借地権付き住宅の購入はおすすめか否か
マイホームを取得する際、土地所有権付きの住宅が一般的です。
しかし、都市部など土地が高い地域では高額すぎて手が届かないケースもあります。
そうしたなか、地主から土地を賃借する借地権付き住宅が、土地所有権付き住宅に比べると少ないですが、一定の需要があります。
土地を購入する必要がないため、初期費用が抑えられ、土地の固定資産税などの負担もないというメリットがあるからです。
借地権とは、土地を所有せずにその土地を借りて使用する権利のことです。
借地権は、普通借地権と定期借地権に大きく分けられます。
普通借地権は、契約期間が30年以上で、更新が可能な借地権です。
一方、定期借地権は契約期間が50年以上で、更新がないものです。
借地権とはどのようなものか、借地権付き住宅のメリットとデメリット、注意点などについてお話しします。
1 借地権の種類
借地権はつぎのように分類されます。
1992年7月31日以前の契約には原則として旧借地法の借地権が適用されます。
旧借地法の借地権と現行の借地借家法の借地権とのおもな相違点はつぎのとおりです。
また、普通借地権と定期借地権とのおもな相違点はつぎの表のとおりです。
2 定期借地権の概要
定期借地権は、一定の期間だけ土地を借りる権利のことです。
契約期間が終了すると、借地権は終了し、土地は地主に返還されます。
定期借地権には、つぎの3種類があります。
定期借地権は、1992年に施行された借地借家法にもとづいて創設されました。
地主と借地人の双方にとってメリットがある制度として、土地の有効利用を促進するために導入されたのです。
従来の借地権は、契約期間が終了しても更新が可能であり、地主が土地を返してもらうのが難しい状況が続いていました。
一方、定期借地権は契約期間が終了すると確実に土地が返還されます。
地主にとっても借地人にとっても公平な制度として導入された経緯があります。
(1)一般定期借地権
借地期間を50年以上とすることを条件として、つぎの3つの特約を書面で契約をすることで成立します。
なお、必ずしも公正証書である必要はありません。
㋐契約の更新をしない
㋑建物再築による期間の延長をしない
㋒期間満了による建物の買い取り請求をしない
旧法借地権のもとでは、この3つの特約はいずれも借地人に不利な契約として、借地法上は無効とされていました。
新借地借家法の定期借地権に限りこの特約が有効とされています。
この3つの特約により、借地権は更新されずに終了し、土地は更地で返還されることになるのです。
ただし、地主と借地人の双方が合意すれば地主が建物を買い取ることは可能です。
また、建物が滅失した場合、借地人は建物を再築できますが、存続期間満了後は更地にして土地を返還しなければなりません。
なお、建物の用途制限はなく、住宅用以外にも店舗や事務所などとしても利用できます。
(2)事業用定期借地権
もっぱら事業の用に供する建物の所有を目的にしており、賃貸用であっても居住用を目的とする場合は利用できません。
(3)建物譲渡特約付借地権
借地権設定後30年以上経過した日に、地主が借地人から借地上の建物を買取ることを約束する借地権です。
借地権設定時に、借地権消滅のために30年以上経過した日に相当の対価で借地上の建物を地主に譲渡する旨の特約を結びます。
建物譲渡特約付借地権を設定する場合は、書面による必要はなく口頭でも可能です。
しかし、将来の紛争予防のためにも書面による契約書をつくることが望ましいといえます。
地主が建物を買い取る場合でも、借地人または借家人がそのまま建物を利用したいというケースもあるでしょう。
その場合、借地人または借家人が地主に請求をすることにより、期間の定めのない賃貸借が成立したものとみなされます。
3 借地権の地代と一時金(権利金、保証金、前払地代)の有無と相場
(1)地代
住宅用の借地権の地代は、一般的に土地の更地価格の2%〜3%程度もしくは固定資産税の3~5倍が目安とされています。
①地代の計算方法
㋐公租公課基準法 : 固定資産税や都市計画税を基準に地代を算出する方法
㋑路線価基準法 : 路線価を基準に地代を算出する方法
㋒期待利回り基準法 : 土地の期待利回りを基準に地代を算出する方法
㋓取引事例比較法 : 周辺地域の取引事例を基準に地代を算出する方法
②地代の相場の調べ方
㋐地元の不動産業者に相談
㋑インターネット検索(不動産関連のウェブサイトなどに掲載の地代の相場情報)
㋒公的機関のデータ(国土交通省や地方自治体のウェブサイトで公開されている地価情報)
③地代の減額請求
地代の減額請求は、地代が不相当であると借地権者が感じた場合に行えます。
具体的には、つぎのような場合に認められることがあります。
なお、地代を一定期間減額しないという特約があっても請求できます。
㋐経済状況の変化 : 経済状況が大きく変動し、地代が不相当になった場合
㋑周辺環境の変化 : 周辺の土地の価値が下がった場合
㋒税金の変動 : 固定資産税や都市計画税などの公課が減少した場合
地代の減額請求を行う際には、まず地主と話し合います。
合意が得られない場合は裁判所に調停や訴訟を提起できます。
(2)一時金(権利金、保証金、前払地代)
前払地代とは、借地契約の期間中に支払う地代の一部または全部を契約時に一括で支払う方式です。
権利金とは、借地権を設定する際に借地人が地主に対して支払う一時金です。借地権の設定に伴う対価として支払われるもので、返還されないことが一般的です。
保証金とは、借地契約の履行を保証するために借地人が地主に預ける金銭です。契約期間終了後、借地人が土地を返還する際に、契約違反がなければ返還されます。
4 借地権付き住宅を購入する際のメリット、デメリット、注意点
(1)メリットとデメリット
(2)注意点
①契約内容の確認
契約期間、更新条件(普通借地権の場合)、地代見直し時期、再建築やリフォームの条件など、契約内容をしっかり確認しましょう。
②地主との関係
地主との良好な信頼関係を築き維持することが大切です。
更新時(普通借地権の場合)や地代見直し時、再建築やリフォームを行う際などにスムーズな交渉ができるようにしておきましょう。
③将来の計画
契約期間終了後の対応や、建物の老朽化に伴う修繕費用など、将来的な計画を立てておきましょう。
契約期間終了後に住み替えを考えている場合は資金計画を立てておく必要もあります。
5 借地権付き住宅がおすすめの人、おすすめでない人
(1)借地権付き住宅がおすすめの人
①コストを抑えたい人
土地を購入する必要がないため、初期費用が抑えられます。
とくに都市部で土地の価格が高い場合、借地権付き住宅は経済的な選択肢となります。
②短期的な住居計画をもつ人
将来的に転勤や引っ越しの予定がある場合、借地権付き住宅は柔軟な選択肢です。
契約期間が終了すると土地を返還するため、長期的な住居計画が不要です。
③税金の負担を軽減したい人
土地の固定資産税や都市計画税は地主が負担するため、借地権付き住宅の購入者はこれらの税金を支払う必要がありません。
(2)借地権付き住宅がおすすめでない人
①長期的な安定を求める人
借地権付き住宅は契約期間が終了すると土地を返還する必要があるため、長期的な住居計画をもつ人には不向きです。
②自由な増改築を希望する人
増改築や売買には地主の許可が必要な場合が多く、自由にリフォームや売却ができないことがあります。
③地代の支払いを避けたい人
毎月または年に一度、地主に地代を支払う必要があります。これが負担に感じる人には不向きです。
借地権付き住宅の購入を検討する際には、メリットとデメリット、注意点を十分に考慮する必要があります。
そして、自分のライフプランに合うか検討することが大切です。
具体的には、不動産業者や専門家に相談するとよいでしょう。