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おひとりさまは早めの遺言作成が望ましい 遺産の国庫帰属はもったいない


相続人がいない私の死後、遺産はだれのものになるのでしょうか?


 

1 相続人不存在により国庫帰属する財産が増加している


日本経済新聞(2025年2月11日朝刊)の記事を引用します。
「相続人が不在で国庫に入る財産が2023年度に1015億円となったことが最高裁への取材で分かった。10年で3倍に増え、初めて1000億円を超えた。配偶者や子どものいない単身高齢者は増加しており、今後も増え続ける可能性が高い。」

(出所)最高裁への取材にもとづく日本経済新聞の記事をもとに作成

 
相続人がいない場合、その遺産は最終的には国庫に帰属します。
つぎのような要因が相まって、相続人がいない遺産が増加していると考えられます。
・少子高齢化で高齢化が進むなか、子がいない高齢者が増加
・結婚率の低下と家族構成の変化により、子をもたない家庭が増加

2 遺産の引継先がなければ最終的に国庫帰属となる


遺産の引継先はつぎのような流れで決まります。
 
(1)遺言がある場合は遺言に従う
被相続人が遺言を残している場合、その遺言の内容に従って遺産が分配されます。
遺言執行者(遺言の内容を実行する人)の指定もできます。
 
(2)遺言がない場合は法定相続人が相続する
遺言がない場合、遺産は法定相続人に相続されます。
法定相続人の範囲と順位は民法によって定められています。
 
配偶者はつねに相続人となります。
配偶者以外は、つぎの順位によります。
・第一順位 : 子(直系卑属)
・第二順位 : 両親(直系尊属)
・第三順位 : 兄弟姉妹
 
(3)法定相続人がいない場合は特別縁故者に対する財産分与の可能性がある
法定相続人がいない場合でも、被相続人に特別な縁故がある人がいれば財産分与を受ける可能性があります。
たとえば、被相続人と生計を同じくしていた人や、被相続人の療養看護に努めた人などです。
家庭裁判所に対して請求を行い、裁判所の判断によって財産分与が決定されます。
 
(4)特別縁故者もいない場合は国庫に帰属する
相続人が存在せず特別縁故者もいない場合は、遺産は国庫に帰属します。
国庫帰属とは、遺産が国家に引き継がれることです。
 
(5)国庫帰属となった遺産は国民全体の利益に役立てられる
国庫帰属となった遺産は、つぎのように処分されます。
 
①国の財源として活用
遺産が国庫に帰属する場合、その遺産は国の財源として活用されます。
具体的には、国の財政支出や公共事業の資金として使われることが多くあります。
 
②公共施設の設置・維持
遺産の一部が公共施設の設置や維持に使われることもあります。
たとえば、公園や博物館の建設・修繕などに充てられます。
 
③社会福祉のための使用
遺産の一部が社会福祉のために使われることもあります。
たとえば、福祉施設の設置や運営、社会福祉団体への寄付などです。
 
④文化財の保護・保存
歴史的・文化的価値のある遺産は文化財として保護・保存されることがあります。
 
⑤売却による資金調達
遺産の一部が売却され、その資金が他の公共事業や社会福祉活動などに使われることもあります。
 
(6)遺産の国庫帰属にはデメリットが少なくない
 
①遺産の塩漬けリスク
国庫に帰属した遺産がすぐに活用されず、長期間の保管を余儀なくされる可能性があります。
とくに不動産などは市場価値や用途が限られているため、速やかな処分が難しいケースがあります。
 
②管理・維持費用の発生
国庫に帰属した遺産の管理や維持にかかる費用が発生します。
たとえば、老朽化した建物や使用価値の低い不動産の場合、その管理費用が国の財政負担となります。
 
③遺産の有効活用の難しさ
国庫に帰属した遺産が、適切に活用されないまま放置されることがあります。適切な用途が見つからない場合、その遺産が有効に活用されないままとなる可能性があるのです。

3 遺産の国庫帰属を避けるには遺言の作成が有効である


せっかくの遺産は、塩漬けにされるよりはだれかに有効活用してもらうほうが望ましいでしょう。
また、国庫帰属となって余分なコストがかかるのも社会的損失となります。
 
遺産の国庫帰属を避けるためには、早めに遺言を作成することが非常に重要です。
つぎのようなメリットがあります。
 
(1)遺産が国庫帰属となって有効活用されない事態を避ける
遺言の作成により自分の意思を明確にし、遺産を希望通りに活用してもらえます。
 
(2)自分の希望通りに使ってもらえる可能性を高める
遺言を通じて、特定の人や団体に遺産を遺せます。
自分の意向に沿った形で遺産を引き継げるのです。
たとえば、親しい友人や恩師、支援してきた団体などに遺産を贈ることが可能になります。
また、自分が大切にしてきた思い出や記念品を、特定の人に引き継いでもらうこともができます。
 
(3)他の人の役に立つ方法で遺産を使ってもらえる可能性を高める
遺言を通じて、遺産を慈善団体やNPO、研究機関などに寄付できます。
自分の遺産が社会のために役立てられるのです。
たとえば、医療研究や教育支援、環境保護など、さまざまな分野で貢献できます。
また、地域の公共施設や文化事業に対して寄付をすれば地域社会の発展に寄与できます。
たとえば、図書館の建設支援や文化財の保護活動などです。
 

 
遺言作成は、自分の意思を明確にし、遺産を有効に活用するための重要な手続きです。
早めに遺言を作成すれば、将来の不安を軽減し、安心して過ごせることにもつながります。
遺言作成にあたっては、弁護士や司法書士などの専門家へ相談しアドバイスを受けるとよいでしょう。
 


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