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ケムシ家族
青色の屋根のある家の庭に大きな木がありました。
その木は白いケムシのお家でした。
ケムシのシロは木の枝から生えた葉っぱをむしゃむしゃと食べています。
風で背中に生えた白い毛がふわふわと揺れました。
ああ、柔らかくておいしいな。幸せだな――
シロにはたくさんの家族がいます。同じ葉っぱから何百というケムシがうまれたからです。
シロは木のてっぺんまで来ました。何本もある足を上手に使って木を登りました。
お日様があたたかくて気持ちがいいな。
こんなところに芽が出たばかりの柔らかい葉っぱを見つけたぞ―—
シロはむしゃむしゃむしゃと葉っぱを夢中で食べました。
チチッ。チチチッ。雀がなきました。
雀はシロのすぐ近くの枝にとまりました。じっとシロを見ています。
しかし、食べることに夢中になっているシロは雀に気が付きません。
雀はシロのからだをくちばしでくわえて青色の屋根にとんでいきました。
助けて。僕、空を飛んでいる。雀に捕まってしまったー―
シロのからだは宙に浮きました。さっきまで葉っぱを食べていた木が下の方に見えました。
どんどん高くなる。こ、怖いよー―
雀は青色の屋根にとまりました。くちばしにシロをくわえたままでした。
屋根はつるつる滑ったので、雀は足に力をいれました。
それでも滑って屋根を滑り落ちそうになりました。
雀は大慌てで、空に飛び立ちました。
その拍子に、シロは雀のくちばしからポロリと落ちました。
そしてそのまま屋根に取り残されてしまいました。
シロはもといた木に戻ろうと思いました。
足を動かして屋根のふちまで来ました。
ここを下りればあの木に戻れる。でも、高くて怖いよー―
「誰か助けて、お兄ちゃん、お姉ちゃん助けてよ」
シロは木に向かって助けを求めました。
「シロ、お前の足は滑らないように出来ているから下りておいで」
「そうよ。屋根を下りて壁をつたって下りておいで」
シロの仲間は言いました。
シロは屋根から下をのぞき芝生を見ました。すると、ますます怖くなりました。
「やっぱりだめだ。下りられそうにない」
シロは下りるのをやめました。屋根の上で動かずじっとしています。
「シロ、いつまでそこにいるつもりなの?」
仲間がシロに言いました。
「お腹空いちゃうよ。こっちには葉っぱがたくさんあるよ」
シロは何も言わず、ただじっと屋根の上にいました。
「しょうがないな。よし、みんなで助けに行こう」
一番大きなケムシが言いました。
大きなケムシを先頭に、ケムシたちがぞろぞろと屋根に向かって動き出しました。
「出発だ。シロを助けに行くぞ」
「シロ、今行くから待ってるんだぞ」
ケムシたちは行進をはじめました。
青色の屋根に何百というケムシが集まりました。
屋根は雪が降ったように真っ白になりました。
「シロ、助けにきたよ。僕の背中に乗って」
一番大きなケムシが言いました。
「ありがとう。助けに来てくれて」
シロは大きなケムシの背中に乗ろうとしました。
その時、バサバサと音がしました。
見上げると屋根の上にはカラスがいました。
ケムシを食べようとやってきたのです。
カラスが来た、食べられちゃうぞ――
早く逃げないと―—
ケムシたちは大慌て。
チッチッという音がしました。
今度は雀が屋根の上に来ました。
さらにガアッガアッという音がしました。
サギが屋根に飛んできました。カラスよりも大きくて白いからだをしていました。
ケムシたちはサギを初めて見てびっくりしました。
こんな大きな鳥みたことない。大きなくちばしで僕たち食べられてしまう――
それだけではありません。ケムシを食べようと、たくさんの種類の鳥たちが屋根に集まってきました。
チッチッ、カアカア、ガアガア、ピーピー、キーキー。
鳥たちは互いに喧嘩をはじめました。
「ここは私が最初にみつけたんだ。あっちへ行け」
「お前こそあっちへ行け」
「いいや。このケムシは全部俺のものだ」
大きなケムシは言いました。
「鳥たちが喧嘩している間に逃げよう」
大きなケムシはシロを背中に乗せて屋根を下り、壁を歩いて芝生に下りました。
そのあとに他のケムシたちも続きました。
鳥たちはまだ喧嘩をしています。
「あれ、ケムシがいないぞ」
カラスが言いました。
他の鳥たちも屋根を見渡しましたが、ケムシの姿は見つかりません。
たくさんのケムシで雪のように真っ白だった屋根は、もとの青色の屋根に戻っていました。
「この中の鳥が、ケムシ全部を食べたに違いない」
灰色の鳥が言いました。
「そうだ。ズルをした鳥がいるに違いない」
鳥たちはまた喧嘩をはじめました。
ケムシたちは、もといた木に戻りまたむしゃむしゃと葉っぱを食べ始めました。
「みんな助けに来てくれてありがとう」
シロはお礼を言いました。
「無事に戻れてよかったね。さあ、大きくなるためにたくさん葉っぱを食べよう」
大きなケムシが言いました。
シロはむしゃむしゃと夢中で葉っぱを食べました。
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![Miki S.](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144137202/profile_a044f145e5997f2aaccc219c47a97704.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)