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資産運用のための株価指数の知識

NISAやiDeCoで資産形成する人々が増えるにつれて、インデックス型投資信託の利用も増加傾向にあります。

(出所)投資信託協会「投資信託の主要統計」(2024年8月)

 
インデックス型投資信託は、コストが低く、リスクが分散され、長期的な利益を得やすいといった特徴があります。
そのため、初心者にもおすすめと言われることが多くなっています。
 
特定のインデックス(市場の値動きを表す指数。例:S&P 500や日経225など)に連動するということも特徴の一つです。
投資戦略が明確で理解しやすいうえに、運用内容が透明なので自分の投資がどのように運用されているか把握しやすくなっています。
 
インデックスの一つに株価指数があります。
株価指数は、株式市場全体や特定の銘柄群の値動きを表す指標です。
複数の銘柄の株価を一定の計算方法でまとめて数値化したものです。
 
株価指数は一定時点の株価を基準としています。
時系列で見た場合、連続性を保ちながら、対象とする株式市場などの株価の動きを長期的に評価できます。
 
そのため、株価指数は、投資家が市場の動向を把握するための「ものさし」として利用されます。
投資家は株価指数を参考にして、投資のタイミングや戦略を決定するのに役立てられます。
 
代表的な株価指数にはどのようなものがあるのかについてお話しします。


1 日本の代表的な株価指数


日本の代表的な株価指数にはつぎのようなものがあります:

(1)日経平均株価


日経平均株価(日経225)は、日本経済新聞社が算出・公表している株価指数です。
「日経」、「日経平均」と呼ばれることもあります。
 
1950年に初めて算出・公表され、日本の経済動向を反映する指標として広く利用されています。
とくに、投資家や経済アナリストにとって重要な指標になっています。
 
①構成銘柄
東京証券取引所プライム市場に上場する約2,000銘柄のなかから選ばれた225銘柄で構成されています。
市場流動性が高く、業種のバランスを考慮して選ばれています。
業種は、技術、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共の6つに分類されています。
 
構成銘柄は年に一度(原則10月初め)見直され、市場流動性や業種のバランスを考慮して入れ替えが行われます。
市場流動性の高い銘柄が採用され、低くなった銘柄が除外されます。
また、構成銘柄が上場廃止になった場合などに臨時入れ替えが行われます。
 
②算出方法
225銘柄の株価の平均を算出しますが、一定の修正が行われます。
株式分割や株式併合による株価の変動の影響の調整や、異なる額面の株式を同じ基準で評価するための調整などです。
そのため、株価の高い銘柄が指数に大きな影響を与えます。
 
③特徴
値がさ株(株価の高い銘柄)の影響を受けやすいという点があります。
基本的に単純平均で算出されるため、株価が高い銘柄の変動が指数全体に大きな影響を与えてしまうのです。
そのため、株式市場全体の動きが正しく反映されず、動きが一致しないこともあります。
 
また、構成銘柄数が限られているので、日本の株式市場全体の株価を表しているとはいえないとされることもあります。

(2)TOPIX


TOPIX(Tokyo Stock Price Index、東証株価指数)は、日本の株式市場全体の動向を把握するための代表的な株価指数です。
幅広い銘柄が対象なので日経平均株価よりも相場全体の動きが反映されやすいため、利用される機会が多くなっています。
 
算出開始日は、1969年7月1日で、1968年1月4日を基準日に、当時の時価総額を100として算出しています。
 
①構成銘柄
東京証券取引所プライム市場に上場する全銘柄が対象です。
現在は約2,100銘柄で構成されています。
 
②算出方法
算出時の時価総額(株価×発行株式数)が基準時と比べてどれくらい変動したかにより株価指数を算出する仕組みです。
つぎの公式で計算します。
 
TOPIX(ポイント)= 算出時の時価総額 ÷ 基準時の時価総額(注) × 100
(注)1968年1月4日の時価総額
 
時価総額は、株式市場で実際に売買され、流通する可能性の高い浮動株のみの時価総額が用いられます。
上位10位の大株主が保有する株など、売買の対象とならない固定株を除いて算出されるのです。
固定株を含めた時価総額で計算してしまうと、実際よりも過大評価してしまうからです。
そのため、市場全体の動きをより正確に反映するようになっています。
 
③特徴
時価総額をベースに算出されるため、時価総額の大きな銘柄に影響を受けやすくなります。
 
④構成銘柄の見直し
東京証券取引所の市場区分再編に伴い、TOPIXの見直しが、2022年10月から2025年1月にかけて段階的に実施されています。
より市場の実態を反映し、投資家にとって使いやすい指標となることが目的です。
 
見直し前の構成銘柄は、東京証券取引所再編後の選択市場にかかわらず継続採用されます。
ただし、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については段階的にウェイトが低減され、2025年1月末に除外されます。
見直し完了後のTOPIXの構成銘柄の選定方法については、今後、市場関係者の意見を募ったうえで策定されることになっています。

(3)JPX日経インデックス400


JPX日経インデックス400(JPX日経400)は、2014年1月6日から算出が開始された比較的新しい株価指数です。
経営効率や資本効率が高い企業を選定し、投資家にとって魅力的な銘柄を集めることを目的としています。
 
①構成銘柄
東京証券取引所プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に上場する企業のなかから選ばれた400銘柄で構成されています。
 
つぎの基準にもとづいて選定されます。
 
㋐スクリーニング
上場後3年未満、過去3期いずれかで債務超過、過去3期すべてで営業赤字、整理銘柄等は除外されます。
 
㋑市場流動性
過去3年間の売買代金と時価総額を基に上位1,000銘柄を選定します。
 
㋒定量的な指標
3年平均ROE(自己資本利益率)、3年累積営業利益、時価総額の3つの指標でスコアリングされます。
 
㋓定性的な要素
独立した社外取締役の選任、IFRSの採用、決算情報の英文開示などが加点要素となります。
 
毎年8月に銘柄の見直しが行われ、必要に応じて入れ替えが行われます。
 
②算出方法
実際に市場取引される株(浮動株)だけを考慮して各銘柄の時価総額を計算し、その合計を基準時価総額(注)で割って算出します。
(注)2013年8月30日の時価総額

2 米国の代表的な株価指数

(1)ダウ工業株30種平均


ダウ工業株30種平均(ダウ平均、NYダウ、Dow Jones Industrial Average,、DJIA)は、米国の代表的な株価指数の一つで、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表しています。
 
1896年にスタートし、長い歴史のなかで米国経済の成長や変動を反映し続けており、世界の株式市場に大きな影響を与えてきました。
世界中の投資家にとって重要な指標となっています。
 
構成銘柄は、米国経済を代表する企業30社で、輸送および公共事業以外の主要業種を網羅しています。
 
現在の構成銘柄は、つぎのような企業です。
・Apple Inc.(アップル)
・Microsoft Corp.(マイクロソフト)
・The Coca-Cola Co.(コカ・コーラ)
・Boeing Co.(ボーイング)
・Goldman Sachs Group Inc.(ゴールドマン・サックス)
 
銘柄の入れ替えは、算出会社とウォール・ストリート・ジャーナルの代表者からなる指数委員会によって行われます。
 
また、株価の高い銘柄が指数に大きな影響を与えるため、個別銘柄の動きが指数全体に反映されやすいという特徴があります。

(2) S&P500


S&P500(Standard & Poor’s 500 Stock Index)は、米国の代表的な株価指数の一つで、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表しています。
 
1957年に初めて算出されて以来、米国経済の成長や変動を反映し続けています。
米国の株式市場の時価総額の約80%をカバーしており、世界中の投資家にとって重要な指標となっています。
 
構成銘柄数は、500銘柄で、ニューヨーク証券取引所(NYSE)やNASDAQに上場している企業が対象です。
情報技術、金融、ヘルスケア、消費財など、さまざまな業種の企業で構成され、米国経済全体の動向を反映しやすくなっています。
 
現在の構成銘柄は、つぎのような企業です。
・Apple Inc.(アップル)
・Microsoft Corp.(マイクロソフト)
・Amazon.com Inc.(アマゾン)
・Alphabet Inc.(グーグルの親会社)
・Tesla Inc.(テスラ)

(3)ナスダック総合指数


ナスダック総合指数(NASDAQ Composite Index)は、アメリカのNASDAQ市場に上場している全銘柄を対象とした株価指数です。
 
1971年にスタートし、米国のハイテク産業の成長を反映してきており、世界中の投資家にとって重要な指標となっています。
 
構成銘柄数は3,000以上です。
ハイテク企業やIT関連企業が多くなっています。

(4)MSCIの各種指数


MSCI(Morgan Stanley Capital International)は、世界中の株式市場をカバーする株価指数を算出しているアメリカの金融サービス会社です。
MSCIは、さまざまな地域やテーマにもとづいた多くの株価指数を提供しています。
代表的なものはつぎのとおりです。
 
①MSCIワールド・インデックス
世界23か国の先進国市場を対象とし、約1,600銘柄で構成されています。
グローバルな分散投資が可能になり、先進国市場全体のパフォーマンスを反映できる指標です。
 
②MSCIエマージング・マーケット・インデックス
24か国の新興国市場を対象とし、約1,400銘柄で構成されています。
新興国市場の成長ポテンシャルを捉えることができ、高いリターンを期待できる指標です。
 
③MSCI ACWI(All Country World Index)
先進国と新興国を合わせた49カ国の株式市場を対象とし、約3,000銘柄で構成されています。
世界全体の株式市場に幅広く投資でき、リスク分散が図れる指標です。
 
MSCIの指数は、各銘柄の時価総額をもとに算出されるので、市場全体の動向を正確に反映します。
また、実際に市場で取引される浮動株のみを対象としており、実際の市場規模を正確に反映します。
MSCIの指数は、年に4回(2月、5月、8月、11月)定期的に見直され、銘柄の入れ替えが行われます。

3 米国以外の海外の代表的な株価指数

(1)FTSE 100


英国の代表的な株価指数で、ロンドン証券取引所(LSE)に上場する時価総額上位100銘柄で構成されています。
ロンドン証券取引所の子会社であるFTSE社が算出・公表しています。

(2)DAX


ドイツのフランクフルト証券取引所に上場する30銘柄で構成されています。
ドイツの代表的な株価指数で、「ドイツ株価指数」とも呼ばれています。

(3)CAC 40


フランスのパリ証券取引所に上場する40銘柄で構成されています。
フランスの代表的な株価指数です。

(4)香港ハンセン指数


香港証券取引所に上場する主要な50銘柄で構成されています。
ハンセン指数サービス社が算出・公表しています。
アジアの経済動向を把握できる重要な指標のひとつとなっています。

株価指数は株式投資の戦略の構築やリスク管理に役立ちます。日本や世界の株価指数を指標とするインデックス投資信託も数多くあります。株価指数をいかに上手に活用できるかが成功のポイントとなるでしょう。

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