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災害に遭ったときに利用できる支援制度

わが国は、地震や水害などの災害がたびたび発生しています。
災害により被害に遭った場合に、どのような支援制度が利用できるのかについて、平時から確認しておくことは重要です。


1 罹災証明書


住宅などが被災した場合は、早めに罹災証明書(りさいしょうめいしょ)を申請することをおすすめします。
罹災証明書は、災害によって被害を受けた家屋などの被害状況を証明するための公的な書類です。災害後の生活再建に重要な役割を果たします。

(1)罹災証明書とは


罹災証明書は、市区町村が、災害の被害を受けた人の申請にもとづいて発行します。
内閣府が統一様式を提示しています。

被害の程度に応じて、つぎの6つの区分で認定されます。

(出所)内閣府防災情報のページ「災害に係る住家の被害認定」

このほか、水害の場合は床上浸水および床下浸水、火災の場合は全焼および半焼の区分があります。

(2)受けられる支援


罹災証明書を取得することで、つぎのような支援を受けられます。
 
①公的支援
・固定資産税や国民健康保険料などの減免
・被災者生活再建支援金や義援金などの支給
・公的書類の手数料免除
・仮設住宅や公営住宅などへの優先入居
・災害復興住宅融資 など
 
②民間支援
・金融機関からの有利な条件での融資
・私立学校の授業料減免
・災害保険の保険金受給 など

(3)対象となる災害


一般的には、災害対策基本法第2条第1項に定める、つぎのような災害です。
・暴風
・竜巻
・豪雨
・豪雪
・洪水
・崖崩れ
・土石流
・高潮
・地震
・津波
・噴火
・地滑り
・その他の異常な自然現象
・大規模な火事
・爆発

(4)発行手続き

 
①申請
市区町村に罹災証明書の発行を申請します。
申請者は家屋の所有者または居住者で、委任状があれば第三者でも申請可能です。
申請方法や必要書類は市区町村によって異なる場合があるので、事前に確認しましょう。
必要書類の一例を示すとつぎのとおりです。
 
・罹災証明書交付申請書 : 自治体の窓口やウェブサイトから入手できます。
・本人確認書類 : マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、保険証など。
・被害状況を示す書類 : 被害建物の全景や被害状況がわかる写真、修繕見積書など
・委任状(必要な場合) : 代理人が申請する場合に必要です。
 
②調査
市区町村の調査員が現場の被害状況を調査します。
外観の目視調査や家屋の傾きの測定が行われます。
 
③発行
調査結果に基づき、市区町村が罹災証明書を発行します。

(5)申請期限


市区町村によって異なります。
災害発生から2~3カ月以内に申請する必要があるとするところが多いようですが、1カ月や6カ月などとするところもあります。
災害の規模や状況によっては、申請期限が延長されることもあります。
詳細はお住まいの市区町村に確認するとよいでしょう。

(6)被害状況を証明するための写真撮影のポイント

 
①建物の全景を撮影
建物の四方向(正面、背面、左右)から撮影し、全体の被害状況がわかるようにします。
 
②被害箇所の詳細を撮影
壁のひび割れ、窓ガラスの破損、屋根の損傷など、具体的な被害箇所をアップで撮影します。
被害箇所ごとに遠景と近景の2枚セットで撮影するとよいです。
 
③浸水被害の記録
浸水した場合は、メジャーを使って水が浸かった深さを測定し、その様子を撮影します。
測定場所がわかるように遠景と、メジャーの目盛りが見えるように近景の写真を撮ります。
 
④内部の被害状況を撮影
家の内部も撮影し、床や壁、家具などの被害状況を記録します。
 
⑤注意点
・被害状況を正確に伝えるため、片付ける前に撮影を行いましょう。
・写真に日付を記録するか、撮影日時がわかるようにしておくとよいです。
・同じ被害箇所でも、異なる角度から撮影することで、より詳細な状況を伝えられます。

(7)類似の証明書

 
①罹災届出証明書
罹災証明書を申請した事実を証明するもので、即日発行されます。
 
②被災証明書
家屋以外の家財や店舗、工場などの被害を証明するもので、即日発行されます。
ただし、市区町村によって取り扱いが異なる場合があるので確認が必要です。

2 被災者支援に関する各種制度


内閣府の防災情報のページの「被災者支援に関する各種制度の概要」に、さまざまな支援制度が掲載されているので参考になります。

以下、おもな支援制度をご紹介します。

3 住宅の応急修理


住宅の応急修理は、災害救助法にもとづくものです。
災害で住居が半壊または半焼し、そのままでは居住できない場合に、自治体が必要最小限度の修理を行う制度です。
被災者が元の住居に引き続き住むことができるようにすることを目的としています。

(1)対象者
つぎのいずれにも該当する人です。
・災害により住居が大規模半壊、中規模半壊、半壊(半焼)、準半壊のいずれかの被害を受けた。
・自らの資力では応急修理をできない、または災害のため大規模な補修を行わなければ居住することが困難な程度に住家が半壊した。

(2)修理の範囲
居室、台所、トイレなど、日常生活に必要不可欠な最小限度の部分を応急的に修理します。

(3)費用の限度額(1世帯あたり、2023年4月基準)
・大規模半壊、中規模半壊、半壊(半焼)の世帯 : 70万6千円以内
・準半壊の世帯 : 34万3千円以内

(4)修理の期間
災害発生の日から3カ月以内に完了。
ただし、国の災害対策本部が設置された災害においては6カ月以内に完了。

(5)手続きの流れ 

①罹災証明書の取得
 
②市区町村へ申請書類を提出
・住宅の応急修理申込書(市区町村の窓口やウェブサイトで入手可能)
・罹災証明書
・被害状況が分かる写真(修理前の状態を撮影)
・修理見積書(修理業者から取得)
・資力に関する申出書
 
③市区町村の審査
 
④市区町村が修理業者に修理依頼書発行、請書を徴求
 
⑤修理の実施
市区町村が指定する業者が修理を行います。
修理費用は市区町村が直接業者に支払います。
 
市区町村が業者と契約を結ぶため、申請者が直接契約しないようにします。
また、被害状況を正確に伝えるために、修理前、修理中、修理後の写真を撮影しておきましょう。

4 被災者生活再建支援制度


被災者生活再建支援制度は、自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた世帯を支援するための制度です。
被災者が生活を再建するための支援金を提供し、被災地の復興を促進することを目的としています。

(1)対象者
自然災害により
①住宅が全壊した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯(中規模半壊世帯)

(2)支援金の支給額

(出所)内閣府防災情報のページ「被災者生活再建支援制度の概要」

(3)支援金の申請手続き

①罹災証明書の取得
 
②市区町村へ申請書類を提出
・支援金支給申請書
・住民票等
・罹災証明書等
・預金通帳の写し
・その他関係書類:契約書(住宅の購入・補修、借家の賃貸借等)
 
③市区町村の審査と支給

(4)申請期間
①基礎支援金 : 災害発生日から13月以内
②加算支援金 : 災害発生日から37月以内

5 その他の支援制度


前述したとおり、内閣府の防災情報のページの「被災者支援に関する各種制度の概要」に、さまざまな支援制度が掲載されています。

(1)災害弔慰金
災害で亡くなった人の遺族に対して支給されます。
支給額はつぎのとおりです。
・生計維持者が亡くなった場合 : 市町村条例で定める額(500万円以下)
・その他の人が亡くなった場合 : 市町村条例で定める額(250万円以下)

(2)災害障害見舞金
災害による負傷、疾病で精神または身体に著しい障害が出た人に対して支給されます。
支給額は(1)災害弔慰金と同様です。

(3)災害援護資金
災害により負傷または住居、家財の損害を受けた人に対して、生活の再建に必要な資金を低利または無利子で貸し付けます。
所得制限があります。

(4)災害救助法による支援
応急仮設住宅の提供、生活必需品の支給、医療・保健サービスなどです。
 
ほかにも、税金や社会保険などの納期限の延長や減免、高校や大学などの授業料や入学金の減免などがあります。
 

 
以上の支援制度は、被災者が迅速に生活を再建するために重要な役割を果たします。
詳細については、お住まいの市区町村の窓口や公式ウェブサイトなどで、平時のうちから確認しておくことをおすすめします。

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