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おひとりさま、高齢者が活用できる「見守り契約」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2024年推計」から引用します。
65歳以上の一人暮らしの割合(独居率)は、2020~50年の間に、男性は16.4%から26.1%へ、女性は23.6%から29.3%へと増える見込みです。
とくに男性の単独世帯化が大きく進むとみられています。

(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2024年推計」を加工


高齢のおひとりさまが活用しうる「見守り契約」についてお話しします。
 
身体状況による利用期間からみた「見守り契約」の位置づけはつぎの図のとおりです。


1 見守り契約の概要


見守り契約とは、おもに高齢者や障害のある人が安心して生活を送れるように、定期的に支援者が健康状態や生活状況を確認する契約です。
本人が一人で生活している場合や、近くに頼れる家族や親族がいない場合に有用です。
 
見守り契約の一般的な依頼先は、つぎのとおりです。
 
①行政書士や司法書士などの専門家
法律に詳しい専門家と見守り契約を結ぶことが多くあります。
 
②NPO法人やボランティア団体
地域の福祉団体が見守りサービスを提供している場合もあります。

2 見守り契約でできること、できないこと

 
(1)できること
 
①定期的な訪問や連絡
支援者が定期的に訪問したり、電話やメールで連絡を取ったりして、本人の健康状態や生活状況を確認します。
異常があった場合には早期に対応できるようになります。
 
②緊急時の対応
緊急時に連絡を受け、必要な対応を行います。
たとえば、救急車の手配や家族への連絡などです。
 
③健康管理
健康状態のチェックや医療機関との連絡を行い、適切な医療を受けられるようにサポートします。
 
④法律相談
必要に応じて、法律に関する相談やアドバイスを提供します。
悪質商法の被害を防ぐといった効果が見込めます。
 
(2)できないこと
 
①医療行為
支援者が直接医療行為を行うことはできません。
医療行為が必要な場合は、医療機関に連絡し、適切な対応を依頼します。
 
②財産管理
見守り契約では、本人の財産管理を行えません。
財産管理が必要な場合は、財産管理等委任契約や成年後見制度などを利用することになります。
 
③生活支援
買い物の手伝いや病院への付き添いといった日常生活の支援は含まれないことが多くなっています。
必要な場合は契約条項に盛り込まなければなりません。
 
④本人の意思に反する行為
本人の意思に反する行為は行えません。
見守り契約は、本人の意思を尊重し、サポートすることが前提です。
 
⑤法律で禁止されている行為
法律で禁止されている行為は当然ながらできません。

3 見守り契約のメリットとデメリット

 
(1)メリット
 
①安心感の提供
定期的な訪問や連絡により、不安なく生活を送れるようになるので、一人暮らしの高齢者にとっては大きな安心材料となります。
 
②早期対応
健康状態や生活状況の変化を早期に発見し、適切な対応を取れます。
重大な問題が発生する前に対処できる効果が見込めます。
 
③信頼関係の構築
支援者との定期的なコミュニケーションにより、信頼関係を築くことができ、本人が困ったときにすぐに相談できる環境が整います。
 
(2)デメリット
 
①費用の発生
見守り契約には費用がかかります。
契約内容やサービスの頻度によって異なりますが、月額数千円から数万円程度が一般的です。
 
②信頼できない可能性
信頼できる支援者を選ぶことが重要です。
信頼性の低い相手先に依頼すると、トラブルが発生する可能性があります。
 
③サービスの限界
見守り契約では、医療行為や財産管理などの専門的な業務は行えません。
必要な場合は、別途契約や制度を利用する必要があります。

4 見守り契約を締結する際に注意すべきポイント

 
(1)信頼できる事業者の選定
見守りサービスを提供する事業者の信頼性を確認しましょう。
過去の実績や評判を調べ、信頼できる事業者を選ぶことが大切です。
また、必要に応じ、事業者が適切な資格や認定を受けているか確認します。
サービスの質の保証につながります。
 
(2)契約内容の明確化
見守りサービスの具体的な内容を明確にし、契約書に詳細に記載します。
たとえば、訪問頻度や連絡方法、緊急時の対応などです。
また、サービスの範囲や制限を明確にし、事業者がどこまでの権限をもつかをはっきりさせておきます。
 
(3)費用の確認
契約にかかる初期費用や月額費用を確認し、予算に合っているか検討します。
さらに、サービス利用中に追加費用が発生する場合があるので、その点も確認しておきます。
 
(4)契約書の確認と理解
契約書の内容をしっかり確認し、不明点があれば事前に質問して解決しておきます。
もし、契約書の内容について不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
 
(5)サポート体制の確認
緊急時にどのような対応が取られるのか、24時間対応しているかなどを確認します。
また、相談窓口が設置されているか、利用者が困ったときにすぐに相談できる体制が整っているかも確認します。
 
(6)契約解除の条件
契約解除の条件を明確にし、契約書に記載します。
とくに、信頼関係が崩れた場合や事業者が不正行為を行った場合の対応を明示します。
また、契約解除の手続き(解除条件や費用の返金など)についても確認し、スムーズに解除できるように準備しておきます。

5 見守り契約を利用したほうがよい人、利用しないほうがよい人


(1)利用したほうがよい人
 
①一人暮らしの高齢者
定期的な訪問や連絡により、安心して生活を送ることができ、緊急時の対応が必要な場合に役立ちます。
 
②家族や親族が遠方に住んでいる人
近くに頼れる家族や親族がいない場合も同様です。
 
③健康状態に不安がある人
定期的な健康チェックや医療機関との連絡を通じて、健康状態を管理し、早期に対応できます。
 
④悪質商法の被害に遭いやすい人
法律相談やアドバイスを受けることで、悪質商法の被害を防げます。
 
(2)利用しないほうがよい人
 
①家族や親族が近くに住んでいる人
近くに信頼できる家族や親族がいて、その人たちに見守りを任せられるなら必要ないでしょう。
 
②自立した生活ができる人
自分で日常生活を管理できる場合も必要ありません。
 
③費用を負担できない人
見守り契約には費用がかかるため、経済的に余裕がない場合は、他の方法を検討する必要があります。
 
④信頼できる事業者が見つからない人
信頼できる事業者が見つからない場合、契約を結ぶ前に慎重に検討することが重要です。

6 見守り契約の手続き


見守り契約の手続きの流れはつぎのとおりです。
 
(1)契約先の選定
見守り契約を提供している行政書士や司法書士などの専門家、または専門のサービス業者を選びます。
 
(2)相談と契約内容の確認
契約先と相談し、見守りの頻度や方法(電話、訪問など)を決定します。
 
(3)契約書の作成
契約内容にもとづいて契約書を作成し、双方が署名します。
 
(4)サービス開始
契約にもとづいて定期的な見守りサービスが開始されます。
 
(5)費用
月額5千円から2万円程度が相場のようです。
電話や訪問の頻度により異なります。
また、緊急時の駆けつけ費用を別途5千円程度としている事業者もあります。
 
(6)ほかの契約との併用
「財産管理等委任契約」と「任意後見契約」をセットにする「移行型任意後見契約」という形があります。
本人の判断能力が低下する前から財産管理を行い、判断能力が低下したのちに任意後見契約に移行する仕組みです。
判断能力が低下する前後の財産管理をスムーズに行うことができるというメリットがあります。
 
さらに、見守り契約をセットにして本人の健康状態や生活状況を定期的に確認するとよいでしょう。
早期に異変を察知し、任意後見契約への移行を的確に行えるようになります。

7 見守りサービス


見守り契約と似ているサービスに「見守りサービス」があります。
両者の相違点はつぎの表のとおりです。

 
見守りサービスの種類と、それぞれの費用の目安はつぎの表のとおりです。

 
見守り契約は、将来の不安を軽減し、安心して生活を送るための有効な手段です。
信頼できる事業者を選び、契約内容をしっかり確認することが重要です。
具体的な手続きや詳細については、専門家に相談するとよいでしょう。


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