文化を作る可能性があった状態だったのが、それがなくなってしまったと。なくなってしまったところに対して、インターネットの発展によって、 個々人がもう1回力を取り戻している時代になってきたと。

 そうなると、相対的にマスコミの持っている価値が全部下がって来て、マスコミの情報っていうのが価値を持たなくなってきた。町とか村の時には、会話形式でしか情報の伝達ができなかったのが、今はインターネットを通じて、1人の人間がかなり大多数に情報を渡すことができる。それで、インフルエンサーが今、重要だって言われてます。

みの編の人たちは、僕の本を売るためにはがんばらない

佐渡島:
例えば、今井さんとか箕輪(幻冬舎編集者の箕輪厚介)さんとか、まあ僕でもいいんだけど…。みんなの行動がインフルエンサーによって意思決定されてるかっていうと、実はもう、ほぼされていないっていうのがデータでもわかっている。

 例えば僕が 「この本いいよ」って言った。実はそれで買ってくれる人って、たいしていない。僕の周りにいる100人とか200人みたいな繋がってる人たちが、「これいいよ」っていうふうに言うと、その100人の周りの人たちが結局買う…っていうふうな形で、そういう小さいコミュニティの中でしか波及していかない。それしか行動に影響を与えないっていうことがけっこうわかってきているのね。

 だから、インフルエンサーマーケティングって、インフルエンサーがその先にいる個々人が、もう1回インフルエンサーの言ったことを発信した場合、初めて社会的影響力を持つっていうことなんだよね。ただただフォロワーが多いから、みんなが行動するっていうわけではないと。だから、そういう情報伝達の仕方というのがマスコミの代わりになるんだったら、コミュニティ、ファンコミュニティを作家のために作っていかないとダメだろうなぁ…というふうに思ってます。

 やっていく時の情報伝達がどういうふうになるのか。例えばどういうタイプの情報だと伝えたいのか。例えば僕の本自体も、みの編の人たちと協力して作ったりとか…。

今井:
すごいですよね、ホントね。

佐渡島:
したんだけど、でもみの編の人たちは、それを売るためには別に頑張らない。でも、箕輪さんの本のためなら頑張る

(会場 笑)

今井:
そうですね(笑)

佐渡島:
そこの差とか情報の質があって、でも箕輪さんって、自分の本以外のために、たいしてみの編の人たちが協力体制築けないんだったら、その本の持ってる力って、実はすごく弱い。じゃあ、何のためにだったらみんなが一致して動くのか。どういう風にして情報を定義して伝えていくといいんだろう?みたいなことを考えていくというか。

今井:
それはでも、何がきっかけでそういうふうに考え始めたんですか? 最初の部分というのは。この、ホント2~3年ですよね、佐渡島さんがそれを考え始めたっていうのは。

佐渡島:
4年くらい前からずっと、コミュニティだなとは思ってて。ただ、コミュニティの圧倒的な可能性。もう少しゆるい、メルマガとか、SNSのコミュニティを考えていて、こういう対面のコミュニティを考えたりだとか。あと実は、フォロワー100人とか200人の人たちが、むちゃくちゃ、本当のインフルエンスを持っている。インフルエンサーよりも…みたいなことを理解し出したのは、やっぱりコルクラボをやってから。

今井:
それ、どういう意味ですか?

社会に対する影響力はないが、身の回りの人に対する影響力はみんな持っている

佐渡島:
コルクラボっていうか、“HIU”だな。ホリエモンサロンの人たちの行動を見て、これはもう、時代が変わってきてるな…と思って。

今井:
その、フォロワーが100人とかそれくらいの話の、影響力の強さっていうのはどういうことですか?もうちょっと分解して言うと。

佐渡島:
基本的にみんな、社会に対する影響力って持ってないんだけど、自分の身の回りの人に対する影響力はみんな持っている。それの総合でしか人って動いていかないから。身の回りの人間2人とか3人が、「この本いい」って言って買ったりすると、その会話に参加した買ったり。その情報に触れたいっていう気持ちが一気に高くなるから。

 世界で今一番成功してる人って誰か?と。金銭的なことで言うとビル・ゲイツなんだよね。それでビル・ゲイツが、「自分にとって今年一番役だった本はこれだ」っていうことを、毎年言ってる。けど、みんな読みやしないでしょ。ビル・ゲイツが言ってることすら参考にしようとしないで、どうやったら成功できるかなって考えてるの。それくらい人って他人の意見聞かないんだよね。だから、本当に身近な人同士でしか、影響って人は与え合ってない。


今井:
それ、寄付者さんとボランティアさんの関係も似てるなと思っています。寄付って、最初の一発目からする人ってわりと少ない。それよりは、何回か口コミとか、周りの人間が言い始めて、「あ、いい団体だな」と思った時にけっこうしたり。もう1回リアルな接点があると、よりしやすくなるところがありますね。

 コミュニティの話に戻ると、けっこう今、オンラインサロンもできてきてて、小規模な所もけっこうできてきてると思います。でもやっぱりインフルエンサーとか、Twitterのフォロワーが多い人じゃないと、コミュニティって作るのは難しいでしょうか?サロンとか。

佐渡島:
可能だと思うんだけど、 何をやりたいかわかんない所には人が集まりにくいんですよ。インフルエンサーの人ってキャラが立ってるんで、「どういうことがあるんだろうな?」っていうイメージがつきやすいんですよ。

今井:
もはやそのキャラの時点でイメージがついてる。

佐渡島:
ついてるってこと。だからインフルエンサーって言っても、例えばりゅうちぇるが何かサロンをやりますって言った時に、何やるんだっけ?って、意外とわかんないわけですよ。

今井:
僕はまったくイメージつかないですね。りゅうちぇるって最近話題になった人ですよね。

佐渡島:
そうそう。ファンクラブだったらわかるんですよ。でもコミュニティ作ると、そこで何やるんだっけ?みたいなのがわからないから、意外と有名人でも集まらないと。でもワタミだったら、料理についてのコミュニティだなってわかるから、「いいよね」とかってなるし。

空いている席を見つけて、明確に言語化せよ!

 だから明確な大義があったりだとか、旗印があったりすると大丈夫。明確な旗印を立てられた人間は今の時点、それでTwitterを運用してたら半年で数万人のフォロワーはいくわけですよ。“明確にわかりやすいことを言う” “人が興味を持って理解できる”っていうことが一番難しい。

今井:
確かにあるかもしれないですね。僕もたぶん、Twitterやり始めたのって、ほとんど今年の1月くらいからで、ちゃんとそこから発信し始めたのは最近なんですよ。NPO未来ラボの立ち上げの時って、そんなにフォロワーいるわけじゃなかったと思うんですよね。たぶんあの時点ではまだ6000とかだったんじゃないかな。 “NPOの未来のことを考える”、“NPOの経営をオープン化する”、あとは“10代・20代に刺さる”って、この3つの基本を持った時に集まり始めましたね。

佐渡島:
箕輪さんなんかも、箕輪サロン作った時って、4000~5000人しかフォロワーいなかったんじゃないかな。

今井:
たぶんそうだと思います。

佐渡島:
立ち上げから1年で、今どのくらいいるんだろう。5~6万人にまで…。

今井:
今、5万ちょっとくらいですね。

佐渡島:
増えてて…それで例えば、世の中には編集ライター養成講座みたいな、宣伝会議みたいな、会社がやってるのがあって、あれ、コースによっては半年で十数万とかかかるのかな。

今井:
そんなにかかるんですか?

佐渡島:
うん。そういう、社会人が行くような学校なわけですよ。それが月々5000円で、リアルな著者とかに会ったりだとか、リアルな物、本を作る過程も見れて学べるよ、っていうような形で、十数万円を月々5000円で体験してみませんか?っていう価値提供を箕輪さんはしたから、それで人が集まった。箕輪さんがだんだん成長し出してって、バーッといろいろ気づいてって箕輪さんのキャラが立っていって、それで『死ぬこと以外かすり傷』みたいな言葉も生まれてきて…。みたいな感じかなと。

 だから“不登校”っていうのは、大きい社会問題ではあるんだけど、どう取り組めばいいかわからないし、それに取り組むために自分の人生を費やしてくれてる人がいない…っていうところに今井君がスッと入っていったわけじゃない?

今井:
うんうん。

佐渡島:
…っな感じで、“空いてる席”を見つけて、それを明確に言うっていうのはすごい重要。マツコデラックスさんもそうですよね。

今井:
はい。

佐渡島:
もう何年も活躍していますよね。マツコが出てきてから、ああいうキャラって、他の有名人思いつきます?過去の人も駆逐されて、全部その席にマツコが 座っちゃってるんですよ。似たようなキャラも何人かいたんですよ。でも、マツコが全部取ってっちゃったんですよ。

今井:
なるほど。

佐渡島:
だから強烈な個性が出てくると、5人くらいで分けてた席も1人に取られちゃうんですよ。でも芸能界では、確実にあのようなキャラの席は、席として空いてるんです。同じ芸能界でも、例えばお笑い芸人の席だとけっこういくつかあって、でも、ビートたけしさんとタモリさんとさんまさんとかがずっとけっこう占めてるから、若手が出づらい状態がある。世の中に全部、空いてる席の数は決まってるんですよ。だからNPOも、ユニセフとか、フォスタージャパン等がありますよね?

今井:
はい、ありますね。フォスター。プラン・インターナショナル。確かあります。けっこう大きいですよね、規模的には。

佐渡島:
みたいな所がいくつかあって、席を取っちゃってるから…。

今井:
まあ、ものすごい広告費もかけてますからね。ハンパないくらい。

佐渡島:
そう。だから、そこの席をどういうふうにして取りに行くのか。他人の席を取りに行く場合は他人にどいてもらわないとダメだし、実は全員が空いてるの知ってるのに、言語化できてない席っていうのが存在して、その席をパッと見つけると…これほとんどコロンブスの卵みたいな感じで、“見つけた”っていうと全員がバーッて行くんだけど、言うまではそこに席があることに気づかない、みたいなことが社会の場合は起こり得る。

NPOの人は、ユーモアがない?!

今井:
でもなんか、 NPOってやっぱり堅いじゃないですか。ある種、全然知らない人たちに対して、どうやって関心を持ってもらうかっていうのは…。

佐渡島:
堅いっていうか、ユーモアがないんですよ

今井:
う~ん、めっちゃわかります。

佐渡島:
だって、“いいことしてる”と思ってるからね。

今井:
うんうんうん…。

佐渡島:
“いいことしてるー!!”って思ってる人はユーモア持ってない人だね
だから、すごいヒドイこと言うと“つまらない人たち”であることが多い。

今井:
…ちょっと、確かにそれはそうかもな…。自分を含めてもそれはそうかもしれないですね。

佐渡島:
面白いことのほうがお金集まりますからね。面白いことにみんな関わりたいし。

今井:
そういう意味で言うと、ちょっと聞きたかったんですけど、『宇宙兄弟』の“せりか基金”あるじゃないですか。あれってどのくらいお金集めたんですか?

佐渡島:
あれは800万くらいですかね。

今井:
あのキャンペーンだけで。

佐渡島:
そう。

今井:
へぇ~!一般社団法人でやってて、確かあの売り物だけで800万くらい売ってるんですよね。

佐渡島:
そうです。

今井:
マジですか?…だって1ヶ月くらいですよね、あれやったの。キャンペーンだけでそれだけやってるってことですよね。

佐渡島:
そう。

今井:
すげーな…(しみじみ)ああ、なるほど。面白いですね。

佐渡島:
それで、一研究にそれだけお金が払われることがないから、一流の研究者の皆さんも今応募してくれてて。もしも…あれは漫画の中で2030年とか31年とかにALSが治るんですけど、僕らが寄付してる研究者の研究がきっかけで、本当に2030年にALSが治ったら、すごくないですか?

今井:
すごい。…そうか、あのキャンペーンの1本だけでそれだけやってるのすごいですね。

佐渡島:
うん。だから、どういうふうにして“それ起きたら面白いね!”っていうのを考えるのが重要ですよね。そのほうがお金払おうという気になるので。

              (第2回に続きます)


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