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保険料控除のしくみと税金軽減効果

生命保険や損害保険に加入していれば、10月ころから保険料控除証明書が届き始めます。
所定の計算式により算出された金額を所得金額から差し引く、所得税や住民税の控除を受ける際に必要になります。
保険料控除はどのようなしくみになっているのか、実際にどれくらいの税金軽減効果があるのかなどについてお話しします。


1 保険料控除証明書とは


保険料控除証明書は、その年に支払った保険料の金額を証明するための書類です。
保険料控除証明書に記載された金額にもとづいて、所得税や住民税の控除を受けることができます。
 
保険会社によって様式が異なりますが、つぎのような内容が記載されています。
・保険の契約者と受取人の氏名
・保険の種類
・保険期間
・適用制度
・支払った保険料の金額
・年間の支払保険料見込額
・契約している保険会社
 
通常、年末調整や確定申告の準備に間に合うよう、保険会社から毎年10月から11月にかけて郵送されてきます。
最近では、希望により電子的控除証明書(XMLファイル)を選択できる保険会社も多くなっています。
e-Taxなどで添付書類として送信でき、申請が簡単になるというメリットがあります。
万が一、保険料控除証明書を紛失してしまった場合は、保険会社に電話やウェブサイトで連絡すれば再発行が可能です。
 
なお、基本的には年末調整や所得税の確定申告を行えば、住民税における保険料控除について別途手続きを行う必要はありません。

2 生命保険料控除


生命保険料控除は、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定の金額が所得から控除されるものです。
 
2012年1月1日以後に締結した契約が対象の新制度と2011年12月31日以前に締結した契約が対象の旧制度とがあります。
旧制度の生命保険契約でも、2012年以後に更新、転換、特約の中途付加などをした場合は、以後、新制度の対象になります。

(1) 控除の種類と適用上限額


(注)国税庁ウェブサイトなどをもとに作成

(2)対象となる保険契約


①一般生命保険料控除
生存または死亡に起因して保険金が支払われる保険が対象です。定期保険や終身保険、学資保険などがあります。
保険金受取人が契約者または配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)でなければなりません。
なお、保険期間が5年未満の貯蓄保険や貯蓄共済、財形貯蓄などは対象になりません。
 
②介護医療保険料控除
病気や障害により給付が行われる保険が対象です。医療保険やがん保険、介護保険などがあります。
保険金受取人が契約者または配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)でなければなりません。
なお、保険期間が5年未満の貯蓄保険や貯蓄共済、財形貯蓄などは対象になりません。
 
③個人年金保険料控除
個人年金保険が対象で、つぎの要件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加した契約でなければなりません。
・年金の受取人が契約者(保険料負担者)またはその配偶者であること
・年金受取人が被保険者と同一人であること
・保険料払込期間が10年以上で定期に支払うこと(一時払いは不可)
・確定年金や有期年金の場合、年金受取開始年齢が原則満60歳以降で、かつ年金受取期間が10年以上であること
 
個人年金保険料税制適格特約を付加していない個人年金保険や、変額個人年金保険は、①一般生命保険料控除の対象となります。
また、個人年金保険の特約部分の保険料は、旧制度では①一般生命保険料控除の対象となります。一方、新制度では①一般生命保険料控除または②介護医療保険料控除の対象となります。

(3)控除額の計算方法


つぎの表にもとづき算出した各控除額の合計額が生命保険料控除額となります。
なお、支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。

(出所)国税庁のウェブサイト

 
新制度と旧制度の双方に加入している場合、つぎの3つのパターンで計算し、最も大きい金額を控除額とすることができます。
 
①新制度のみで計算
 
②旧制度のみで計算
 
③新旧併用で計算
旧制度と新制度のそれぞれの控除額を合計します。
ただし、所得税における生命保険料控除の適用上限額は40,000円、住民税における適用限度額は28,000円です。

(4)2025年度の税制改正で検討されている生命保険料控除の拡充内容

 
①一般生命保険料控除の限度額引き上げ
23歳未満の扶養親族がいる場合、所得税における一般生命保険料控除の適用限度額が現行の4万円から6万円に引き上げられます。
ただし、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計適用限度額は現行の12万円から変更されません。
 
②一時払いの生命保険料の除外
一時払いの生命保険料は、生命保険料控除の適用対象から除外される予定です。
 
これらの改正は、子育て世帯の支援を目的としています。
具体的な施行時期や詳細は、今後の国会審議を経て決定される見込みです。

3 地震保険料控除


地震保険料控除は、地震保険料として支払った金額を所得から控除する制度です。

(1)控除額の計算方法


その年に支払った保険料の金額に応じて、つぎに表により計算した金額が控除額となります。

(出所)国税庁のウェブサイト
 (出所)地方自治体のウェブサイトをもとに作成

 

(2)注意点

 
①対象となる保険契約
地震保険は単独で加入できず、火災保険に付帯して契約します。
地震保険料控除の対象となるのは、地震などによる損害を補償する部分の保険料のみです。
契約者や同一生計の配偶者その他の親族の所有する居住用家屋または通常必要な生活用動産を対象としている保険契約が対象です。
 
②旧長期損害保険契約
つぎの要件を満たす一定の長期損害保険契約等にもとづく損害保険料については、地震保険料控除の対象とすることができます。
・2006年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済期間の始期が2007年1月1日以後のものは除く)
・満期返戻金等のあるもので保険期間または共済期間が10年以上の契約
・2007年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの
 
③複数年分の保険料
複数年分の地震保険料を一括で支払った場合は、支払った年ごとに分割して控除を受ける必要があります。

4 保険料控除による税金の軽減効果の具体例


保険料控除によりどれくらいの税金の軽減効果があるのかを具体例で示すとつぎのとおりになります。
生命保険料および地震保険料について、それぞれの控除額を最大で使えるケースで計算してみます。

保険料控除を活用することで、所得税と住民税の両方で税金の軽減効果が得られることがわかります。
所得が高いほど軽減効果が大きくなっています。
 

 
保険料控除による実際の税金の軽減額は、支払った保険料の額や、所得税率および住民税率によって異なってきます。
とはいえ、確実に効果が見込めます。
保険料控除証明書をきちんと保管して、年末調整や確定申告の際に忘れずに提出するようにしましょう。

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