住宅ローン「フラット35」の融資条件と注意すべきポイント
「フラット35」は、全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して扱う全期間固定金利型住宅ローンです。
近年は利用実績が減少傾向にあります。
つぎのような要因が複合的に影響しているためと考えられます。
(1)変動金利型住宅ローンの人気
フラット35は長期固定金利型の住宅ローンです。
近年は変動金利型住宅ローンの金利が低く設定されていました。そのため、借入時の金利負担が軽減される変動金利型住宅ローンを選ぶ人が多かったのです。
(2)固定金利の上昇
近年、固定金利が上昇傾向にあります。そのため、長期固定金利型の「フラット35」の魅力が相対的に低下し、利用者が減少している可能性があります。
(3)住宅価格の上昇
住宅価格が上昇傾向にあることから住宅ローンの借入額が増加してきています。返済負担が大きくなることから利用者が慎重になっていると考えられます。
(4)利用者層の変化
フラット35の利用者層が高齢化してきており、若年層の利用が減少していることも一因と考えられます。
最近は変動金利型住宅ローンの金利が上昇しているため、将来的な金利上昇リスクを避けたいと考える人々が増えているようです。
フラット35は、長期にわたって金利が固定されるため、返済計画が立てやすく、金利上昇のリスクを避けたい人々にとって魅力的な選択肢となります。
フラット35の金利も上昇傾向にあるとはいえ、変動金利型よりも安定しているので、安心感を求める借り手にとっては魅力的です。
そのため、現在のような金利上昇局面ではフラット35の需要が高まる可能性があります。
フラット35の現時点での融資条件や借入の際の注意点などについてお話しします。
1 フラット35の概要
フラット35は、長期固定金利型の住宅ローンで、2003年10月に登場しました。
つぎのような特徴があります。
・長期固定金利なので借入時の金利が返済終了まで固定されます。
・返済期間は最長35年です。
・保証人が不要です。
・繰上返済時の手数料がかかりません。
フラット35が登場した経緯はつぎのとおりです。
かつて一般住宅融資を担っていた住宅金融公庫が構造改革の一環として廃止され、代わりに住宅金融支援機構が設立されました。
証券化支援事業により民間金融機関と連携して長期固定金利の住宅ローンを提供する形に移行することになったのです。
そして住宅金融支援機構が、民間金融機関が提供する住宅ローンを証券化し、資金調達を行う仕組みが導入されました。
それがフラット35なのです。
フラット35は、住宅購入者にとって魅力的な選択肢となり、住宅市場の活性化にも寄与しています。
長期固定金利で借入時の金利が返済期間中に変わらないため、安定した資金計画を立てられます。
また、金利が固定されているため、将来的な金利上昇のリスクを避けられます。
そして安定した住宅ローンの提供を通じて多くの人々が安心して住宅を取得できる効果が見込まれるのです。
2 フラット35と民間金融機関の住宅ローンを比較したメリットとデメリット
3 フラット35の利用条件
(1)申込要件
①年齢
申込時の年齢が満70歳未満であることが必要です。
ただし、親子リレー返済を利用する場合は、満70歳以上でも申込可能です。
②国籍
日本国籍をもつ人、永住許可を受けている人または特別永住者の人であることが必要です。
③総返済負担率
すべての借入れ(注1)に関して、年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)がつぎの基準を満たすことが必要です。
年収は、原則として、申込年の前年の収入を証する公的証明書に記載するつぎのいずれかの金額となります。
・給与収入のみの人は給与収入金額
・所得金額(事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得および給与所得の所得金額の合計額)
ただし、収入を合算できる場合があります(後述(14)参照)。
(注1)つぎのような借入れの合計(収入合算者の分を含む)
・フラット35
・フラット35以外の住宅ローン
・自動車ローン
・教育ローン
・カードローン(キャッシング、商品の分割払い、リボ払いによる購入を含む)
・賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金(賃貸用アパート向けは含めない)
など
(2)資金使途
申込本人またはその親族が居住する新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金であることが必要です。
第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金には利用できません。
(3)借入対象となる住宅
①技術基準
住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅であることが必要です。
②床面積
つぎの面積を満たすことが必要です。
・一戸建て、連続建て(注2)および重ね建て(注3)の場合は70㎡以上
・共同建て(マンションなど)の場合は30㎡以上
店舗付き住宅などの併用住宅の場合は、住宅部分の床面積が非住宅部分(店舗、事務所など)の床面積以上であることが必要です。
(注2)共同建て(2戸以上の住宅で廊下、階段、広間などを共用する建て方)以外の建て方で、2戸以上の住宅を横に連結する建て方
(注3)共同建て以外の建て方で、2戸以上の住宅を上に重ねる建て方
(4)借入額
100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で、建設費(注4)または購入価額(非住宅部分に係るものを除く(注5))以内です。
(注4)土地取得費に対する借入れを希望する場合はその費用を含む
(注5)店舗、事務所などの非住宅部分に係る建設費または購入価額は借入対象外
(5)借入期間
15年以上35年以下です。
ただし、本人または連来債務者が60歳以上の場合は10年以上となります。
また、80歳(1年未満切上げ)までの年数が上限となります。
(6)借入金利
全期間固定金利です。
つぎの条件に応じて借入金利が異なります。
・借入期間(20年以下・21年以上)
・融資率(注6)(9割以下・9割超)
・加入する団体信用生命保険の種類など(注7)
(注6)融資率 = フラット35の借入額 / 住宅の建設費または購入価額
(注7)健康上の理由その他の事情で新機構団信制度に加入しない場合はつぎの計算式による借入金利となります。
新機構団信付きフラット35の借入金利 - 0.2%
(注8)借入金利は取扱金融機関により異なります。取扱金融機関および金利情報ページで案内しています。
(注9)申込時ではなく資金受取時の金利となります。なお、資金の受取日は取扱金融機関の定める日となります
(注10)取扱金融機関により、借入期間や融資率にかかわらず借入金利が同一の場合があります。
(7)返済方法
元利均等毎月払いまたは元金均等毎月払いを選択できます。
6カ月ごとのボーナス払い(借入額の40%以内(1万円単位))も併用できます。
(8)担保
借入対象となる住宅およびその敷地に、住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定します。
抵当権の設定費用(登録免許税、司法書士報酬など)は申込人の負担となります。
(9)保証人
不要です。
(10)団体信用生命保険
団体信用生命保険に加入(任意)すれば万一の場合に以後の返済が不要となります。
健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入しない場合も利用できます。
(11)火災保険
返済終了まで、借入対象となる住宅について、建物の火災による損害を補償対象とする火災保険に加入する必要があります(注11)。
保険金額は、借入額以上となります。
(注11)保険期間および火災保険料の払込方法は、取扱金融機関により異なります。また、取扱金融機関によっては火災保険金請求権への質権設定が必要な場合があります。
(注12)火災保険料は申込人の負担となります。
(12)融資手数料・物件検査手数料
融資手数料(注13)は取扱金融機関により異なります。
物件検査手数料は検査機関または適合証明技術者により異なります。
(注13)取扱金融機関および金利情報ページで案内しています。
(注14)融資手数料・物件検査手数料は申込人の負担となります。
(13)保証料・繰上返済手数料
不要です。
一部繰上返済の場合、繰上返済日は毎月の返済日となります。
返済額はインターネットサービス「住・My Note」利用の場合は10万円以上、取扱金融機関の窓口利用の場合は100万円以上となります。
(14)収入の合算
つぎのすべての要件に当てはまる人ひとりの収入を合算できます。
・申込本人の親、子、配偶者など
・申込時の年齢が満70歳未満
・申込本人と同居
・連帯債務者
収入合算できる金額は、収入合算者の年収の全額まで可能です。
ただし、合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合には、借入期間が短くなる場合があります。
収入合算した場合の借入期間の上限は、次の計算式のとおりとなります。
借入期間の上限 = 80歳 - つぎのいずれか年齢が高い人の申込時の年齢(1年未満切上げ)
・申込本人
・合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合の収入合算者
ただし、親子リレー返済を利用する場合は後継者の年齢をもとに計算します。
(15)親子リレー返済
つぎのすべての要件に当てはまる人ひとりを後継者とする場合は、満70歳以上でも申し込めます。
・申込本人の子や孫など(申込本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある人
・申込時の年齢が満70歳未満
・連帯債務者
4 フラット35を利用する際に注意すべきポイント
つぎのようなポイントを考慮して、事前にしっかりと準備を行い、無理のない返済計画を立てることが大切です。
(1)金利の高さ
フラット35は全期間固定金利のため、変動金利型のローンに比べて初期金利が高めに設定されています。
市場金利が低い時期には、変動金利型のローンの方が有利な場合があります。
(2)頭金の準備
フラット35は頭金が必要な場合が多く、頭金を多く用意できない場合は金利が高くなることがあります。
頭金をしっかり準備することが重要です。
(3)物件の技術基準
フラット35を利用するためには、住宅が一定の技術基準を満たしている必要があります。
物件が基準を満たしていない場合、利用できないことがあります。
(4)返済計画の立案
返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)を確認し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
返済負担率が高すぎると審査に通らない場合があります。
(5)融資手数料
フラット35を利用する際には融資手数料や物件検査手数料が発生します。
そうした手数料を事前に確認し、総費用を把握しておくことが大切です。
(6)繰上返済の計画
フラット35は繰上返済手数料が不要ですが、繰上返済を計画的に行うことで総返済額を減らせます。
繰上返済のタイミングや金額を考慮しておくとよいでしょう。
(7)団体信用生命保険
団体信用生命保険への加入は任意ですが、加入することで万が一の際に残っている借入れを免除されるメリットがあります。
健康状態によっては加入できない場合もあるため事前に確認が必要です。
(8)火災保険の加入
フラット35を利用する場合、火災保険への加入が必須です。
火災保険の内容や費用を確認し、適切な保険に加入することが重要です。
フラット35は、たびたび改訂が行われます。
金利引き下げ制度には豊富なメニューがありますので、別稿にてお話しします。