NISAのつみたて投資枠対象商品を厳選する基準とは
2018年にスタートしたつみたてNISA(旧制度)は、順調に利用が増えてきました。
2024年からの新しいNISA制度では、それまでの一般NISAは成長投資枠へ、つみたてNISAはつみたて投資枠へと改正されました。
そして、成長投資枠とつみたて投資枠との併用が可能になり、年間の投資枠が拡大されています。
成長投資枠は株式やREITなど対象商品が幅広いのに対し、つみたて投資枠は長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定されます。
また、成長投資枠では毎月分配型の投資信託も対象になるのに対し、つみたて投資枠は年1回以下の分配頻度が求められます。
よって、積極的な投資が可能な成長投資枠に対し、つみたて投資枠は安定した長期投資を目指すという違いがあります。
つみたて投資枠の対象商品は、金融庁が定めた基準に合致したものに限定されています。
その基準の考え方は、NISA以外で長期・積立・分散投資をするときにも参考にできるでしょう。
つみたて投資枠の対象商品の基準とはどのようなものかについてお話しします。
1 つみたて投資枠の概要
成長投資枠と比較した、つみたて投資枠の概要はつぎのとおりです。
2 つみたて投資枠対象商品に基準が設けられている理由
基準を設けてつみたて投資枠の対象商品を絞り込んでいる理由は、つぎのとおりです。
(1)長期・積立・分散投資に適していなければならない
つみたて投資枠は、長期的な資産形成を目的としています。
そのため、対象商品は長期的に安定した運用が期待できるものに限定する必要があります。
そこで、手数料が低く、頻繁に分配金が支払われない公募株式投資信託やETFを対象にしています。
(2)投資初心者でも安心して利用できなければならない
初心者でも分かりやすく、安心して投資を始められる環境を整える必要があります。
そこで、投資経験が浅くても安心して利用できるように、リスクが高すぎる商品や複雑な商品を除外しています。
(3)コストを低減させなければならない
長期的な運用をするためにコストを低く抑え、投資家にとって有利な条件を整える必要があります。
そこで、購入時の手数料がかからない(ノーロード)で、運用管理費用(信託報酬)を低水準に抑えた商品が多くなるようにしています。
3 つみたて投資枠対象商品の基準
(1) つみたて投資枠の対象商品
つみたて投資枠の対象商品は、長期的な資産形成を支援するために設計された投資信託やETF(上場投資信託)に限定されています。3つに分類されています。
2024年10月1日現在のつみたて投資枠の対象商品は、つぎのとおり300本となっています。
具体的な商品名や詳細は、金融庁のNISA特設サイトで確認できます。
(2)つみたて投資枠対象商品の共通基準
3つの分類に共通する基準はつぎのとおりです。
①信託契約期間が無期限または20年以上であること
②分配頻度が毎月でないこと
③ヘッジ目的の場合などを除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと
④受益者ごとの信託報酬などの概算値が通知されること
⑤金融庁へ届出がされていること
(3)指定インデックス投資信託(インデックス型)の基準
共通基準に加えてつぎの基準を満たす必要があります。
㋐告示において指定されたインデックスに連動していること(マーケット全体の動きに連動する主要なインデックス)
㋑主たる投資の対象資産に株式を含むこと
㋒販売手数料:ノーロード(解約手数料、口座管理手数料についてもゼロであること。信託財産留保額の有無については、対象商品の要件とはしない)
㋓信託報酬が、国内資産を対象とするものは0.5%以下(税抜き)、海外資産を対象とするものは0.75%以下(税抜き)であること
(4)指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ型)」の基準
共通基準に加えてつぎの基準を満たす必要があります。
㋐純資産額が、50億円以上であること
㋑信託設定以降、5年以上経過していること
㋒信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が2/3以上であること
㋓主たる投資の対象資産に株式を含むこと
㋔販売手数料:ノーロード(解約手数料、口座管理手数料についてもゼロであること。信託財産留保額の有無については、対象商品の要件とはしない)
㋕信託報酬が、国内資産を対象とするものは1.0%以下(税抜き)、海外資産を対象とするものは1.5%以下(税抜き)であること
(5)ETFの基準
共通基準に加えてつぎの基準を満たす必要があります。
㋐告示において指定されたインデックスに連動していること(指定インデックス投信のインデックスと同じもの)
㋑投資の対象資産が株式であること
㋒最低取引単位が1,000円以下
㋓販売手数料:1.25%以下(口座管理手数料についてもゼロ)
㋔信託報酬が、0.25%以下(税抜き)であり、つぎの要件に該当すること
・国内取引所に上場しているものは、円滑な流通のための措置が講じられているとして取引所が指定するもの
・外国取引所に上場しているものは、資産残高が1兆円以上
つみたて投資枠は、長期的に資産を増やしたい人や、少額から無理なく投資を始めたい人に向いています。ご自身の投資目的やリスク許容度を確認のうえで、どの商品を選ぶのかを検討することが大事です。
また、つみたて投資枠の対象商品の基準は、NISA以外で長期・積立・分散投資に適した商品を選ぶ際にも応用できるでしょう。