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バランス型投資信託のメリット・デメリット

投資をする際には「卵は一つのカゴに盛るな」という格言があります。
卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落としたら全部の卵が割れてしまうかもしれません。
しかし、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としても、ほかのカゴの卵は無事で済みます。
つまり、特定の商品だけに投資するのではなく、複数の商品に分けて投資を行い、リスクを分散させた方がよいとする考え方です。
 
「バランス型投資信託(バランス型ファンド)」は、複数の株式や債券などの値動きの異なる金融商品を組み合わせます。分散効果によるリスク低減を目標としているのです。
どの商品に投資すればよいかよくわからない投資初心者向けと言われ、NISAやiDeCoの対象商品にもなっており人気が高いです。
しかし、リスクがまったくない安全な商品というわけではありません。価格が下がることもあります。
「バランス型投資信託」とはどのようなものか。メリットやデメリットは何か。
初心者であればなおさらきちんと理解して購入することが大切です。


1 バランス型投資信託の種類


バランス型投資信託は、株式、公社債、リート(不動産)などの異なる資産(アセットクラス)を組み合わせる投資信託です。
異なる資産(アセットクラス)を組み合わせることで、個々の資産の値動きが打ち消し合い、全体としてリスクを分散します。そのため、中長期の投資環境の変化に対応できるとされています。
資産配分の方法によってつぎのような種類があります。
 

(1)配分比率固定型


あらかじめ決められた資産配分比率を固定化して運用します。
たとえば、株式に50%、債券に30%、リートに20%といったように、特定の比率で資産(アセットクラス)を分散投資します。
 
定期的にリバランスと呼ばれる調整が行われます。
リバランスとは、運用中に資産(アセットクラス)の価値が変動して本来の配分比率からずれた場合に調整が行われることです。元の比率に戻すための売買が行われます。
たとえば、株式の価値が上がり比率が60%になった場合、株式を一部売却して債券を買い増し、再び50%に戻すといった操作をします。
 

(2)配分比率変動型


市場の状況に応じて資産の配分比率を柔軟に変更することが特徴です。
たとえば、株式市場が好調なときには株式の比率を高め、逆に市場が不安定なときには債券や現金の比率を増やすといった具合です。
ファンドマネージャーの判断に依存するところが大きく、運用成績はファンドによって大きく異なることがあります。
 

(3)ターゲットイヤー型


退職する年齢や資金受取開始年齢など、特定の年(ターゲットイヤー)を目標にして運用されます。この年に向けて、資産配分が自動的に調整されるのが特徴です。
運用開始時は、株式などリスクの高い資産の比率が高く設定され、資産の成長を目指します。
ターゲットイヤーに近づくにつれて、債券などリスクの低い資産の比率が増え、リスクを抑えた安定した運用にシフトします。
 

(4)リスク一定型


事前に受け入れられるリスクのレベルを設定して、そのリスクレベルを維持しながら資産配分を調整します。
市場の状況に応じて、株式や債券などの資産配分を変更します。
たとえば、株式市場が不安定な場合は株式の比率を減らし、債券や現金の比率を増やしてリスクを抑えます。

2 バランス型投資信託のメリット


バランス型投資信託のメリットはつぎのとおりです。
 

(1)リスクを分散できる


株式、債券、不動産などの異なる資産(アセットクラス)を組み合わせて投資するためリスクを分散できます。
異なる資産(アセットクラス)をバランスよく保有します。そのため、特定の資産(アセットクラス)の価格変動に依存しない安定性があります。
 

(2)運用が簡便である


投資家が個別の資産(アセットクラス)を選ぶ手間を省けます。
ファンドマネージャーが適切なバランスを保ちながら運用するため、投資家は専門知識がなくても気軽に投資できます。
 

(3)中長期の運用に適している


リスク分散と運用の簡便性を組み合わせた特徴が長期的な資産形成に役立ち、中長期の運用に適しています。
ただし、バランス型投資信託は、リスクが低い一方で、リターンが平均的なものとなるという特性があります。自身の投資目的やリスク許容度に見合った商品を選ぶ必要があります。

3 バランス型投資信託のデメリット


バランス型投資信託のデメリットはつぎのとおりです。
 

(1)手数料が割高である


投資信託の運用や管理にかかる信託報酬は割高になる傾向があります。
複数の資産(アセットクラス)を組み合わせた分散投資や、適宜のリバランスが管理コストを上昇させてしまうのです。
信託報酬はファンドの種類や運用会社によって異なりますが、一般的には年率0.1%から0.6%程度が多いようです。
各ファンドの目論見書や運用報告書で確認できるので、検討する際には必ずチェックするようにしましょう。
 

(2)資産配分比率が決められている


プロのファンドマネージャーが資産(アセットクラス)の配分を決めます。
とくに配分比率固定型は資産配分比率が固定化されているため、市況が好調なときに株式比率を高めるといった調整ができません。
 

(3)変動要因が分析しにくい


複数の資産(アセットクラス)を組み合わせているため、個々の要因がどのように影響を及ぼしているか分析が容易ではありません。

4 金融庁が指摘するバランス型投資信託の課題


金融庁は、バランス型投資信託の課題などについて指摘しており参考になります。
 
「令和4年6月30日 金融庁 投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」から引用します。
 
「バランス型投資信託の課題は、様々なタイプがあるにもかかわらず、利用者が名称に惑わされて、その特性を十分に理解できない可能性がある点である。実際に、デリバティブ等を用いて絶対的な収益の獲得を目指す銘柄が、バランス型投資信託として販売されているケースも散見された。また、販売上位にあるのは、相場変動に応じてファンドマネージャーの裁量により大きく資産配分を変動させるためにリスクの度合いが変化するタイプであって、オーソドックスな分散投資を実施するタイプは少数派である。」
 

 
NISAの拡充などにより投資信託を始める方が増えています。
相場の変動に一喜一憂することなく、長期的に安定した運用の利益を得ることが大事です。
そのためにも、自身の投資スタンスをしっかり確立し、勉強し続けていくことが必要なのです。

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