「ペットの終活」はどのように進めるか?
一般社団法人ペットフード協会「令和5年全国犬猫飼育実態調査」から引用します。
全国の飼育頭数は、犬が約684.4万頭、猫が906.9万頭となっています。
平均寿命は、犬が14.62歳、猫が15.79歳です。いずれも2010年以降伸長傾向にあります。
年齢別構成比では、犬は16歳以上が2019年以降増加傾向にあります。猫は平均年齢が過去5年間で最も高くなっています。
ペットも高齢化が進んでいるといえます。
ペットの長寿化により、ペットをめぐる終活を考える必要性が高まっています。
高齢のペットの介護や病気などへの対応、飼い主が高齢などにより世話ができなくなったときの対応といったことです。
ペットの終活はどのように進めればよいのかについてお話しします。
1 ペット保険の加入検討、見直し
ペット保険は、ペットが病気やケガをした際の治療費を補償する保険です。
ペットの長寿化に伴い、病気やケガのリスクが高まります。
動物病院への通院は全額自己負担であり、動物病院によって治療費はまちまちです。
高額になる可能性がある医療費に備えてペット保険への加入は検討に値します。
すでに加入している方は、補償内容がペットの現在の健康状態に合っているかを確認し、必要に応じてプランを見直ことが大事です。
(1)ペット保険の概要
①補償内容
・通院費用 : 動物病院での診察や治療にかかる費用
・入院費用 : ペットが入院した際の費用
・手術費用 : 手術にかかる費用
②補償割合
保険会社によって異なりますが、一般的には50%から70%の範囲で設定されています。
たとえば、治療費が10,000円の場合、補償割合が70%なら7,000円が保険金として支払われます。
③特約
ペット賠償責任特約や車椅子作成費用、火葬費用など、基本補償に加えて特約を付けることで、より充実した補償内容にすることができます。
(2)ペット保険の選び方
①補償内容の確認
自分のペットに必要な補償内容かどうかを確認し、適切なプランを選びましょう。
とくに、もっとも利用可能性が高い通院補償が含まれているかどうかは重要です。
②保険料と補償割合のバランス
補償割合が高いほど保険料も高くなります。
予算と補償内容のバランスを考慮して選びましょう。
③加入条件
ペットの年齢や健康状態によって加入条件が異なる場合があります。
④保険金の請求方法
窓口精算が可能な保険会社もありますが、多くの場合は後日精算となります。
(3)ペット保険の見直し
ペットが高齢になったときに、既存のペット保険を見直すポイントはつぎのとおりです。
①補償内容の確認
高齢のペットは病気やケガのリスクが高まるため、入院や手術の補償が充実している保険が望ましいです。
とくに、慢性疾患やがんなどの治療費がカバーされているか確認することが大切です。
②保険料の負担
年齢が上がると保険料も高くなることが多くなります。
見直す際は、保険料と補償内容のバランスを考え、無理のない範囲で最適なプランにしましょう。
③継続可能な保険
加入している保険が終身継続できるか確認しましょう。
多くの保険会社は、一定の年齢を超えると新規加入が難しくなるため、既存の保険を継続することが重要になります。
④特約の追加
必要に応じ、高齢ペット向けの特約の追加を検討しましょう。
特約にはつぎのようなものがあります。
㋐介護用品補償
高齢ペットの介護に必要な用品(例:介護用ベッド、車椅子、おむつなど)の購入費用を補償します。
㋑定期健康診断補償
年に数回の定期健康診断の費用を補償する特約です。早期発見・早期治療が可能になります。
㋒慢性疾患補償
糖尿病や腎臓病など、長期にわたる治療が必要な慢性疾患の治療費を補償します。
㋓ホスピスケア補償
終末期ケアにかかる費用を補償する特約です。ペットが快適に過ごせるよう、専門的なケアを受けることができます。
㋔リハビリテーション補償
手術後や病気後のリハビリテーション費用を補償します。理学療法や水中療法などが含まれます。
⑤保険会社の変更
現在の保険に不満がある場合は、ほかの保険会社への乗り換えも検討しましょう。
ただし、加入年齢の制限や既往歴の影響を受けることがあるため、事前に確認が必要です。
⑥定期的な見直し
ペットの健康状態や生活環境の変化に応じて、定期的に保険内容を見直すことが大切です。
必要に応じて、保険会社に相談して最適なプランを提案してもらいましょう。
2 ペットのエンディングノート
飼い主がペットの世話をできなくなった場合に備えて、引き取り先の確保は重要です。
信頼できる親族や友人、知人に事前にお願いできれば安心です。
里親募集サイトなどを活用して新しい飼い主を探したり、ペット支援団体などに引き取ってもらったりする方法もあります。
引き取り先に、ペットの健康状態、お世話の方法、食事、好きな遊び、飼い主の希望などの情報を伝えられると安心です。
そうした情報を記載するためのペット用のエンディングノートがあります。
ペット用のエンディングノートに記載する内容の例はつぎのとおりです。
(1)食事
・いつも食べている食事内容(商品名も)
・食事の作り方
・1日の食事回数と食事量、与える時間
・おやつの内容、1回の量、1日の回数、与える時間
・与えてはいけない食べ物(アレルギーや体質、危険な食材)
・好きな食べ物
(2)医療
・既往歴
・持病や治療中の病気
・投薬中の薬、投薬方法
・アレルギーの有無
・予防接種の記録(種類、接種した年月日)
・かかりつけの動物病院の情報(病院名、住所、電話番号)
・ペット医療保険の加入の有無、加入先、証書の保管場所
(3)生活習慣
・トイレの習慣、ペットシーツや猫砂などの商品名
・散歩の時間、回数、コース
・入浴のペース
・寝ている時間帯
・必要なケア
・トリミング(頻度、美容室名・住所)
・好きな遊びや過ごし方、おもちゃ
・嫌いなこと、苦手なこと、苦手なもの
・くせ
(4)その他
・ペットのお世話を頼みたい人の名前や住所
・飼育資金がある口座や預け先
・ペットが亡くなったときの埋葬の希望
3 老犬・老猫ホーム
老犬・老猫ホームは、ペットが最後まで快適に過ごせるようにサポートする施設です。
飼い主の負担を軽減し、ペットにとっても安心できる環境を提供します。
飼い主がペットの世話を続けることが難しくなった場合や、ペットが認知症などの病気を患った場合に利用されます。
(1)老犬・老猫ホームの特徴
①介護サービス
・トイレ、食事、移動、入浴の介助
・運動による認知能力のケア
・爪切りや耳掃除などのケア
②健康管理
・獣医の往診や投薬
・必要な栄養素を重視した食事
・ケージを使わないのびのびとした生活環境
③安全管理
・転落や転倒が起こりづらい間取り・構造
・脱走防止策
・性格ごとのグルーピングによるケンカやケガの防止
(2)利用方法
①入所のタイミング
・ペットが高齢化し、日常生活に支障が出始めたとき
・飼い主が介護を続けるのが難しくなったとき
②費用
・1年間で約40万円から50万円が目安
・入所金や月々の利用料金がかかります。
③施設の選び方
・施設の設備やスタッフの対応を確認
・口コミや評判を参考にする
4 ペット信託
ペット信託は、飼い主が万が一の事態に備えて、ペットの飼育費用や世話を信頼できる人や団体に託す制度です。
(1)ペット信託の概要
①契約の当事者
・委託者 : ペットの飼い主
・受託者 : 信託財産(金銭)を管理する者
・受益者 : 実際にペットを飼育する者(個人や施設)
②信託契約の内容
飼い主が信頼できる第三者(受託者)と契約を結び、ペットの飼育費用を管理してもらいます。
飼い主に万が一のことがあった場合、受託者が信託財産を使ってペットの飼育を行う受益者に支払います。
(2)メリットとデメリット
①メリット
・飼い主が万が一の際に、ペットの適切な世話が保証されます。
・信託財産はペットのためにしか使われないため、安心して託せます。
・必要に応じて、信託監督人を設定し、信託財産の利用状況をチェックできます。
②デメリット
・信託契約書の作成や信託監督人の報酬など、初期費用や管理費用がかかります。
・信託契約の手続きが複雑で、専門家のサポートが必要な場合があります。
(3)ペット信託の始め方
①ペットの世話を任せられる信頼できる人や施設を見つけます。
②専門家に依頼して信託契約書を作成し、公証役場で公正証書にします。
③銀行で信託専用の口座を開設し、飼育費用を入金します。
5 ペットの飼育費用
ペットの世話をほかの人や団体に託すには、費用がどれくらい必要になるのか知っておき、十分に準備することが大事です。
前述の一般社団法人ペットフード協会「令和5年全国犬猫飼育実態調査」から引用します。(犬 飼育・給餌実態と支出/猫 飼育・給餌実態と支出)
生涯必要経費は、犬は244.6千円、猫は149.8万円です。
1カ月当たり支出額は、犬は16,156円、猫は10,171円です。
いずれも2018年以降でみると、年々増加傾向にあります。
ペットの終活は、ペット、飼い主ともに安心して老後を迎えるために必要になります。
早めに準備を始めることが大事です。
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