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中小企業が経費で落とせる「交際費等」を再確認


社外の人と飲食した際に経費で落とせる金額が、最近、1人当たり5千円以下から1万円以下に引き上げられたそうですね。
「交際費等」として計上できる費用にはルールがあると聞きましたが、具体的にはどこまで経費として認められるのでしょうか?



1 法人が支出した交際費等は原則として経費にならない


「交際費等」とは、企業や個人事業主が事業活動を行ううえで取引先や顧客との関係を維持・強化するために支出する費用をいいます。
つぎのような費用が交際費等に該当します。

 
こうした費用は、事業活動を円滑に進めるために重要な役割を果たしますが、税務上の取り扱いには注意が必要になります。
法人が支出した交際費等は、原則として損金算入しないこととされているのです。
「損金算入」とは、法人税や所得税の計算において、企業や個人事業主が支出した経費を収益から差し引くことです。
損金算入によって課税対象となる所得が減少し、結果として税負担が軽減されます。

2 中小法人には交際費等を損金算入できる特例が認められている


中小法人は、つぎの特例により一定の範囲内で交際費等を損金に算入できます。
(1)または(2)のいずれかを選択できるのです。
なお、適用期限は2026年度末(2027年3月31日)までとなっています。
ちなみに、この特例は1987年に創設され、これまで何度も期限が延長されてきました。
 
(1)800万円までの交際費等の全額損金算入
中小法人は、年間800万円までの交際費等を全額損金に算入できます。
ただし、事業年度が1年未満の場合には月割りで計算されます。
 
(2)接待飲食費の50%の損金算入
接待飲食費の50%を損金に算入できます。
(2)の特例は中小法人以外の法人(資本金が100億円以下の法人)にも適用されます。
 
【交際費等から除外される飲食費の基準】
社外の人との飲食等で1人当たり1万円以下の飲食費(注)は、交際費等の範囲から除かれます。
ただし、つぎの事項を記載した書類を保存する必要があります。
・飲食等のあった年月日
・参加者の氏名・名称や関係
・参加者の数
・飲食費の額
・飲食店の名前と所在地 など

(出所)国税庁のウェブサイトを加工

 
これらの特例の適用を受けるためには、交際費等の損金算入に関する明細書(別表15)を法人税の確定申告書に添付する必要があります。

3 交際費等に該当しない経費と該当するかどうか判断に迷う経費もある

 
(1)交際費等に該当しない経費
つぎのような費用は交際費等の範囲から除かれるため損金算入が可能です。
 
①従業員の慰安のための費用
もっぱら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用です。
 
②一定額以下の飲食費
飲食その他これに類する行為のための費用で、その支出金額を飲食等の参加者数で割り計算した金額が1万円以下(注)の費用です。
ただし、もっぱらその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。
(注)2024年3月31日以前に支出された飲食等に係る費用についての基準金額は5千円以下になります。
 
③贈答品費
カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用です。
 
④会議費
会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用です。
 
⑤取材費
新聞、雑誌等の出版物や放送番組の編集のために行われる座談会その他記事の収集や放送のための取材に通常要する費用です。
 
(2)交際費等に該当するかどうか判断に迷う経費
つぎのような経費は具体的な状況や目的によって判断が異なってきます。
詳細な記録を残し、税務署や税理士に相談するとよいでしょう。
 
①社内の飲食費やイベントの費用
社内での飲食費が交際費等に該当するかどうかは、参加者や目的によって異なります。
社内イベント(忘年会、新年会、社員旅行など)の費用も同様です。
社内の会議や研修での飲食費や従業員の慰安を目的としたイベントは、取引先を招いた場合は該当する可能性があります。
 
②贈答品費
贈答品の費用が交際費等に該当するかどうかは、贈答品の種類や贈る相手によって異なります。
たとえば、カレンダーや手帳などの一般的な贈答品でも、高価な贈答品や特定の取引先に対する贈答品は該当する可能性があります。
 
③会議費
会議中の茶菓や弁当などの費用は該当しませんが、会議後の懇親会費用は該当する可能性があります。

4 法人でない個人事業者やフリーランスも交際費等の範囲や税務上の取り扱いには注意が必要である


以上は法人にのみ適用されますが、個人事業者やフリーランスについても制限がないわけではありません。
当然ですが、交際費等として計上できるのは事業活動に関連する費用に限られます。
 
個人事業者やフリーランスが経費として認められない交際費等には、つぎのようなものがあります。

 
交際費等として計上した経費については、法人税や所得税の確定申告書に適切に計上しなければなりません。
そして詳細な記録を残し、経費の支出を証明する書類(領収書、請求書など)を適切に保存する必要があります。
わからないことや不安なことがあれば、税務署や税理士への相談がおすすめです。

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