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「ドルコスト平均法」の仕組み、メリット、注意点

iDeCoやNISAのつみたて投資枠は、毎月一定額を積み立てることで価格変動のリスクを分散し、長期的な資産形成を目指します。
その投資手法は、「ドルコスト平均法」の考え方にもとづいています。
 
ドルコスト平均法(DCA)とは、金融商品を定期的に一定の金額で購入する投資手法です。
価格の変動に関わらず、定期的に同じ金額を投資することで、購入価格の平均を抑える効果が期待できます。
 
たとえば毎月1万円ずつ投資する場合、価格が高い時には少ない数量を、価格が低い時には多い数量を購入します。
長期的に見ると平均購入単価が低くなる可能性があるというものです。
 
ドルコスト平均法は、ほかにもさまざまな投資手法で活用されています。
 
(1)株式投資
個別株を定期的に一定額購入することで、価格変動のリスクを分散します。とくに、長期的に成長が期待できる企業の株式に対して有効です。
 
(2)投資信託
投資信託を定期的に一定額購入することで、分散投資の効果を高めます。とくに、インデックスファンドなどの長期的な成長が期待できる商品に対して有効です。
 
(3)外貨定期預金
定期的に一定額を預金することで、為替レートの変動リスクを軽減し、平均購入価格を抑えられます。
 
ドルコスト平均法は、初心者から経験者まで幅広い投資家に利用されている手法です。
リスクを分散しながら、長期的な資産形成を目指すのに適しています。
その仕組みやメリット、注意点などについてお話しします。


1 ドルコスト平均法により見込める効果

 
ドルコスト平均法の時間分散効果を具体的な事例で説明しましょう。
たとえば、ある投資家が毎月1万円を10カ月間、株式Xに投資するとします。株式Xの価格は毎月変動します。

平均購入単価は、総投資金額を総購入株数で割ることで求められます。
平均購入単価 = 100,000​ ÷ 99.78 = 1,002.20円
 
この例では、株価が変動する中で定期的に購入を続けた結果、平均購入単価が1,002.20円となりました。
株価が高いときには少なく、安いときには多く購入しています。
その結果、長期的に見ると購入単価を抑える効果が得られているのです。
 

 
つぎに、ドルコスト平均法(定時定額購入)と毎月同じ数量を購入する場合(定時定量購入)とを比較してみます。
 
【例A】ドルコスト平均法(定時定額購入)
ドルコスト平均法(定時定額購入)では、毎月一定の金額を投資します。
たとえば、毎月1万円を投資する場合を考えます。

価格が低いときには多くの口数を購入し、価格が高いときには少ない口数を購入します。
 
平均購入価格 = (購入金額)50,000 ÷ (購入量)51.03 = 989.82(円)
 
【例B】定時定量購入
一方、定時定量購入では、毎月一定の数量を購入します
たとえば、毎月10口を購入する場合を考えます。

価格が低いときも高いときも同じ数量を購入するため、購入金額が変動します。
 
平均購入価格 = (購入金額)50,000 ÷ (購入量)50.00 = 1,000(円)
 
両者を比較してみましょう。
 
ドルコスト平均法(定時定額購入)では、価格が低いときに多く購入し、価格が高いときに少なく購入します。
その結果、平均購入価格が低く抑えられます。
 
一方、定時定量購入では、価格に関係なく一定の数量を購入するため、価格が高いときに多くの金額を支払うことになります。
 
平均購入価格は、ドルコスト平均法(定時定額購入)が989.82円、定時定量購入が1,000円となっています。
この差が、長期的な収益率の違いに繋がります。
 
ドルコスト平均法は、とくに市場が変動する場合に有効であり、リスクを分散しながら平均購入価格を抑えられます。
そのため、長期的な資産形成において有利な結果をもたらすことが多くなるのです。

2 ドルコスト平均法のメリット

 
(1)リスク分散
一度に大きな金額を投資するのではなく、定期的に少額ずつ投資するため、価格変動のリスクを分散できます。
 
(2)精神的負担の軽減
市場のタイミングを気にせずに投資を続けられるため、投資初心者にも向いています。
価格が下がった時も「安く買えるチャンス」と捉えやすくなります。
 
(3)平均購入単価の低減
価格が高い時には少なく、安い時には多く購入するため、長期的に見ると平均購入単価が低くなる可能性があります。

3 ドルコスト平均法を利用する際の注意点

 
(1)損失リスクの可能性
ドルコスト平均法は、必ずしも利益を保証するものではありません。
市場が長期間にわたって下落し続ける場合、平均購入単価が下がる一方で、投資元本が減少するリスクがあります。
とくに、売却のタイミングが悪いと損失を被る可能性があります。
 
【例C】
・毎月1万円を投資する
・投資対象は、1株1,000円の株式
・相場が下がり続ける

平均購入価格 = (購入金額)50,000 ÷ (購入株数)114.17 = 437.94(円)
 
最終株価は200円なので、
評価額 = 114.17(口) × 200(円) = 22,834(円)
 
ゆえに、投資額 50,000円に対し、評価額22,834円となり、27,166円の損失となります。
 
(2)手数料の負担
定期的に購入を行うため、購入ごとに手数料が発生する場合、長期間にわたると手数料の総額が大きくなる可能性があります。
手数料の低い商品を選ぶことが重要です。
 
(3)短期的な利益を得にくい
ドルコスト平均法は長期的な資産形成を目指す手法であり、短期間で大きな利益をねらうことには向いていません。
 
(4)相場の動きに左右される
市場が一方向に動き続ける場合、とくに価格が上昇し続ける場合には、平均購入単価が高くなり利益が出にくくなることがあります。
市場が上昇し続ける場合は一括投資のほうが大きな利益となることがあります。
 
【例D】
・毎月1万円を投資する
・投資対象は、1株1,000円の株式
・相場が上がり続ける

平均購入価格 = (購入金額)50,000 ÷ (購入株数)37.28 = 1,341.20(円)
 
最終株価は1,800円なので、
評価額 = 37.28 (口) × 1,800(円) = 67,104(円)
 
ゆえに、投資額 50,000円に対し、評価額67,104円となり、17,104円の利益となります。
 
もし、1月に50,000円で100口購入していたとしたら、
評価額 = 100(口) × 1,800(円) = 180,000(円)
 
ゆえに、投資額 50,000円に対し、評価額180,000円となり、130,000円の利益となります。
 
相場が上昇し続けると、ドルコスト平均法を用いても平均購入価格が高くなり、利益が出にくくなってしまいます。
相場が上昇し続ける場合には、一度に大きな金額を投資する方が利益を得やすいことがあるのです。
 
(5)運用状況の定期的なチェック
ドルコスト平均法を利用する場合でも、運用状況を定期的にチェックすることが重要です。
市場の動向や投資商品のパフォーマンスを確認し、必要に応じて投資戦略を見直すことが求められます。
 
(6)自動積立の活用
手間を省くために、自動積立サービスを利用することが推奨されます。
定期的な投資を忘れずに続けることができます。

4 ドルコスト平均法の効果を確認する方法

 
(1)投資信託におけるトータルリターン
トータルリターンとは、投資信託の購入時から現在までの累積分配金を含む損益の合計金額を示すものです。
投資信託のパフォーマンスを総合的に評価するための重要な指標になっています。
 
トータルリターンはつぎの計算式で求められます。
 
トータルリターン = 評価金額 + 累計受取分配金額 + 累計売付金額 ― 累計買付金額
 
評価金額 : 現在の投資信託の評価額
累計受取分配金額 : これまでに受け取った分配金の合計
累計売付金額 : 一部解約などで得た金額の合計
累計買付金額 : 投資信託の購入に費やした金額の合計
 
証券会社は、保有している投資信託商品のトータルリターンを年1回以上投資家に通知しなければなりません。
証券会社のウェブサイトや取引画面で確認することもできます。
毎営業日更新されるトータルリターンを確認できるサービスを提供している証券会社もあります。
 
【例E】
・初期投資額 : 100万円
・投資時の基準価額 : 10,000円
・購入口数 : 100口(100万円 ÷ 10,000円)

 トータルリターン = (130万円 + 18万円 - 100万円) = 48万円
 
ゆえに、初期投資額100万円に対する3年間のトータルリターンは48万円となります。
 
トータルリターンは、投資期間中のすべての収益を考慮して計算されるため、投資のパフォーマンスの総合的評価に役立ちます。
 
(2)シミュレーションツールの活用
多くの金融機関や投資サイトでは、ドルコスト平均法の効果をシミュレーションできるツールを提供しています。
過去のデータをもとにしたシミュレーションを行うことで、ドルコスト平均法の効果を具体的に確認できます。

5 ドルコスト平均法が向いている人、向いていない人


(1)向いている人
 
①投資初心者
ドルコスト平均法は、投資のタイミングを気にせずに定期的に投資を行うため、投資初心者にとって始めやすい方法です。
 
②長期投資を目指す人
長期的に資産を増やしたい人に向いています。
時間をかけて投資を続けることで、価格変動の影響を平均化し、リスクを軽減できます。
 
③リスクを分散したい人
一度に大きな金額を投資するのではなく、定期的に少額ずつ投資することで、リスクを分散したい人に適しています。
 
④精神的な負担を軽減したい人
投資のタイミングを気にせずに済むため、精神的な負担が軽減されます。
市場の動向に一喜一憂することなく、計画的に投資を続けられます。
 
(2)向いていない人
 
①短期的に大きな利益を狙いたい人
ドルコスト平均法は、長期的な投資を前提としているため、短期間で大きな利益を得たい人には向いていません。
 
②まとまった資金を一度に投資できる人
まとまった資金を一度に投資できる場合、相場が上昇しているときには一括投資の方が利益を得やすいことがあります。
 
③市場の動向を常にチェックしたい人
ドルコスト平均法は定期的・一定額の投資なので、市場動向を常にチェックして投資タイミングを見極めたい人には向いていません。
 

 
ドルコスト平均法は、リスクを分散しながら長期的に資産を増やすための有効な方法です。
しかし、すべての投資家に適しているわけではありません。
自分の投資目的やリスク許容度に応じて、適切な投資方法を選ぶことが重要です。

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