私的年金の基本ー企業年金・自営業者のための年金制度ー
こんにちは。ミライ・イノベーションnote編集部です。
前回は、国民年金や厚生年金に代表される、公的年金についてお話ししました。
公的年金制度は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員・公務員等(第2号被保険者)が加入する厚生年金の2階建てで成り立っている、国の社会保障制度の1つです。
会社員・公務員等(第2号被保険者)は厚生年金があるおかげで、国民年金のほかにも上乗せ給付があります。
今回は、個人事業主・自営業者など(第1号被保険者)や専業主婦/主夫(第3号被保険者)でも加入し、上乗せ給付できる私的年金についてお話しします。
1.私的年金の概要
私的年金は、公的年金の上乗せの給付を保障する制度です。
民間の保険会社など国以外の組織が運営しており、企業が導入するものは、企業年金とよばれています。企業年金制度は、企業や団体などが、従業員の退職後の生活をより豊かなものにすることを目的としています。
一方で、各個人が自分の将来に備えるため個人単位で加入できるものもあります。
また、私的年金は給付額の決定方法の違いにより、確定給付型と確定拠出型の2つの形式に分けられます。
(1)確定給付型
加入した期間などに基づき予め将来の給付額が決まっているタイプの年金制度です。
■ 確定給付企業年金
確定給付企業年金とは、企業年金の1つです。
会社が従業員の福利厚生の一環として提供しています。従業員が負担した掛金は税法上、社会保険料控除の対象となり、退職後に、規定に応じた年金を受け取れるのが特徴です。
■ 厚生年金基金
老齢厚生年金の給付の一部を国に代わって支給し、さらに企業が独自で上乗せして支給します。従業員が負担した掛金は税法上、社会保険料控除の対象となっています。
なお、 厚生年金基金制度は2013年(H25年)の法改正により、2014年(H26年)4月1日以降の新規設立は認められなくなりました。
■ 国民年金基金
第1号被保険者のための年金制度で、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せできる年金です。「終身年金」が基本で、年金額が確定していることが特徴です。
(2)確定拠出型
一定の掛金を加入者が拠出・運用し、その運用結果により将来の給付額が決まるタイプの年金制度です。
■ 個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金とは、iDeCoのことです。
自分で決めた金額を積み立て、運用商品(定期預金・保険・投資信託など)を選択し、自ら運用・資産形成を進めます。
運用した資産は、60歳以降に年金または一時金として受け取れますが、60歳になるまで引き出せないという注意点もあります。
iDeCoについては、こちらの記事でくわしく解説しています。
■ 企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金とは、企業年金の1つです。
会社が従業員の福利厚生の一環として提供しています。
確定給付年金とは異なり、従業員自身で運用を行い、その運用結果により将来受け取れる金額が変わってきます。
◆私的年金の種類まとめ
2.自営業者のための年金制度
第1号被保険者(自営業者等)が将来受け取る年金額を増やすための制度として、付加年金と国民年金基金があります。
いずれも国が運営し、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして受給できます。ただし、いずれかの選択加入となり、併用はできません。
次に、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
(1)付加年金
付加年金とは、国民年金(老齢基礎年金)の上乗せ受給ができる、第1号被保険者のための制度です。
毎月の国民年金保険料に400円/月を加算して支払うことで、将来、国民年金(老齢基礎年金)に付加年金を加算した金額を受け取ることができます。
このとき、受け取ることのできる付加年金の額は、200円×付加年金保険料を支払った月数となります。
具体的な数字で確認してみましょう。
つまり、2年間受給すると受給額が支払額を上回るので、とってもお得な制度と言えます。
なお、毎月の国民年金保険料にプラスして保険料を支払う仕組みであるため、付加年金は任意加入ではありますが、公的年金制度の2階部分と捉えることができます。
(2)国民年金基金
国民年金基金も、国民年金(老齢基礎年金)の上乗せ受給ができる、第1号被保険者のための制度です。
加入は口数制で1口単位で加入できます。また、保証期間は終身(終身年金)と有期(確定年金)があり、ライフプランに応じて加入しやすいと言えます。
国民年金基金の掛金は6万8,000円/月が上限となっており、第1号被保険者のに加え、日本に住む60歳~65歳までの国民年金任意加入者も加入が認められています。
なお、任意脱退は原則不可であることに注意しましょう。
(3)付加年金と国民年金基金どっちがお得?
付加年金と国民年金基金は併用ができません。そのため、どちらに加入すればよいか悩んでしまうかもしれません。
そんな時は、次のような観点で考えてみるとよいでしょう。
① 将来受け取る年金額を1円でも多く増やしたい場合
付加年金と国民年金基金では、国民年金基金のほうが掛金が高くなるため、給付額も多くなります。
そのため、将来受け取る年金額を少しでも増やしたいのであれば、国民年金基金に加入するとよいでしょう。
しかし、国民年金基金は基本的に途中脱退ができません。そのため、国民年金基金に加入するのであれば、無理なく支払いを継続できる内容とする必要があります。
② 支払い負担はなるべ軽減したい場合
付加年金は保険料(400円)を支払った月数分、その半額を年金として受け取ることができます。2年間で元が取れる計算なので、日々の経済的負担を減らしたいのであれば、付加年金がおすすめです。
ただし、付加年金だけでは老後資金に不安がある場合などは、iDeCoやつみたてNISAといった他制度も併用しながら老後資産を形成していくことも選択肢の1つですね。
つみたてNISAについてはこちらの記事でくわしく解説しています。
3.私的年金・第1号被保険者のための年金制度のまとめ
最後に、私的年金・第1号被保険者のための年金制度のポイントを整理しておきましょう。
◆ 私的年金とは
◆ 第1号被保険者のための年金制度
◆ 付加年金と国民年金基金
4.年金制度のまとめ
公的年金と私的年金をまとめると次のようなイメージです。
まずは、自分が第1号被保険者~第3号被保険者のどれにあたるのかを知っておきましょう。
被保険者によって加入・上乗せできる年金が異なります。自身のライフスタイルに合った資産作りの目安にしてみてくださいね。
5.さいごに
いかがでしたか?
「老後2,000万円問題」で問題提起されているように、今後、公的年金の受給額で老後の生活をまかなうのは、より厳しい時代になると言われています。
公的年金での不足を補い、老後の生活をより豊かにするために、私的年金を検討するのも一手です。
人生100年時代。若いうちからコツコツと資産形成を進めていけるとよいでしょう。
老後2,000万円問題については、こちらの記事でくわしく解説しています。
次回は、公的年金の給付内容についてくわしく解説します。
おたのしみに!