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子どもの教育費用はどのようにして準備すればよいか(前編)

子どもをもつ家庭にとって教育費用は悩みの種ではないでしょうか。
いまや、高校を卒業後の高等教育機関(注)への進学率は83.8%で過去最高となっています(文部科学省「令和4年度学校基本調査」)。
(注)大学、短期大学、専門学校への入学者および高等専門学校4年次在学者
 
教育費用はけっこうかかるものです。
日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」から引用します。
子ども1人当たりの入学費用と在学費用の累計額は、高校3年間で261.8万円です。
大学に入学した場合は680.7万円が加わり、高校入学から大学卒業までにかける入学・在学費用の合計は942.5万円となります。
国公立大学に入学した場合の累計金額は、743.0万円ですが、私立大学文系で951.6万円、理系では1,083.4万円となっています。
 
また、アルバイトをしている大学生は71.1%というデータもあります(「マイナビ「大学生のアルバイト調査(2024年)」)。不足する教育費用を学生本人が補てんしているケースも少なくないと推測されます。
 
進学先によっていくら教育費用がかかるかには差があるとはいえ、8割以上が高校卒業後に進学する時代です。
そのための教育費用が高額であり、相応の資金の準備が必要になることを認識する必要があります。高額の資金を一朝一夕に確保することは容易ではありません。資金の準備は子供が生まれたときから始めたほうがよいといえます。
教育費用をどのように準備すればよいのかについてお話しします。


1 預貯金や積立投資


教育資金専用口座を開設し、少しずつ貯めていく方法がもっとも確実です。子ども名義にすれば、親としてしっかり管理しなければならないという自覚が生まれ、ほかの目的に使ってしまう心配もないでしょう。
漠然と貯めるのではなく、目標額を定めて計画的にコツコツと積み立てるのがよいです。
 
①積立定期預金
計画的に毎月、決まった日に預金の積み立てをして、目標額を目指す定期預金です。
毎月の積立金額は、5,000円以上の場合は1,000円単位、10,000円以上の場合は1円単位としている金融機関が多いようです。普通預金から自動振替で積み立てることができます。
元本保証があり、預金保険の対象となっているので安心です。
 
②財形貯蓄
給与から天引きで貯蓄する制度です。勤務先にこの制度がある場合に活用できます。
貯めるお金の使いみちによって一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。

一般財形貯蓄は、使いみちは自由ですが、利息に税金がかかります。
財形住宅貯蓄は、使いみちは住宅取得やリフォームなどに限られています。利息に税金がかかりません。しかし、教育費用として、本来の目的以外で使うために解約すると、さかのぼって5年間について利息に税金がかかります。
これを裏ワザとして活用できます。
つまり、貯蓄する期間が5年を超える場合は、一般財形貯蓄よりも財形住宅貯蓄のほうがお得ということになるのです。
 
③積立投資(つみたてNISAなど)
つみたてNISAなどを活用して教育費用を準備する方法もありますが、メリットとデメリットがあるので注意が必要です。
 
(ア)メリット
 
㋐非課税で運用できる
NISAは、専用口座内で購入した金融商品から得られる運用益が非課税になります。
 
㋑高いリターンが期待できる
NISAは非課税運用期間の制限がなく、長期的に運用することができます。
 
(イ)デメリット
 
㋐リスクを理解する必要がある
投資はリスクを伴います。市場変動や経済状況によって運用益が増減するため、リスクを理解して運用する必要があります。
 
㋑運用結果次第で教育資金が不足してしまう可能性がある
運用がうまく行かない場合、元本割れするリスクがあります。

2 学資保険


学資保険は、子どもの教育費用を準備するための貯蓄型の保険です。毎月、定額の保険料を支払い、中学や高校、大学の入学時などのタイミングを設定して、まとまった資金を受け取ることができます。
 
(ア)メリット
 
㋐教育資金を着実に準備できる
毎月口座から自動的に引き落とされるので、計画的に教育資金を貯めることができます。
 
㋑万が一のときは保険料払込が免除される
親が亡くなった際には、保険料の支払いが免除となります。
この場合でも保障は継続され、予定通りの学資金を受け取ることができます。
また、子どものけがや病気に備えた医療保障特約がつく商品もあります。
 
㋒生命保険料控除により節税できる
学資保険の保険料は生命保険料控除の対象となります。年末調整や確定申告により、所得税や住民税の節税につながります。
 
(イ)デメリット
 
㋐途中解約すると元本割れのリスクがある
学資保険は途中で解約してしまうと、支払った保険料よりも解約返戻金のほうが少なくなるケースがあります。元本割れしてしまうリスクがあるのです。
 
㋑インフレに弱い
学資保険は固定利率で運用するため、あらかじめ保険料や受取金額が決まっています。そのため、物価上昇が著しいと、将来受け取る学資金よりも学費のほうが高くなっているケースもありえます。

3 児童手当


中学卒業まで支給される児童手当は、生活費に使ってしまうのではなく、教育資金に充てることをおすすめします。
児童手当は、1人当たり月額で、3歳未満は一律15,000円、3歳以上小学校修了前は10,000円(第3子以降は15,000円)、中学生は一律10,000円支給されます。
子どもが生まれたら、居住している市区町村に認定請求書を提出することで、毎年6月、10月、2月にそれぞれの前月分までを支給されます。すべて貯めておけば、中学校卒業までに200万円以上になります。

なお、児童手当は、2024年10月から拡充が予定されています。支給が高校卒業までに延長されます。第3子以降については、3歳以上高校卒業まで3万円に増えます。また、従来あった所得制限が撤廃されます。 



次回につづきます。
次回は、高等教育の修学支援新制度、奨学金、教育ローンなどについてお話しします。


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