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子猫が家にやってきた

縁あって、子猫が我が家にやってきた。
5ヶ月の茶トラのオスである。

すでに2kgくらいあるので、子猫と呼ぶにはやや大きいが、そも、子猫を欲していたわけではない。

我が家には8歳メスの先住猫がおり、人にも猫にも懐かない性格のため、とにかく先住猫と折り合いをつけやすい猫を所望していた。
ので、メス同士よりはオス、子猫よりは大人猫がいいだろうと考えていたのだ。
できれば性格も、活発よりはおとなしめ。ほかの猫大好きでグイグイいくタイプよりは、むしろ臆病なほうがいい。

ぶっちゃけ、普通に猫が欲しいと思う場合と比べると、求める条件は多かった。でも先住猫がいる以上は仕方ない。

先住猫のこと

そもそも、先住猫がいるのになぜ猫を新たに欲しがるのか?

それは……先住猫が懐かないからだ。
正確には、まったく懐いていないわけではない。ただ、めちゃくちゃクールでドライな性格なのだ。

形ばかり撫でさせてはくれるがすぐに逃げるし、抱っこはさせない。
寝るときは父母の寝室でのみ。
それも寒い冬以外は高所のスキマやダンボールに入って隠れるように寝るような子である。

かれこれ20年以上、10匹以上の猫を飼ってきた家であるが、この8歳メスに関しては、猫飼いの猫好きが猫を飼う楽しさを堪能できる場面が……ないのだ。

猫好きは猫を撫でたいし、顔をうずめてモフモフしたいし、一緒に遊びたいし、膝の上で寝てほしいし、丸くなっているところを眺めてニヤニヤしたいのである。
そのために猫様を病院に連れていき、手術してワクチンを打ち、毎日トイレを掃除し餌を捧げるのである。

先住猫は、選んでやってきた子ではない。
ある日我が家の開いていた窓から侵入し、置いてあったパンの袋を盗んで逃げた前科ありで、その後人間に虐待されて怪我していたところを保護したのがきっかけで飼い始めた。

不思議なもので、猫のいる家には猫が集まる。
最初に飼った黒猫だけがもらってきた猫で、その後飼った猫はすべて最初の猫が産んだ子か、保護した子である。
(黒猫は母が、子どもの頃飼っていた猫に似ていたからという理由で、ある日突然家に連れてきた。私が中学生の時だ。なんの前触れも相談もなかった……が、これが私が"猫道(ねこどう)"にハマるきっかけとなった)

先住猫の話に戻る。
猫は大変に記憶力がよく、された嫌なことはずーーーっと覚えているのだそうだ。
嫌であればあるほど、その記憶は根強いらしい。

おそらくだが、先住猫は人間に虐待を受けたことにより、今でも心から人間を信頼しきれていないのではないだろうか?(怪我をしたとき病院で、明らかに人為的に縛られた跡だと言われたので、虐待はほぼ間違いない)

それにもう8歳、老猫と呼ばれる部類に入る歳だ。今からベタベタに人になつくように180度変わるとも思えない。

この子のことも、もちろんかわいい。
しかし、私は猫を飼っている楽しみが欲しい。
それが、新たな猫を探し始めた理由である。

運命的出会い

里親募集サイトを毎日舐めるように眺めていたが、田舎の我が家から遠い場所の募集ばかり。
「ここなら行けそうかも」という場所でも、性別や条件や年齢や好みの柄が折り合わず…ということが続いた。
車で片道2時間かかる譲渡会にも足を運んだが、いいなと思う子はすでに「予約済」の札が貼られていた。

そんな状態で1ヶ月も探しただろうか。
毎日のルーティンのごとく覗いた里親募集サイトで、隣の市で、オスで、好みジャストの柄の美男子が募集されているではないか!!!
それに、子猫ではあるが「おとなしい」と書いてある。

光の速さで応募した。

とはいえ、しっかりアピールもした。
応募が殺到すると、向こうが譲渡する人を選ぶことになる。
どれだけ猫経験があり、きちんとした飼育環境で育てられるか。
ワクチンや病気のときのお世話ができるか。
捨てずに一生飼えるか。
完全室内飼いで、脱走対策をきちんとするか。
我が家の場合は先住猫がいるので、そのこともしっかりと書いた。

するとすぐに返事が来て、譲渡者に選んでもらえたのだ。
実際応募は多かったらしいが(なんせ美男子)、私が長文アピールしたことで「しっかり育ててくれそう」と思ってもらえたらしい。

というわけで、家も近かったのでとんとん拍子で話はすすみ、翌日には子猫は我が家にやってきた。
あんなに探したのに、決まるときには決まるものだ。

自分で選べるなら茶トラが欲しいと密かに思っていたので、私にとってはまさに「運命的」出会いであった。

初日はさすがに部屋の隅に隠れていたが、食欲は旺盛でトイレもしっかり使い、抱っこすれば膝の上で大人しく、すぐに喉を盛大に鳴らす甘えん坊だった。
「猫を抱っこする喜び」を久しぶりに堪能する毎日である。

日を増すごとに子猫は元気を増し、たっぷり寝て元気になれば激しく走り回り、遊びまくり、鉢植えを倒してくれたりカーテンを登ってみたりソファで爪を研いでみたり、なんかすごいことになってて「お……おとなしいんじゃなかったっけ?」って感じだが、家族の一員となった今はそれすらも愛おしい。

娘の寝かしつけ時は一緒に布団にごろりと横になり、人間に体をぴったりとくっつけて寝る。
その後私が寝に行くと、布団の中に入ってきて腕の中におさまり、腕にあごをのせてゴロゴロいいながら寝る。
最高である。

娘も生まれたときから猫と暮らしているため猫が大好きで、やれ餌をあげたい、遊びたい、撫でたい、抱っこしたい、一緒に寝たいで毎日子猫に夢中だ。

当然父母も猫好きなので、家族みんなで子猫を堪能している。全員に順ぐりに遊んで構ってもらえて、幸せなやつだ。

先住猫は今のところ、やや機嫌を損ね気味ではあるが……彼女のテリトリーに子猫は入れていないし、住み分けはできている。
ストレスにならない程度に、仲良くまではならなくてもいいから、折り合いをつけてやってほしいと願っている。

そんなわけで、私の小さな夢「膝に猫をのせて仕事をする」が叶ってしまった。

うちに来てくれてありがとう。




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