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「家づくり」の建築スケジュール、諸手続き、注意点

「家づくり」は人生最大の買い物と言われますが、実際には建築業者に任せきりというケースがほとんどではないでしょうか。
しかし、つぎのような理由から、建築主(施主、発注者)も建築スケジュールの管理に積極的に関与したほうがよいのです。
 
・定期的な進捗確認や打ち合わせを通じて、業者とのコミュニケーションを密にすることで、誤解やミスを防げる
・施工の各段階で現場を確認することで、設計通りに進んでいるか、品質に問題がないかをチェックできる
・建築中に新たなアイデアや変更が出てきた場合、迅速に対応するためには、スケジュールを把握していることが重要
・スケジュールを管理することで、予算オーバーを防ぎ、コストの透明性を確保できる
・自分自身がプロジェクトの進行状況を把握していることで、安心感が得られる
 
建築スケジュール管理は専門知識が必要な部分もありますが、業者と協力して進めれば、より満足のいく家づくりができるでしょう。
 
注文住宅建築の流れ、スケジュールについて、建築主も知識を持っておくことが重要といえます。


1 注文住宅建築の一般的なスケジュール

 

(1)検討・準備


①どのような家にするのか(イメージ)、予算、入居時期の検討
家族のライフスタイルや将来に向けたライフプランを考慮して検討します。
 
②住宅建築会社の選定と見積り取得
モデルハウスの見学や住宅建築会社の比較を行い、信頼できる業者を選びます。
住宅建築会社に要望を伝え、間取りプランを作成してもらい、見積もりを取得します。

(2)住宅ローンの申込み(仮審査)


住宅ローンの仮審査は、購入予定の物件や予算がある程度決まった段階で行うのが一般的です。
申込者の年収や職業、勤続年数などが審査されます。
通常、数日から1週間程度で結果が出ます。
どの程度の資金を借りられるかが分かり、設計や施工の計画が立てやすくなります。
住宅ローンの申込みは、通常、建築主自身が行いますが、金融機関や住宅建築会社がサポートしてくれるケースが多くあります。

(3)設計図書作成


建築設計事務所や住宅建築会社に依頼し、相談しながら設計図書を作成してもらいます。
間取りやデザイン、仕様などを詳細に決定します。

(4)建築確認申請


設計図書が完成したら、それをもとに建築確認申請を行います。
自治体や指定確認検査機関に提出し、建築基準法に適合しているか審査を受けます。
審査に合格すると「確認済証」が交付されます。
この証明書がないと工事を開始できません。
 
建築確認申請は、通常、建築士が建築主の代理として行います。
建築士は、設計図書の作成から申請手続きまでを一貫して担当し、建築基準法に精通しているため、スムーズに申請を進められます。
建築主が直接申請することも可能ですが、専門的な知識が必要となるため、建築士に依頼するのが一般的です。

(5)住宅ローンの本審査


仮審査を通過したあと、詳細な情報をもとに正式な借入可否を判断するための審査です。
詳細な設計図書、建築確認済証、工事請負契約書、土地の登記簿謄本など、より具体的な書類が必要になります。
通常、1~2週間程度かかります。

(6)工事請負契約の締結


建築確認済証が交付され、住宅ローンの本審査が通過したあとに工事請負契約を締結します。
このときに、工事費用の一部(通常は総工事費の10%前後)を手付金として支払います。
工事請負契約にもとづき、正式に建築工事が開始されます。
工事が開始されるタイミングで、工事費用の通常20%前後を支払います。

(7)上棟式


建物の基本構造が完成し、屋根を支える棟木が取り付けられたタイミングで上棟式が行われます。
このときに工事費用の通常40%前後を中間金として支払います。

(8)中間検査


中間検査は、建築工事の途中で行われる検査です。
特定の工程が完了した時点で、建物が法令の基準に適合しているかを確認します。
対象となるのは、おもに3階建て以上の建物や特定の構造部分(例:鉄筋コンクリート造の床や梁の配筋工事など)です。
特定工程が完了した時点で、建築主事や指定確認検査機関に申請します。申請後、4日以内に検査が行われます。
検査に合格すると「中間検査合格証」が交付され、次の工程に進むことができます。合格しない場合は、是正が必要です。

(9)建築工事完了


(10)完了検査


完了検査は、建築工事がすべて完了したあとに行われる最終検査です。
完成した建物が建築基準法に適合しているかを確認します。
すべての建物が対象となります。
工事完了後4日以内に建築主事や指定確認検査機関に申請します。申請後、7日以内に検査が行われます。
検査に合格すると「検査済証」が交付されます。
この証明書がないと、建物の使用開始や住宅ローンの融資が難しくなります。

(11)住宅ローン借入れ手続き


建築工事完了後、引渡し前に行います。
金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。

(12)火災保険加入


住宅の引渡し日までに火災保険の補償が開始されるように契約するのが理想的です。
引き渡し後すぐに火災や災害による損害が発生した場合でも、保険でカバーされるためです。
引渡し日の1カ月半〜2カ月前から準備を始めると余裕をもって進められます。

(13)登記手続き


①建物表題登記
建物が完成して所有権を取得した日から1カ月以内に行わなければなりません。
 
②所有権保存登記
建物表題登記完了後、すみやかに行います。
 
③抵当権設定登記
住宅ローンを利用する場合、金融機関は融資の担保として建物に抵当権を設定します。
抵当権設定登記は、融資の実行前に行う必要があります。
 
実務上は、住宅ローンの融資実行と抵当権設定登記申請を同日に行うことが多くなっています。そして融資が振込まれた同日に住宅建築会社に代金を支払います。

(14)建物引き渡し


2 工事請負契約のポイント


工事請負契約書は、発注者(建築主)と受注者(施工業者)の間で工事の内容、方法、条件などを詳細に取り決めた契約書です。
双方の認識を共有し、トラブルを防ぐ役割を果たします。
 
(1)工事請負契約書の記載事項
・工事の目的 : 工事の内容や目的
・工事内容の詳細 : 工事の具体的な内容、場所、期間など
・請負代金 : 工事の総額と支払い方法
・工事の追加・変更 : 工事内容に変更が生じた場合の対応方法
・工事中の損害負担 : 工事中に発生した損害の負担割合
・近隣への説明・クレーム対応 : 近隣住民への説明やクレーム対応の役割分担
・工事完了後の対応 : 工事完了後の検査や引渡し方法
 
(2)契約締結時の注意点
・契約前に価格と仕様を明確に決定し、なるべく契約後に変更が生じないようにします。
・工事完了日と引渡し日を正確に記載し、遅延が発生した場合の対応を明記します。
・支払いのタイミングと金額を明確にし、自己資金やつなぎ融資の必要性を確認します。
 
(3)契約書の作成義務
建設業法第19条1項により、施工業者には契約書の作成義務があります。
契約書を作成しない業者は違法業者とみなされるため、注意が必要です。

3 住宅建築会社を選定する際のポイントと注意点


(1)評判と実績の確認
実際にその会社で家を建てた人の意見を参考にします。
ネットの口コミだけでなく、実際に建てた家を見学するのもよいでしょう。
また、施工実績や受賞歴などを確認することでも信頼性を判断できます。
 
(2)担当者との相性
信頼できる担当者であるか、話しやすいかを確認します。
また、質問や要望に対して迅速かつ丁寧に対応してくれるかを見極めます。
 
(3)見積り内容の確認
見積もり内容が明確で、追加費用が発生しないかを確認します。
 
(4)アフターメンテナンス
建築後の保証内容やアフターメンテナンスの体制を確認します。
また、長期間にわたってサポートしてくれるかどうかを確認します。
 
(5)資金計画の提示
建築費用だけでなく、関連するすべてのコストを含めた資金計画を提示してくれるか確認します。

4 火災保険加入の注意点


(1)保険の補償範囲を確認する
火災だけでなく、風災、水災、盗難などもカバーする保険を選びましょう。
火災保険は「住まいの保険」として、さまざまなリスクに対応できるものが多くあります。

(2)補償額の設定
新築の場合は「新価」(再調達価額)での補償を選ぶことをおすすめします。
同じ住宅を再建するための費用が補償されます。
建物だけでなく、家具や家電などの家財も補償対象に含めると安心です。
 
(3)地震保険の検討
火災保険だけでは地震による損害はカバーされません。
地震保険を付帯することで、地震や津波による被害にも備えることができます。
 
(4)保険料の確認
複数の保険会社から見積もりを取り、保険料や補償内容を比較しましょう。
必要最低限の補償に絞ることで、保険料を抑えることができます。
また、 長期契約にすることで、保険料が割安になる場合があります。
 
(5)契約内容の確認
契約書に記載されている補償内容や特約をしっかりと確認し、不明点があれば保険会社に問い合わせましょう。
また、契約が自動継続となる特約を付ければ、更新手続きの手間を省けます。
 
(6)保険金の支払い条件
火災や自然災害で被害を受けた際に、臨時費用や片付け費用などをカバーする「費用保険金」を含めると安心です。

5 住宅建築におけるトラブル回避のポイント


(1)契約内容の確認と記録
工事内容、費用、工期などについての口約束は避け、すべて書面で残しましょう。
変更や追加工事が発生した場合は、その都度書面で記録し、費用や工期の変更についても明確にしておくことが大事です。
 
(2)施工業者とのコミュニケーション
施工業者や現場監督と定期的に打ち合わせを行い、進捗状況や問題点を共有しましょう。
 
(3)信頼関係の構築
施工業者との信頼関係を築くことで、トラブルが発生した際にもスムーズに対応できます。
 
(3)近隣住民との関係
工事開始前に近隣住民に挨拶をし、工事の内容や期間について説明しましょう。
また、工事中の騒音や振動に配慮し、必要に応じて防音対策を講じることも検討します。
 
(4)工事の進捗確認
定期的に現場を訪れ、工事の進捗状況や施工品質を確認しましょう。
工事の各段階で写真を撮り、記録を残しておくと後々のトラブル防止に役立ちます。
 

 
一般に、住宅の建築期間は数カ月になります。
予定外の建築費用を請求されたり、住宅建築会社が途中で倒産したりといったトラブルに遭わないよう注意が必要です。
そのためにも建築主がスケジュール管理を行うことは重要といえます。
 
また、専門知識がないと対応が難しいケースが少なくありません。
必要に応じて、弁護士や建築士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることも検討しましょう。

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