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紙通帳からデジタル通帳の時代へ
銀行などの金融機関に預金口座を開設すると自動的に預金通帳を手渡される。そんな当たり前のことが変化してきています。
預金通帳つまり紙通帳を発行する際や、長期間利用がない口座について手数料がかかる金融機関が増えてきているのです。
紙通帳がないと不便ではないのか。
ネットバンキングのデジタル通帳は紙通帳の代わりとなるのか、安全なのか。
そのような点についてお話しします。
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1 紙通帳の有料化
紙通帳の有料化は、金融機関がデジタル化の推進や経費削減の一環として進めています。
多くの金融機関が紙通帳の発行時や繰り越し時に手数料を導入するようになってきました。
たとえば、三菱UFJ銀行や三井住友銀行では、年間550円(税込)の手数料がかかります。みずほ銀行では、新規発行や繰り越し時に1冊あたり1,100円(税込)の手数料が必要です。
ただし、つぎの条件に該当する場合、手数料が免除されるケースがあります。
・18歳未満または70歳以上の個人
・2022年3月31日以前に開設された口座
そして金融機関は、紙通帳の代わりにデジタル通帳を推奨しています。デジタル通帳については後述します。
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2 未利用口座に対する手数料
未利用口座とは、長期間利用されていない口座です。
多くの金融機関が、2年以上利用されていない口座に対して手数料を導入しています。
たとえば、三菱UFJ銀行では、2021年7月1日以降に開設された普通預金口座で、2年以上利用がない場合、年間1,320円(税込)の手数料がかかります。三井住友銀行やみずほ銀行も同様の手数料を導入しています。
手数料をかける目的は、つぎのとおりです。
①不正利用の防止
長期間利用されていない口座は、不正利用のリスクが高まります。未使用口座の整理が促進されるよう、手数料を導入するのです。
②管理コストのカバー
口座を維持するためにはシステム費用や管理コスト(毎年印紙税200円)がかかります。そうしたコストをカバーするために手数料が導入されています。
ただし、つぎの条件に該当する場合、手数料が免除されるケースがあります。
・銀行にほかの預かり金融資産(定期預金、外貨預金、投資信託など)がある場合
・銀行で借入がある場合
長期間利用していない口座に手数料が発生しないよう、定期的に口座の利用状況を確認することが重要です。
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3 デジタル通帳とは
デジタル通帳とは、紙通帳に代えて、スマートフォンやパソコンなどで口座を管理するものです。
Eco通帳、ウエブ通帳、ネット通帳といった名称が使われることもあります。
(1)デジタル通帳のメリット
デジタル通帳にはつぎのようなメリットがあります。
①手数料がかからない
紙通帳と異なり、デジタル通帳は手数料がかかりません。
②いつでもどこでも確認可能
スマートフォンやパソコンから、24時間いつでも入出金明細を確認できます。金融機関の窓口やATMの営業時間に縛られず、必要なときにすぐにアクセスできるのは大きな利点です。
③環境に優しい
紙を使用しないため、環境保護に貢献できます。エコ意識の高い方にはとくにおすすめです。
④紛失や破損の心配がない
紙通帳は紛失や破損のリスクがありますが、デジタル通帳ならその心配がありません。データは金融機関のシステム内に安全に保管されています。
⑤過去の取引履歴が簡単に検索できる
デジタル通帳では、過去の取引履歴を簡単に検索できます。特定の取引を探す際に便利です。
⑥通知機能
入出金の際に通知を受け取ることができるため、不正な取引があった場合にもすぐに気づくことができます。
(2)デジタル通帳のセキュリティ
デジタル通帳のセキュリティに対しては、金融機関はさまざまな対策を講じています。
①二段階認証
ログイン時にパスワードに加えて、スマートフォンに送信されるワンタイムパスワードを入力することでセキュリティが強化されます。
②生体認証
指紋や顔などの生体情報のデータを事前に登録しておき、認証時に照合して本人確認をします。
③暗号化通信
インターネットバンキングやアプリを利用する際、通信内容は暗号化されており、第三者に情報が漏れるリスクが低減されます。
④不正アクセスの監視
金融機関は24時間体制で不正アクセスを監視し、異常な取引が検出された場合には即座に対応します。
⑤セキュリティ通知
入出金やログイン時に通知を受け取るようにすれば、不正な取引があった場合にもすぐに気づくことができます。
⑥定期的なパスワード変更
銀行は定期的なパスワード変更を推奨しており、セキュリティがさらに強化されています。
以上のように、デジタル通帳は安全性が高いですが、利用者自身もセキュリティ対策を講じることが重要です。
㋐強力なパスワードの設定
簡単に推測されない強力なパスワードを設定し、定期的に変更することが重要です。
㋑フィッシング詐欺に注意
金融機関からのメールやSMSは正当な送信元かわかりにくいものがあります。安易にリンクをクリックしないよう注意が必要です。
㋒セキュリティソフトの利用
スマートフォンやパソコンにセキュリティソフトをインストールし、最新の状態に保つようにします。それによりウイルスやマルウェアから保護されます。
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4 紙通帳とデジタル通帳の比較
紙通帳とデジタル通帳にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
どちらがよいかは、利用者のライフスタイルやニーズに応じて異なります。
両者を比較するとつぎのとおりです。
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紙通帳はオフラインでの利用や物理的な記録が必要な方に向いています。一方、デジタル通帳は手数料がかからず、利便性が高いため、インターネットを日常的に利用する方におすすめです。
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5 手数料を回避するための対応策
紙通帳や未使用口座の有料化への対策には、つぎのような方法があります。
(1)デジタル通帳に切り替える
デジタル通帳に切り替えることで、手数料がかからないようにできます。
(2)休眠口座を解約する
長期間利用していない休眠口座は、手数料の対象となることが多いです。
使っていない口座を整理し、解約すれば手数料を避けられます。
(3)一定の金額を口座に入れておく
一部の銀行では、口座残高が一定額以上であれば手数料が免除される場合があります。
たとえば、残高が1万円以上であれば手数料がかからないケースがあります。
(4)ネットバンキングの活用
ネットバンキングを利用することで、紙通帳を使わずに取引を管理できます。これにより、手数料を回避しつつ、利便性を高めることができます。
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長年慣れ親しんだ紙通帳を手放すことに抵抗がある方、インターネットバンキングを不安に思っている方もおられるでしょう。
しかし、最近では、オンライン上の口座データと連携して自動入力できる家計簿アプリなどもあります。
デジタル通帳は、セキュリティ対策を十分に行えば、余計な手数料負担がなくなり、高い利便性というメリットを受けられます。
家計管理の効率化にも結び付けられるでしょう。