住宅取得の際に知っておきたい建築基準法のポイント
住宅を新築する際、建築基準法の規制を守らなければなりません。
また、建築基準法に違反している中古住宅を購入すると増改築ができないといった制約が生じます。
住宅を取得する際には、建築基準法による規制にはどのようなものがあるのか、基本的な知識をもっておくことをおすすめします。
1 建築基準法とは
建築基準法は、日本における建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低基準を定めた法律です。
建築物の安全性を確保し、国民の生命、健康、財産を保護することを目的としています。
建築基準法の規制は単体規定と集団規定とに大きく分けられます。
(1)単体規定
個々の建築物とその敷地が単体で恒久的に安全や快適さを維持機能しつづけていくために必要な最低限度の構造を規定するものです。
①敷地に関する規制
建物の敷地について、地盤が強固であることや排水が適切に行われることを求めています。
②構造耐力に関する規制
建物が地震や台風などの自然災害に耐えられるよう、一定の構造基準を設けています。
③防火・避難に関する規制
火災時の延焼を防ぐための防火性能や、避難経路の確保を求めています。
④その他の一般構造・設備に関する規制
居室の採光や換気、便所の設置などについての規制です。
(2)集団規定
都市計画区域内に建つ建築物が、健全な都市環境の一要素として機能するために規定するものです。
①接道規制
建物の敷地が道路に適切に接していることを求めています。
②用途規制
建物の用途(住宅、商業施設など)に応じた規制を設けています。
③形態規制
建物の高さや建ぺい率、容積率などを規定しています。
(3)建築確認と検査
建物を建築する際には、事前に建築確認を受ける必要があります。
また、建築工事が完了した後には完了検査を受け、基準に適合していることを確認します。
2 接道規制
建物を建てる敷地が一定の条件を満たす道路に接していなければならないという接道義務があります。
具体的には、敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります。
(1)接道義務の目的
①緊急車両の通行確保
火災や救急時に消防車や救急車が通行できるようにするためです。
②避難路の確保
地震や災害時に安全に避難できる経路を確保するためです。
(2)建築基準法上の道路
幅4m以上で、同法42条で定められている道路をいいます。
(3)セットバック
道路の幅員が4m未満で、建物を新築する場合はセットバックが必要になります。
道路と敷地の境界線を道路の中心線から2mの位置まで後退させることです。
道路の反対側が川や崖などの場合は、川や崖との境界から4mの位置まで、道路と敷地の境界線を後退させます。
なお、セットバック部分は道路として扱われるので、その部分を除いた敷地に建物を新築しなければなりません。
(4)接道義務を満たさない場合の影響
接道義務を満たしていない土地は、原則として再建築ができません。
そのため、土地を購入する際や相続する際には、接道義務を満たしているかどうかを確認することが重要です。
3 用途規制
都市計画法により、土地の利用方法を規制する区域である用途地域が定められています。
住環境の質や利便性を保ち、計画的な都市開発を進めることが目的です。
用途地域は大きく分けて住居系、商業系、工業系の3つに分類され、13種類の細かい区分があります。
建築基準法では、用途地域ごとに建築可能な建物の種類や規模などについて、一定の制限を設けています。
住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿は、工業専用地域以外の用途地域で建築できます。
ただし、第一種・第二種低層住居専用地域では、高さ10mもしくは12mの低層住宅しか建築できません。
第一種・第二種中高層住居専用地域では、建物の高さ制限がなくなり、一戸建てだけでなくマンションの建築も可能になります。
第一種・第二種住居地域は、住宅としての環境を守りながら、商業地としても利用できます。
準住居地域には小規模な工場も建てられます。
4 形態規制
(1)建ぺい率
建ぺい率は、建築物が敷地をどの程度覆っているかを示す割合のことです。
具体的には、敷地面積に対する建築面積の割合をパーセンテージで表します。
計算式はつぎのとおりです。
建ぺい率(%) = 建築面積(㎡) / 敷地面積 (㎡) × 100
たとえば、敷地面積が100㎡で建築面積が60㎡の場合、建ぺい率は60%となります。
建ぺい率は、市街地に空地を確保し、つぎのような効果をもたらすために設定されています。
・通風や日照の確保
・防災対策
・緑化の促進
・日常生活のための空間の確保
建ぺい率の上限は、用途地域ごとに行政庁が都市計画で定めています。
住居系について示すとつぎのとおりです。
特定の条件を満たす場合には、建ぺい率が緩和されることがあります。
80%の地域以外で防火地域の耐火建築物の場合や、角地の場合は、それぞれ10%加算できます。
両者の条件を満たせば20%加算となります。
(2)容積率
容積率は、建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合を示す指標です。
敷地面積に対してどれくらいの規模の建物を建てられるかを決めるための基準です。
都市の人口密度やインフラの整備状況を考慮して設定されており、過密な開発を防ぐための重要な基準です。
計算式はつぎのとおりです。
容積率(%) = 敷地面積(㎡) / 延べ床面積(㎡)(注1) × 100
(注1)各階の床面積の合計
たとえば、敷地面積が100㎡で、延べ床面積が200㎡の建物の場合、容積率は200%となります。
容積率の上限は、用途地域ごとに行政庁が都市計画で定めています。
住居系について示すとつぎのとおりです。
ただし、前面道路が12m未満の場合は、まず次の計算式から容積率を求めます。
容積率(%) = 前面道路の幅 × 0.4(注2) × 100
(注2) 住居系用途地域の場合の法定乗数。非住居系では0.6となる。
たとえば、前面道路が4mの場合、4 × 0.4 × 100 =160%となります。
そして、都市計画の容積率と比較して小さいほうをその土地の容積率とします。
5 防火地域と準防火地域
防火地域と準防火地域は、都市計画法にもとづいて火災の危険を防ぐために指定される地域です。
それぞれの地域において建築制限があります。
(1)防火地域
防火地域は、火災の発生や延焼のリスクが高い地域に指定されます。
都市の中心部や商業施設が密集するエリア、高速道路や幹線道路沿いなどです。
建物の耐火性能が厳しく求められ、耐火建築物または準耐火建築物であることを求められます。
建物の高さや規模に応じて、さらに厳しい耐火性能が求められることがあります。
(2)準防火地域
準防火地域は、防火地域の周囲に指定されることが多く、火災のリスクを軽減するための地域です。
防火地域に比べて建築制限は緩やかですが、建物は準耐火建築物または防火構造であることが求められます。
6 建築確認
建築確認とは、建物を建てる前に、その計画が建築基準法や各種条例に適合しているかを確認する手続きのことです。
都市計画区域および準都市計画区域内で、新築、増築、改築、移転するすべての建築物について、原則として必須となります。
建築確認の流れはつぎのとおりです。
①設計図の作成
建築士が設計図を作成します。
②建築確認申請
設計図や必要書類を自治体または指定確認検査機関に提出します。
③審査
提出された書類が建築基準法や条例に適合しているか審査されます。
④確認済証の交付
問題がなければ確認済証が交付されます。
⑤工事着工
確認済証が交付された後、工事を開始します。
⑥中間検査
必要に応じて工事の途中で検査が行われます。
⑦完了検査
工事完了後、再度検査が行われ、検査済証が交付されます。
建築確認にかかる費用は自治体や建物の規模によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度となります。
住宅の取得に際しては、周辺にどのような建物が建つ可能性があるのかを知っておくことは重要です。また、どのような構造や規模の住宅を建てられるのか知ることも必要です。
基本的な知識をもちつつ、専門家のアドバイスも受けながら、満足できる住宅を取得できるよう、入念な準備が大事になります。