見出し画像

遺族年金の種類・手続き・今後の動向(後編)

前編からのつづきとなります。
前編ではつぎのようなことについてお話ししました。
1 遺族基礎年金
2 遺族厚生年金


3 寡婦年金と死亡一時金


子のない妻は遺族基礎年金を受け取れません。
自営業者などの夫が亡くなったときに、寡婦年金や死亡一時金を受け取れる場合があります。

(1)寡婦年金


寡婦年金は、国民年金第1号被保険者の夫が亡くなった場合に、一定の条件を満たす妻に支給される年金です。
 
つぎの要件を満たす必要があります。
 
①夫が国民年金第1号被保険者として保険料を10年以上納付していること
②夫と10年以上婚姻関係(事実婚を含む)を継続していること
③夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていたこと
④夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受け取っていないこと
⑤妻が65歳未満であること
 
支給額は、夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3に相当します。
支給期間は、妻が60歳から65歳になるまでです。
寡婦年金を受ける権利は、夫が亡くなった日の翌日から5年を経過すると時効によって消滅します。

(2)死亡一時金

死亡一時金は、国民年金第1号被保険者が亡くなった場合に、その遺族に支給される一時金です。
寡婦年金は一定期間支給されるのに対し、死亡一時金は一度きりの支給です
 
つぎの要件を満たす必要があります。
 
①亡くなった人が国民年金第1号被保険者として保険料を3年以上納付していること
②亡くなった人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていないこと
③遺族が遺族基礎年金を受け取れない場合
 
亡くなった人と生計を同じくしていた遺族で、最も優先順位の高い人に支給されます。
<第1順位>配偶者、<第2順位>子、<第3順位>父母、<第4順位>孫、<第5順位>祖父母、<第6順位>兄弟姉妹
 
支給額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
寡婦年金と死亡一時金は、同時に受け取ることはできません。どちらか一方を選択する必要があります。
死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。

4 請求手続き

(1)遺族基礎年金および遺族厚生年金


①必要書類
 
年金請求書(国民年金遺族基礎年金)
 
年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)

(出所)日本年金機構のウェブページを加工


②提出先
㋐遺族基礎年金
市区町村役場の窓口
ただし、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター
 
㋑遺族厚生年金
最寄りの年金事務所または街角の年金相談センター

(2)寡婦年金


①必要書類
 
年金請求書(国民年金寡婦年金)

(出所)日本年金機構のウェブページを加工

 
②提出先
市区町村役場の年金担当窓口(最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターでも可)

(3)死亡一時金

 
①必要書類
 
国民年金死亡一時金請求書

(出所)日本年金機構のウェブページを加工

  
②提出先
市区町村役場の年金担当窓口(最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターでも可)

5 未支給年金


未支給年金とは、年金受給者が亡くなったときに、まだ受け取っていない年金のことです。
未支給年金は、受給者と生計を同じくしていた遺族が請求できます。
 
請求できるのは、受給者と生計を同じくしていたつぎの遺族です。
もっとも優先順位の高い人が受け取れます。
<第1順位>配偶者、<第2順位>子、<第3順位>父母、<第4順位>孫、<第5順位>祖父母、<第6順位>兄弟姉妹、<第7順位>その他の3親等内の親族です。
 
死亡日において、亡くなった人が次のいずれかに該当するときに、遺族が受け取れます。
①年金を受け取る前に亡くなったとき
②年金を受け取る権利はあったが、請求しないうちに亡くなったとき
 
請求するためには、つぎの書類が必要です。
①亡くなった人の年金証書
②亡くなった人と請求する方の続柄が確認できる書類
③亡くなった人と請求する人が生計を同じくしていたことがわかる書類
④受け取りを希望する金融機関の通帳
 
手続きは早めに行うことが推奨されており、請求期間は5年以内となまっています。

6 遺族年金制度の見直しの動向


厚生労働省社会保障審議会年金部会で、20代~50代に死別した、子のない配偶者に対する遺族厚生年金の見直しが検討されています。
女性の就業の進展、共働き世帯の増加といった社会経済状況の変化や制度上の男女差を解消していく観点からのものです。
議論されているおもなポイントはつぎのとおりです。
 
(1)有期給付の導入
・60歳未満で配偶者と死別した、子のない配偶者に対する遺族厚生年金を、生活再建を目的とする5年間の有期給付とすること
・男女とも一律で導入
(現行制度の無期支給(女性は30歳以上、男性は55歳以上)の廃止)
 
(2)収入要件の見直し
・遺族厚生年金における収入要件(850万円)の見直し(廃止)
 
(3)中高齢寡婦加算や寡婦年金の一元化
・中高齢寡婦加算や寡婦年金による保障内容を男女で区別せず一元的に対応すること
・中高齢寡婦加算の段階的廃止
 
詳細は2024年の年末に明らかになり、2025年以降改正される見通しです。
 

 
遺族年金の見直しに対する不安を軽減し、将来の生活設計をより安定させるためには、対策が大事です。
遺族年金が有期給付になることに備えて貯蓄など資金準備を進めたり、保険を見直したりといったことです。
ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談し、具体的なアドバイスを受けることも有効でしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?