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週休3日制のメリットとデメリット

週休3日制は、1週間に休日を3日設ける働き方の制度です。
週休2日制が多くの企業で採用されていますが、さらに休みを増やしてワークライフバランスの改善や生産性向上を目指すものです。
コロナ禍や少子高齢化などを背景に多様な働き方が推進されてきたなかで、注目されています。
 
政府も推進しようとしています。
「経済財政運営と改革の基本方針2021」(2021年6月18日閣議決定)から引用します。
「選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る。」
 
週休3日制とはどういうものか、週休2日制と比べたメリットとデメリットなどについてお話しします。


1 週休3日制とは


週休3日制には3つのパターンがあります。
たんに1日休みが増えるとは限らず、さまざまなパターンがあるのです。
 
(1)給与維持型
休みが1日増えますが、給与は週休2日制のときのままです。
月あたりの総労働時間が減少するので、従来の生産能力を維持するためには、生産性を向上させる施策が必要になります。
業務の省力化や業務プロセスの効率化などの実現が求められるのです。
 
(2)労働時間維持型
休みを増やす代わりに1日あたりの労働時間を増やし、週あたりの労働時間を従来と同じとします。
労働基準法では、労働時間は、1日8時間以下、週40時間以下と定められています。
週休2日制で、8時間/日 × 5日間 = 40時間/週 となっているケースでは、10時間/日 × 4日間 = 40時間 へ変更することになります。
給与は週休2日制と同じですが、1日あたりの労働時間が増え、肉体的あるいは精神的な負担が増すことになるので注意が必要です。
ちなみに、労働基準法では1日8時間以下と定められているため、1日10時間とするには変形労働時間制の手続きが必要になります。
 
(3)給与減額型
休みが増える分、給与を減額します。
給与が減ると困る従業員もいるので、希望制を採ることが一般的です。
 
なお、前述の「経済財政運営と改革の基本方針2021」にある「選択的週休3日制度」とは、希望すれば週3日休めるという趣旨です。

2 週休3日制のメリット


週休3日制のメリットはつぎのとおりです。
 
(1)従業員のメリット
 
①ワークライフバランスの実現
休みが増えるので十分な休養を取ることができ、心身のリフレッシュやストレス軽減に寄与します。
その結果、旅行や趣味、自己啓発などの時間を充実させることができます。
また、子育てや介護のため就業が難しい人も働きやすくなる可能性があります。
 
②スキルアップのための時間が増える
仕事以外のことに取り組める時間が増え、スキルアップにも活用できます。
モチベーションの向上につながる効果も期待できます。
また、副業にも取り組みやすくなるでしょう。
 
(2)企業のメリット
 
①離職率の低下や人材確保に寄与
週休3日制導入により、ワークライフバランスを重視する企業であることをアピールできます。
その結果、従業員の満足度が高まって離職率の低下につながるでしょう。
また、入社希望者が増える可能性もあり、人材確保に寄与します。
 
②従業員の生産性や企業の収益性の向上
休みが増えれば従業員の心身のリフレッシュやストレスの軽減につながります。
その結果、生産性が向上して、企業の収益性の向上も実現できるでしょう。
 
③コスト削減
休日が増えればオフィスの光熱費や通勤手当などのコストを減らすことができます。

3 週休3日制のデメリット


一方、週休3日制のデメリットはつぎのとおりです。
週休3日制を導入するには、これらのデメリットに対して適切な対策を講じることが重要です。
 
(1)従業員のデメリット
 
①業務負担の増加
労働時間維持型では1日あたりの労働時間が増えるため、業務負担が増える可能性があります。
給与維持型や給与減額型でも従来と同じ業務量をこなすために残業が増えてしまう可能性があります。
 
②給与減額
給与減額型では、給与が削減されることになります。生活に支障が生じる可能性があるほか、将来の年金受給額にも影響します。
 
③残業の増加
給与維持型や給与減額型では業務を週4日でこなさす必要があるため、残業が増える可能性があります。
 
④コミュニケーションの減少
休みが1日増えることにより、同僚とのコミュニケーションの機会が減少して業務に支障をきたす可能性があります。
 
⑤評価機会の減少
週休3日制を導入する従業員が限られたり、休みが一斉でなかったりすると、上司と接する機会が減る可能性があります。その結果、評価にばらつきが生じることも考えられます。
 
(2)企業のデメリット
 
①業務負担の偏り
週休3日制が一斉導入でなければ、従業員ごとの業務量や成果にばらつきが生じる可能性があります。その結果、従業員から不平不満が出てパフォーマンスが低下することも考えられます。
 
②従業員の不満
給与減額型では、給与が削減されることになります。その結果、従業員から不満が出たり離職率が高くなったりする可能性があります。
 
③ビジネス機会の損失
休みが増えることで取引先との連絡やコミュニケーションの機会が減少し、ビジネス機会の損失を招く可能性があります。
 
④勤怠管理の複雑化
従業員ごとに休みがまちまちになる場合は勤怠管理が複雑になり負担が増えてしまいます。

4 週休3日制が成果をもたらすためのポイント


以上のように週休3日制はメリットもデメリットもあります。
導入して成果につながるためのポイントはつぎのとおりです。
 
(1)従業員の理解と協力
週休3日制導入にあたっては、従業員が制度の目的やメリットをきちんと理解していることが重要です。従業員の協力がなければ、制度の運用はスムーズに進みません。
 
(2)業務プロセスの最適化
週休3日制導入により労働負荷が重くならないよう、無駄な作業の削減や生産性向上といった業務プロセスの最適化が必要です。
 
(3)運用ルールの明確化
労働時間、休暇日数、給与などの運用ルールが明確に定められており、従業員の納得を得られることが大事です。
 
(4)労働時間の適切な管理
週休3日制導入により労働時間が長くならないよう、労働時間や休憩時間の管理が必要です。従業員の健康とワークライフバランスへの考慮が大事です。
 
(5)フィードバックによる改善
週休3日制導入後に従業員の意見要望を収集し、改善していくことが大切です。

5 週休3日制の導入状況


厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によれば、週休3日制を含め完全週休日制より休日数が多い企業は7.5%にすぎません。
 
佐川急便は、変形労働時間制を活用して導入しています。ドライバーの労働時間を1日当たり10時間にして週40時間を確保しています。
 
日本IBMは、短時間勤務制度として週4日勤務を選択できるようにしています。給与水準は、フルタイムの場合の70%としています。
 
ファミリーマートは、親の介護など一定の理由を条件として全社員が選択できるようにしています。ただし、週休2日の場合と同様、週30時間以上の勤務が条件となります。
 
国家公務員については、2025年4月から全職員への適用が検討中であり、地方公務員は自治体ごとに導入や試行が始まっています。
 

 
昨今の労働力不足や、医療や年金などの社会保障制度の維持のためにも、多くの人々が働ける環境整備が大切です。
週休3日制を導入する企業は今後も増えていくものと考えられます。
多様な働き方の選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。

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