「生計を一にする」とはどのような状態なのか?
扶養親族かどうかを判定する際に「生計を一にする」といった言葉が使われます。
必ずしも同居か別居かで決まるわけでもないようですが、どのような事実をもって「同一生計」か否かが判定されるのでしょうか?
1 「生計」とは個人や家庭が生活維持のために必要な経済的基盤を指す
「生計」とは、生活を維持するために必要な収入や支出のことです。
日常生活に必要な費用(食費、住居費、光熱費、医療費など)を賄うための経済活動や収入源を意味します。
具体的な状況や文脈に応じて、その意味や使い方が異なることがあります。
2 「生計を一にする」とは収入と支出を共有して同じ家計で生活している状態をいう
「生計を一にする」とは、同じ収入や支出を共有し、生活費をともにすることを意味します。
具体的には、家族や同居人が一緒に生活し、収入や支出を一体化して管理する状態を指します。
つぎのような場面で用いられます。
(1)法律や税務の場面
①所得税の申告
配偶者控除や扶養控除の適用条件として「生計を一にする」ことが求められます。
たとえば、配偶者が専業主婦(夫)である場合、夫婦が同じ家計を共有していることが条件となります。
②相続税
相続人が被相続人と「生計を一にする」状態であったかどうかが相続税の計算に影響を与える場合があります。
たとえば、同居していた親子の場合に相続税の軽減措置が適用されるケースなどです。
③社会保険
健康保険や年金の被扶養者の認定条件として「生計を一にする」ことが考慮されます。
たとえば、親が子を扶養している場合、子が親の健康保険に加入するためには、同じ家計を共有していることが必要です。
(2)融資やローンの審査の場面
金融機関が借り手の返済能力を評価する際には「生計を一にする」家族の収入や支出を合算することが一般的です。
収入を多く計算できるため返済能力が安定していると判断されやすくなります。
(3)福祉や支援の場面
①生活保護
生活保護の申請において「生計を一にする」家族の収入や資産が考慮されます。
たとえば、同居している家族全員の収入が生活保護の支給額に影響を与える場合があります。
②児童手当
児童手当の支給条件として「生計を一にする」親子関係が求められます。
たとえば、親が子を扶養している場合、同じ家計を共有していることが条件となります。
(4)教育の場面
①奨学金
奨学金の申請において「生計を一にする」家族の収入が審査対象となる場合があります。
たとえば、親が子を扶養している場合、親の収入が奨学金の支給額に影響を与えるケースがあります。
②学費補助
学費補助の申請においても「生計を一にする」家族の収入が考慮されます。
たとえば、親が子を扶養している場合、親の収入が学費補助の支給額に影響を与える場合があります。
(5)その他の場面
携帯電話やインターネットの契約において「生計を一にする」家族が対象となる家族割引が適用される場合があります。
3 「生計を一にする」かどうかはさまざまな要因をもとに総合的に判断される
「生計を一にする」状態かどうかを判定するためには、つぎのようないくつかの要因を総合的に考慮することが一般的です。
(1)収入を共有している
夫婦や家族のそれぞれの収入を合わせて、世帯全体の支出に充てる収入源としている場合は「生計を一にする」ことになります。
また、世帯主が収入を得ていて、その収入に配偶者(専業主婦(夫))や子が依存している場合も含まれます。
(2)支出を共有している
家賃、光熱費、食費などの生活費を、同居している家族の分も含めて世帯主が支払っている場合は「生計を一にする」ことになります。
また、同居する家族が共同で負担している場合も含まれます。
(3)住居を共有している
同じ家に同居している場合は「生計を一にする」と判定される場合が通常です。
しかし、親と同居している子が自分の収入で生活費を賄っている場合などは「生計を一にする」とはいえません。
二世帯住宅で公共料金を別々に支払っているケースも同様です。
(4)経済的な依存関係にある
扶養関係にある場合、一方が他方を経済的に扶養している場合は「生計を一にする」ことになります。
たとえば、親が別居している大学生の子に生活費を送金して経済的な支援を行っているケースなどです。
(5)その他の要因
つぎのようなケースも「生計を一にする」と判定される可能性が高くなります。
・夫婦が共同で住宅を所有しているなど、共有財産がある
・家族全員が同じ健康保険に加入しているなど、共同で契約や加入をしているサービスや保険がある
「生計を一にする」状態かどうかは、具体的な状況に応じてさまざまな要因を考慮して総合的に判断されます。
「生計を一にする」ことを証明できるよう、つぎのような証拠となるものを準備しておくとよいでしょう。
・生活費や学資金、療養費などを送金している事実がわかる銀行の振込票や明細書、現金書留の控え、クレジットカードの明細など
・共同で生活費を負担していることを示す領収書やレシートなど
なお、判断する主体によって「生計を一にする」かどうかの取り扱いが異なる場合があるので注意が必要です。
不明な点や不安がある場合は「生計を一にする」か否かを判定する役所や金融機関などに直接問い合わせるとよいでしょう。
また、必要に応じて税理士やファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。