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利用していない不動産を買い取りたいと言われた⇨今が「売り時」か判断する


現在使っておらず、当面使う予定もない不動産を売ってほしいと不動産業者から申出を受けました。
売ろうか断わろうか判断に迷っていますが、どうすればよいでしょうか?




(1)申出通り売却したら得をするか損をするかをよく検討して判断する


不動産を売却するかどうかは、つぎのようなポイントを検討して判断するとよいでしょう。

①買い取り価格の妥当性(その1)・・・市場価値の評価


現在の不動産市場の動向を調査し、物件の市場価値を正確に評価します。
近隣の類似物件の価格を調べて比較することにより市場価格を把握できます。
 
不動産の市場価値や相場を自分で調べるにはつぎのような方法があります。
 
㋐国土交通省の不動産情報ライブラリ
国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」では、全国の不動産取引価格や地価、住宅市場の動向などを閲覧できます。
具体的な取引事例を確認できるため、相場を把握するのに役立ちます。
 
㋑全国地価マップ
一般財団法人資産評価システム研究センターが提供する「全国地価マップ」では、地域ごとの地価情報を確認できます。
公示地価や都道府県地価調査のデータをもとにしており、地図上で直感的に地価の状況を把握できます。
 
㋒レインズマーケットインフォメーション
不動産業者が加盟するレインズ(指定流通機構)が提供する「マーケットインフォメーション」もあります。
地域ごとの成約件数や平均価格、取引期間などを詳細に分析・閲覧できます。
 
㋓不動産ポータルサイト
大手不動産業者などの不動産情報サイトを利用して、近隣エリアの販売中の物件価格を比較することも有効です。

②買い取り価格の妥当性(その2)・・・将来の価値


その不動産について将来的に価値が上がる可能性があるかどうかを考慮します。
価値が上がる可能性が高ければ、いまは売却しないという選択になるケースもありえます。
 
不動産の将来的価値を判断するために、つぎのような情報を収集します。
 
㋐地域の開発計画
地方自治体のウェブサイトや都市計画局の資料を確認し、地域の開発計画やインフラ整備の予定を調べます。
新しい交通機関の建設や商業施設の開発などが予定されている場合、その地域の不動産価値が上昇する可能性があります。
 
㋑人口動態
総務省や地方自治体が提供する人口統計データを確認し、地域の人口増加あるいは減少の傾向を把握します。
人口が増加している地域は、将来的に不動産価値が上がる可能性が高いです。
 
㋒経済状況
地域の経済状況や雇用状況を調査します。
地域の経済が成長している場合、雇用機会が増え、住民の購買力が向上するため、不動産価格が上昇することがあります。
 
㋓周辺環境
学校、病院、公園、ショッピングセンターなどの周辺環境を確認します。
こうした施設が充実している地域は住みやすさが評価され、不動産価値が高まる可能性があります。

③今後の維持費用との比較による損得


不動産を保有し続ける場合の維持費用(固定資産税、管理費、修繕費など)と売却による利益とを比較し、損得を検討します。

④今後の収益性との比較による損得


その不動産を賃貸することで得られる収益と、売却することで得られる収益を比較します。
賃貸収入が安定していれば保有するほうが有利なケースもあります。
 
なお、売却利益を計算する場合は、譲渡所得税など売却により発生する税金も考慮する必要があります。
具体的な計算は税理士に相談して、税金の影響を正確に把握するとよいでしょう。

(2)合わせて対象不動産や所有者(売主)の個別の事情も考慮する必要がある


いま売却することが適切かどうかは個人的な状況も踏まえて判断する必要があります。

①対象不動産に売却することが有利または不利になる個別事情がある


たとえば、隣地と一体での買い取り申出がある場合、土地の利用価値が高まるため、価格が上昇する可能性があります。
 
【例】つぎの図で、甲土地は、乙土地と一体で売却すれば、単独で売却するよりも土地の利用価値が高まるため価格上昇が期待できます。

逆に乙土地の所有者が売り急いでいる場合などは売却価格を下げる要因となりかねません。

②不動産所有者に売却することが有利または不利になる個別事情がある


たとえば、不動産を売却する際に発生する譲渡所得が原因で不動産所有者(売主)に不利になるケースがあります。
 
㋐社会保険料の増加
譲渡所得が発生すると、翌年の国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料が増加する可能性があります。
 
㋑扶養から外れるリスク
譲渡所得が発生すると、扶養家族の年間収入が増加し、扶養から外れて扶養控除が受けられなくなる場合があります。
 
㋒奨学金の受給制限
譲渡所得により親の年収が奨学金の所得制限を超えると、子どもが奨学金を受けられなくなる可能性があります。
 
㋓税金の増加
譲渡所得が発生すると、所得税や住民税が増加する可能性があります。
高額な譲渡所得が発生した場合、累進課税により税率が上がることがあります。
 
ただし、譲渡所得の特例や控除の活用により負担が軽減されるケースもあるので合わせて検討するとよいでしょう。
 

 
以上のようなポイントを総合的に考慮して、最適な判断を下すことが大切です。
必要に応じてセカンドオピニオン(地元の不動産業者など)から情報を得て参考にする方法もあります。
さらに不動産の専門家や税理士、ファイナンシャル・プランナーなどからアドバイスを受けると、より適切に対処できるでしょう。

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